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財団法人日本ユニセフ協会

国際協力人材養成プログラム

海外インターン体験記

ケニアでのHIV母子感染予防対策

氏名:渡邉 真理
派遣先:ユニセフケニア・ナイロビ事務所 (HIV/AIDS Section)
派遣期間:2009年8月〜11月

2009年8月から3ヶ月にわたり、ユニセフケニア事務所でインターンをしました。HIV/AIDS専門家の指導のもと、HIV/AIDS支援業務に携わりました。

ケニアでは1日91人もの子どもがHIVに感染し、1日36人もの子どもがAIDSで命を落としています。ケニアのユニセフでは、HIV感染の予防と治療のための支援を優先課題のひとつに掲げ、国が実施する対策のうち、特に母子と青少年を対象とする対策を支援しています。大きく分けて、①母子感染の予防、②HIVに感染した子どもへの治療、
③HIV/AIDSにより生活を余儀なくされる子どもの保護、④青少年のHIV感染予防のための支援を行っています。インターンでは、①〜②で実施される各事業の調整や連携強化に関する業務に従事しました。ここでは、その中で特に関わりが深かった母子感染予防における活動をご紹介します。

母子感染は子どもの感染の最大の原因であり、妊婦のHIV感染率が高いケニアでは、その予防が極めて重要となります。HIV感染女性による出産では、妊娠時、分娩時、授乳時の全ての段階で母子感染の危険性が伴います。医療サービスの充実した先進国では、妊娠時の薬剤治療、帝王切開、代替乳などの導入により母子感染率はかなり低くなっていますが、限られた資源の中、ケニアではこれらのサービスが必要とする全ての母親に届かないのが現状です。様々な援助団体による支援で、母子感染予防対策は国レベルで実施されるようになりましたが、母子感染率はまだ30%と高く、対策の改善が求められていました。

妊婦さんが定期検診時にHIV検査を受ける様子

そこで、インターンでは母子感染対策の現状を調査しました。村の病院や診療所を訪れ、妊婦の定期健診時に行われるHIV検査(写真)の実施状況や、HIV感染が認められた妊婦へのサポート体制を調べました。母子感染予防のための妊娠中のカウンセリングや薬の提供、訓練を受けた助産婦や看護師による安全な分娩、出産後の栄養支援や子どものHIV検査など、各対策がどのように実施され、どれだけの妊婦や子どもに届いているのか、またどれだけの人が各サービスの対象となりながらそのサービスの恩恵を得ていないか、などを調べました。調査の結果、様々な問題点が明らかになりました。例えば、定期健診でHIV感染が確認された妊婦の半分近くは自宅分娩をしており、病院で安全な分娩を行っていなかったという事実が判明しました。これらのHIV感染女性に関しては、抗HIV薬を提供していても分娩時に服用しているかが確認できない、出産後の継続した治療がとれない、生まれた子どもの感染状況が不明である、といった医療機関側の問題点が明らかになりました。また、これらのサービスを受ける側の母親からは、病院に行く交通手段や交通費がない、HIVに感染したことを家族に打ち明けられない、などといった問題点が明らかになりました。このような調査結果をもとに、ユニセフの支援を受けてケニア政府は母子感染予防対策の改善のための具体案策定に取り組んでいます。

3ヶ月という短い間でしたが、大変充実した日々を過ごすことができました。このような機会を与えてくれました日本ユニセフ協会とユニセフケニア事務所の方々に心より感謝いたします。

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インド事務所 「水と衛生」部門に配属され、再びユニセフに!

氏名:大日方 牧人
派遣先:ユニセフインド・オリッサ州事務所(Water and Sanitation Section)
派遣期間:2009年7月〜2009年10月

週に1回の衛生チェックが、子どもたちの衛生意識を高める

私が4ヶ月間インターンとして働いていたのは、インド東部のオリッサ州でした。インドでも最貧州と言われており、全人口の16%が指定カースト(不可触民)、22%が指定部族(部族民)であり、半数近くの世帯が貧困ライン以下の暮らしをしている州です。私の専門は、水系感染症と公衆衛生、水源保全政策などの水環境政策であり、オリッサ州事務所の水・衛生部門に配属になりました。

オリッサ事務所では、NGOと連携してプロジェクトを実施するのではなく、州政府や県政府に対して政策提言を行い、人的、財政的、技術的な後方支援を行っています。ユニセフの水と衛生分野は大きく分けて、水(井戸)・衛生設備(トイレ)・衛生教育(手洗いなどの生活習慣の改善)という3つの分野で活動しています。オリッサ州における水と衛生分野の課題は、人口の80%が「野外排泄」をしているという点です。つまり、大人も子どもも多くの人々が、道端や草むら、線路沿いでおしっこやうんちをしているのです。これにより、飲料水として利用される井戸水に排泄物に含まれる大腸菌群が入り込み、下痢を引き起こしたりすることが考えられます。私が行った3つの主な仕事のうちの1つが、水質分析結果の解析です。インドでは、飲料水として使われる井戸水が大腸菌や自然由来の化学物質(ヒ素、フッ素や鉄分)によって汚染されていないかどうか水質分析がなされ、データ管理システムが構築されています。そのシステム強化のため、行政により収集・分析された約16万件の水質結果を解析し、州政府向けに問題点と解決策の提言資料を作成しました。化学の知識やインドの複雑な行政組織の理解が必要であり、上司にアドバイスを求めつつ、エクセルを駆使して仕事をしていました。

話は変わりますが、トイレが新しく建設されたとして、野外排泄が習慣化している人たちにいきなりトイレを使ってくださいと言っても、使われずに放棄されることがよくあります。そこで、新しい考えを柔軟に取り入れることのできる子どもたちに、学校で正しいトイレの使い方などの衛生教育をし、その兄弟・姉妹、親や地域の人々のお手本になってもらおうという活動をしています。私の2つ目の仕事は、学校の水・衛生設備と衛生教育の普及プログラムのモニタリングで、3度ほど地方へ出張をしました。この時点で一ヶ月半ほど経過していましたが、オフィスでの仕事が主だったので、直接子どもと触れ合う機会はありませんでした。夜行列車に乗り込み、14時間かけてプロジェクト県へ行き、現地のコーディネーターと数々の学校を巡り、多くの子どもに会いました。教師や親から現場のニーズを聞き、子どもたちの状況を知ることができ、「ユニセフで仕事をしている」と実感することができました。

3つ目は、安全でない水と不十分なトイレ設備が経済に与える影響を試算する経済分析でした。水と衛生は日常生活の基本であるにもかかわらず、政治や開発議題においては優先順位が低い分野です。政治家や官僚などに水と衛生分野への興味を持ってもらうためのアドボカシーツールとしてこの結果が利用できるだろう、と上司と相談し決めました。世界銀行が同様の経済分析を東南アジア5カ国で行っており、その手法を応用して算出方法を設定しました。下痢やマラリアの治療費用、野外排泄や共同トイレ利用にかかる時間費用、教育機会の損失、観光業への影響などを経済価値に換算していくという、分野が広く、地道な作業でした。今回はオリッサ州で試算しましたが、インドの全国家族健康調査の州別データを用いることで、他の州でも簡単に計算ができるようにエクセルシートを作成しました。分析結果から、経済的負担が5歳未満児に大きく偏っていることが分かりました。データ分析で子どもたちに直接関わることはできませんが、こういった地道なアドボカシー活動が子どもや女性、貧しい人の生活改善に繋がるのだと思います。

定期的な学校訪問で、衛生環境改善を助言し、教師の意識を高めていく

帰国直前の2009年10月末にデリー事務所でプレゼンをし、3つ目の経済分析結果に興味を持ってもらい、今度はデリー事務所でコンサルタントとして働かないかというお話をいただきました。現在調整中ですが、再びユニセフで働くことができそうです。私の上司は今後のキャリアのことを真剣に考えてくれ、学会発表などは今後に役立つということで、1つ目の水質分析結果の解析結果はデリーで開かれた学会で2009年12月に発表しました。3つ目の経済分析結果も今後、学会発表する方向でまとめています。

余談ではありますが、面接選考の際に、NYのユニセフ本部の人事部の方々に面接して頂けたことも、一つの貴重な経験となりました。そして何よりも、素晴らしい上司、スタッフ、現地の人々に恵まれ、充実したインターン生活を送ることができました。将来のキャリア目標へ向けて、このインターン経験を活かしていき、次なるステップへ繋げていきたいと思います。現地事務所やNY本部との調整に尽力して頂きました日本ユニセフ協会の皆様、本当にありがとうございました。

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