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財団法人日本ユニセフ協会



ハイチ地震緊急・復興支援募金 第43報
「素晴らしい日になるはず!」
学校に戻れる日を待ちわびる子どもたち

【2010年3月31日 ハイチ発】

© UNICEF/2010/Ingram
1月12日の震災によって避難を余儀なくされた人々のために、ハイチのポルトープランスにあるダダドウ避難キャンプに、ユニセフの支援で設置された学校の授業に参加する子どもたち。

「学校」という言葉を聞いただけで、タイマ・セレスチンちゃんの茶色い目は生き生きと輝き始めます。その理由を理解することは難しくありません。4月5日に予定されている学校の再開は、この自信に溢れた10歳の女の子にとって、現在の仮の住まいから出ることのできる最初の本当の好機だからです。彼女の仮の住まいとなっているわずかに傾いている避難テントは、ポルトープランス郊外の、以前は校庭だった場所に設置されていて、青い防水シートに覆われています。

約22万人が犠牲となったハイチの大地震の発生から数日後、タイマちゃんや彼女の祖父母はじめ7,000人以上の人々が、恐怖に脅えながらここに避難してきました。それから3ヵ月近くが経過しましたが、自宅に戻ることができた人はほとんどいません。多くの人々が、アスファルトでできた陸上競技用トラックに囲まれた、今は「タダドウ」と呼ばれているサッカー場での生活を余儀なくさています。

心のケアの一環として
© UNICEF/2010/Ingram
授業中、子どもたちの質問に答える地元NGOのジュニー・バートランドさん。

日中、タイマちゃんは、数百人の子どもたちと一緒にユニセフが提供した二つの大きな白いテントの中で、ボランティアの教師二人が運営している非公式の授業に参加します。ユニセフは、このテントのほかにも、さまざまな学習用教材の入った「箱の中の学校」キットやレクリエーションキットを提供しました。

授業は、騒がしいですが、いつも良い雰囲気に包まれています。短い休憩時間には、地元のNGO組織が、子どもたちにフルーツジュースとお菓子を配っています。

「授業に出ている間は、地震のことを忘れることができるの。ほんの少しの間だけだけど。」と、タイマちゃん。

避難キャンプでの生活を余儀なくされている子どもたちにとって、今回の大地震に名前をつけることは、心の傷を癒す過程の一環だったのかもしれません。「友達と地震について話すとき、地震のことを、“グドゥーグドゥー”さんって呼んでいるの。」と、タイマちゃんは言葉にリズムをつけて腕を振りながら話します。「だって、地震の時、本当にそんな音がしたんだもの。」

ダダドウキャンプでの支援活動の調整役を担っていた、地元のNGO「コレ・ティモウン(子どもたちへの支援)」のジュニー・バートランドさんは、このテント学校での授業は、子どもたちが震災の体験を乗り越えることに役立っていると話します。

「夜にパニックを起こす子どもたちをよく見かけました。」バートランドさんは話します。「でも、このクラスが始まってから、過度に塞ぎこんでいる子どもたちを見なくなりました。」

避難キャンプを健康で安全な場所に保つために
© UNICEF/2010/Ingram
震災後、祖父母と一緒に暮らしているダダドウ避難キャンプの外に立つタイマ・セレスチンちゃん(10歳)。

このクラスは、この他の目的にも貢献しています。例えば、幼い子どもたちは、下痢性疾患やその他の水を媒介とする病気を防ぐためにとても重要な手洗いや個人の衛生習慣の大切さを教えた歌も教わっています。

バートランドさんは、今のところはとりあえず、ほとんどの避難キャンプに暮らす人々が深刻な病気を避けられていると話しました。しかし、もうすぐ雨季がやってくるため、今後のことを憂慮しています。

ダダドウ避難キャンプでは、最近新たに避難してくる人々の数が増えています。このため、適切な避難所を作るための資材が不足し、食料と飲料水も十分にありません。また、ポルトープランスや他の震災地域に自然発生的にできた数百箇所に上る多くの避難キャンプで生活している人々も、同じような状況に置かれています。

ダダドウ避難キャンプの秩序は、今のところ保たれています。避難テントと防水シートは接近して並び、周辺部の片側にはトイレが整然と広がり、グランドの隣には、3,000ガロンの貯水タンクが設置され、その周辺にはゴミが捨てられないようにされています。地元警察とボランティアの人々がパトロールを行い、治安を維持しています。

「素晴らしい日になるはず!」
© UNICEF/2010/Ingram
タイマ・セレスチンちゃんと祖父母。

多くの子どもたちと同じように、タイマちゃんは学校に戻ることをとても楽しみにしています。「学校に戻る日は素晴らしい日になると思う。特に、算数とフランス語の授業が待ち遠しい。」

タイマちゃんの家族が暮らしていたアパートから探し出してきたタイマちゃんのたった一つの制服は、この大切な日のために、小さなテントの中に大切にかけられています。しかし、他の多くの子どもたちと同様、タイマちゃんも、震災がもたらした悲劇的な現実も判っています。

「学校に戻ったら」と、タイマちゃん。「どの子が生きていて、どの子が亡くなったのか分かると思う。」