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財団法人日本ユニセフ協会



ハイチ地震緊急・復興支援募金 第46報
ハイチ地震から90日−ユニセフ、最新レポート発表

今年1月12日(現地時間)に西半球の最貧国ハイチを襲った大地震から3ヵ月の節目を迎え、ユニセフはその支援活動の最新レポートを発表しました。

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© UNICEF/NYHQ2010-0231/Noorani

22万人以上が命を落とし、30万人以上の負傷者を出した大地震。被災者の総数は300万人以上にのぼり、首都ポルトープランス周辺では130万人以上がテント生活を余儀なくされました。
ハイチは人口の半数近くを子どもが占め、この地震で直接的な被害を受けた子どもは150万人近いと推定されることから、今回の地震は、“子どもたちの緊急事態”と言われています。地震以前から、5歳未満児の30%は慢性的な栄養不良で13人に一人は5歳まで生きることができない状況であり、就学年齢児の55%は教育を受けられず、また毎年2,000人の子ども他人身売買の被害にあっていたハイチでは、大きな災害によって子どもたちがより厳しい状況に追い込まれたのです。

被害の中心が首都だったことで、政府の建物も倒壊し、ユニセフを含む国連の活動も大きなダメージを受けました。しかし、各国の政府や民間からの多大な支援によって、ユニセフは300人のスタッフを緊急支援のために派遣し、同時に隣国ドミニカ共和国にはハイチでの活動を支援する拠点を設置して支援物資の輸送や被災者への対応にあたるなど、迅速な支援活動を展開することができました。

ユニセフは子どもたちの命を守るための水と衛生、栄養、保健、そして子どもたちの安全と日常生活を取り戻すための教育、暴力や搾取からの保護の分野で現在も支援活動を展開しています。

【水と衛生】
© UNICEF/NYHQ2010-0231/Noorani

ユニセフの支援によって、被災者の55%が飲料水を手に入れられるようになり、また23万人以上がトイレを使用できるようになりました。しかし従来から石鹸を使った手洗いなどの衛生教育が普及していないハイチでは、4月〜5月に始まるハリケーンシーズンの衛生環境の悪化が懸念されています。ユニセフは、さらに4,500基のトイレ(45万人対象)の設置、中・長期的な給水システムの構築と同時に、病気を予防するために衛生教育支援も急いでいます。

【栄養】

23ヶ所ある乳児用テントのうち19ヶ所(2万人の乳児、6,500人の重度の急性栄養不良児、5万人の妊産婦、166,000人の5歳未満児が対象)がユニセフの栄養支援を受けています。現在のところ深刻な急性栄養不良の増加は報告されていませんが、これからの雨期に懸念されている下痢性の疾患や感染症は栄養不良を引き起こす要因ともなり、幼い子どもの命に直結することから、引き続き栄養支援を継続するほか、国の社会サービスとして栄養支援システムを確立するための政府支援などを行っていきます。

【保健】

ユニセフは25万人の子どもを対象にした麻疹と風疹の緊急予防接種を展開し、これまでに10万人以上が両ワクチンとビタミンAを接種しました。また3種混合などの予防接種キャンペーンも2月2日に始まり、50万人への実施を目指して現在も続けられています。さらに、マラリア感染を防ぐための殺虫処理済の蚊帳40万張り(20万家庭分)の配布、保健施設への緊急の医療や出産に対応するための保健キットの配布等を実施しました。
今後は、4月末完了を目指して予防接種キャンペーンを加速させる一方、HIVに感染している妊婦や子どもたちへの治療の再開や母子感染予防を含めた保健システムの再構築等にも取り組みます。

【教育】
© UNICEF/NYHQ2010-0201/Noorani

今回の地震後、ハイチ全土で学校が一時閉鎖され、290万人の子どもたちが影響を受けました。倒壊もしくは壊滅的な被害を受けた学校は4,228校。ユニセフはこれまでに、教育活動の早期再開のための仮設教室用テント1,400、スクール・イン・ア・ボックス(学習資材セット)850セット、1,495の幼児開発キット、2,226のレクリエーション・キットを提供しました。学校は徐々に再開され、最も被害の大きかった地域でも、4月より順次正式な学校教育が再開されていきます。ユニセフはこの学校再開に際しても、学習資材や給水およびトイレ設備などの支援を行っています。
学校の再建にあたり、災害に強く“子どもに優しい” 学校の建設に向けて教育省を支援すると同時に、教員に対しての子どもたちへの心理社会的支援や子どもに優しい学習環境に関する研修、家庭の教育費用負担を減らすためのシステム作りなども今後の優先事項です。

【子どもの保護】
© UNICEF/NYHQ2010-0218/Noorani

地震後の混乱の中、多くの子どもたちが親を亡くしたり、家族と離れ離れになり、人身売買や暴力、搾取の危険に晒されました。こうした子どもたちの保護と支援のため、ユニセフは保護者のいない子どもの登録と再開支援、400ヶ所の子ども保護センターの調査、人身売買防止体制の強化などを行ってきました。また78ヶ所の“子どもに優しい空間”では、1週間に55,000人の子どもが社会心理的サポートを受けています。
災害から時間が経てば経つほど家族との再会は困難になることから、ユニセフは子どもの登録と再開支援を一層強化し、特に危険の高い子どもたちを様々な搾取から守るための支援を続けています。

こうした活動の結果、現在のところ感染症の発生などの二次的な災害は報告されていません。しかしながら、目の前にはこれから始まるハリケーンシーズンへの対策という緊急の課題があります。またその後の復興段階においても、ユニセフはパートナーと共に、教育、栄養改善、子どもの保護の分野を中心に支援を継続していきます。
重要なのは、ハイチを子どもにふさわしい国として立て直していく努力です。 例えば、学校の再開にあたっては、地震以前から教育を受けられなかった子どもたちを含め全てのハイチの子どもが学校に通えるようにする−そうしたより良いハイチへの復興に向けて、子どもや若者の声に耳を傾けながら子どもを中心に据えた復興を支援していきます。