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財団法人日本ユニセフ協会



ハイチ地震緊急・復興支援募金 第48報
子どもたちを守る「子どもに優しい空間」

【2010年5月21日 ハイチ発】

© UNICEF Haiti/2010/Van den Brule
ポルトー・プランス、サン・ピエール広場にある「子どもに優しい空間」では約120人の子どもに昼食を供給している。子ども達にとって、これが1日で唯一の食事となる時もある。

ポルトー・プランスにあるサン・ピエール広場で、1月12日の地震によって被害を受けた子どもたち約100人が集まり、安全な場所と保護の必要性を訴えました。

この要求にこたえて、ユニセフと現地NGOのIDEJENは、ポルトー・プランスの警察本部の隣に、子どもたちの避難所となる「子どもに優しい空間」(センター)を設置しました。

地域の結束を取り戻す
© UNICEF Haiti/2010/Van den Brule
サン・ピエール広場の「子どもに優しい空間」を訪れたイグレシアス君とお母さん

このセンターでは、5歳から24歳までの子どもや若者、約120人が支援を受けています。そのうち約75%にあたる90人ほどが地震によって住む場所がありません。

「センターを設けることで、コミュニティの結束を取り戻すことができ、また、家を失った子ども達が地域から関心を得られず取り残されないようにすることができます。」、とユニセフのジョアン・デスルオルトさんは話します。

「ここにいる子ども達は様々な恐怖症を抱えています。コンクリート製の家が恐いと感じ、地震を思い出させる音を聞くと精神的ストレスを抱え、不安から発作を起こします」とセンターで精神分析医をしているジャン・ロベール・デロシアーズさんは言います。「毎晩悪夢に悩まされる子どもも多くいます。しかし、センターで様々な心理社会的アクティビティを受けることで、子ども達は少しずつ目にした恐怖に立ち向かえるようになってきています。」

「適切なケアを行えば、震災によって影響を受けた子ども達の心の傷が完全に治るのは時間の問題でしょう」とデロシアーズさんは話します。

食料、水、快適な暮らし
© UNICEF Haiti/2010/Van den Brule
「子どもに優しい空間」で歌ったり、踊ったりして遊ぶ子どもたち

イグレシアスくん(5歳)と母親のヨレッタさんは1月12日の地震で家を失い、その日の夕方にサン・ピエール広場にある仮設避難所に移りました。それまで、ヨレッタさんはお米を売ったりしながら一人で子どもを育てていました。今は収入源がなくなり、イグレシアス君を育てていくのが難しい状況です。

「学校に通わせるための制服や学用品を買ってあげることができません。」とヨレッタさんは言います。「けれど、幸運なことに、避難所から200メートル離れたところにあるセンターに子どもたちを通わせるよう親達に働きかけているIDEJENの担当者に出会いました。」

センターでは、子ども達に安全な飲み水と食事が1日1回提供しています。トイレに必要な水は警察が用意してくれます。

「センターは天の恵みです。」ヨレッタさんは言います。「息子はちゃんとした食事を食べられます。専門家が面倒を見てくれ、地震のために見るようになった悪夢へのケアもしてくれます。息子が地震の前と同じように、他の子どもたちと楽しくしている姿を何よりも嬉しく感じます。」

家族と地域への支援

ユニセフとIDEJENによるこの共同作業は、緊急事態の際に、市民社会が現地や国際的な団体と協力することで子ども達を助けることができるということを示しました。

このようなパートナーシップが地域や家庭の子ども達を守る力をさらに強くします。

サン・ピエール広場の「子どもに優しい空間」では、親たちが、ソーシャルワーカーや心理学者、カウンセラー2名からなるプロのチームと一緒に活動しています。親は子どもが危険にさらされているかどうかが分かるセミナーに出て、将来起こりうる災害に向け必要な技術を学んでいます。

一方、ピア・エデュケーターと呼ばれる子どもたちと年齢の近いリーダーとなる若者は、性的虐待や暴力を防ぐ活動に若者と一緒に取り組み、実際に虐待を受けたことのある女性や女の子をサポートしています。これにより、若者が何もしないで町をふらふらとするのを防ぎ、家族を基本とした子どもの保護を推し進めようとしています。

社会機構の立て直し
© UNICEF Haiti/2010/Van den Brule
「子どもに優しい空間」の子どもたちと、隣にある警察本部のルイ・ジュヌ警部補。

警察も、子ども達に市民としての義務や善良な市民について子どもたちに教えるなど、子ども達の安全な暮らしのために重要な役割を果たしています。

「警官は国民を守る義務があります。子ども達も重要な存在です。」とルイ・ジュヌ警部補は話します。「場所は限られていますが、子ども達のためのセンターを設置することができました。子ども達が将来立派な大人に育ってほしいと思っています。今は子どもですが、近い将来、大人となって社会をつくっていくのです。」

この「子どもに優しい空間」の設置プロジェクトには団結力や地域が一緒になって子ども達を守るという姿勢がみられます。

このような協力を通じて全員が何かを得ることができます。子ども達は警察と信頼関係を築き、それはお手本となっています。この関係が、コミュニティをより安全でよりまとまりのあるものにし、ハイチの社会機構を1日も早く立ち直すための重要な一歩となっています。