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財団法人日本ユニセフ協会



ハイチ地震緊急・復興支援募金 第57報
子どもたちの心を癒すスポーツ

【2010年9月29日 ハイチ発】

© UNICEF video
マイス・ガテ避難キャンプで、毎日スポーツプログラムに参加している数百人の子どもの一人、シメオン・ケンソンさん(15歳)。

シメオン・ケンソンさん(15歳)は、多くの心配事を抱えています。

その一つは、10月に新学期が始まっても、学校に戻ることができないのではないかということ。家族が、学費を送ってくれるかどうか分からないのです。

もう一つの心配、それは、今、彼が伯父さんと暮らしているテントに、誰かが侵入してくるのではないかという不安。シオメンさんは、2010年1月にハイチを襲った地震の後、「テント都市」と化した首都ポルトープランスにある避難キャンプのひとつ、マイス・ガテ避難キャンプでの生活を強いられているのです。

そして、シメオンさんは、また地震が起こるのではないかと恐れています。「家には、絶対戻りたくない。」「2012年に、また地震が起こるといわれているし、どうしたらいいのか分からないんだ。」とシメオンさんは語ります。

心のケア
© UNICEF video
ハイチオリンピック委員会は、ユニセフの支援を受けて、震災で避難を余儀なくされた人々のために設置された52箇所の避難キャンプで、約3万6,000人の子どもたちのために、スポーツプログラムを運営しています。

そんなシメオンさんが楽しみにしていることがひとつあります。それは、避難キャンプの中で、ユニセフの支援を受けてハイチオリンピック委員会(HOC)が運営しているスポーツプログラムに参加することです。ハイチオリンピック委員会は、ポルトープランス周辺の52箇所の避難キャンプで、スポーツプログラムを展開。毎日3万6000人以上の子どもたちが参加しています。

マイス・ガテキャンプ場では、毎朝、バスケットボールのディフェンスのやり方を習ったり、空手のキックを披露したり、また、ハンドボールや、オレンジ色のプラスチックのコーンを取り合うゲームに興じる子どもたちを目にすることができます。その様子は、まるで小学校の体育の授業のようです。

ハイチオリンピック委員会のこのプログラムは、シメオンさんのように不安を抱えている子どもたちの心のケアのために、切実に求められている活動です。ユニセフの推計では、約130万人の人々が、依然として避難生活を余儀なくされています。

“心配事を忘れられる”場所

ハイチオリンピック委員会のステファン・レブさんは、次のように話します。「震災後、子どもたちは多くのストレスを感じています。」「子どもたちと話していると、子どもたちがこのプログラムを本当に好きなんだということがわかります。スポーツをしているときは、何が起こったのか忘れることができます。避難テントでの生活を忘れられるのです。」

ハイチは、依然として困難な状況におかれています。例えば、多くのテントは雨漏りしている状態です。ハリケーン発生の季節が近づいているカリブ海諸国の一つ、ハイチでは、非常に懸念されている問題です。

また、ユニセフ・ハイチ事務所のフランソワーズ・グルロース・アッカーマン代表は、地震後、多くの子どもたちが、地域社会の一員としての連帯感を著しく失ってきているという、見えにくい深刻な問題もあると指摘。スポーツが、子どもたちにこうした感覚を取り戻す機会になっていると言います。

友人関係の再構築

「スポーツは、避難生活を強いられている全ての子どもたちを一つにしてくれます。」「避難キャンプにいる子どもたちは、お互いに知り合いではありませんでした。子どもたちは全てを失いました。通っていた学校は崩壊し、以前の友だちにも会えません。こうした状況の中で、新たな友人関係を作り上げる必要があります。スポーツが、こうした子どもたちの手助けとなっているのです。」(アッカーマン代表)

もし、マイス・ガテ避難キャンプでスポーツプログラムが行われていなかったら? こう尋ねると、シメオンさんは、肩をすくめてこう答えました。「(それでも)ここにいると思うよ。他に行くところなんてないもの。」「でも、今は、毎朝ハイチオリンピック委員会の人が来てくれるから、できる限り早くここにきて遊んでいるんだ。」