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財団法人日本ユニセフ協会
 



ハイチ地震復興支援募金 第73報
希望を捨てないクリスチャンさんの物語

【2011年1月31日 ハイチ発】

© UNICEF Haiti/2010/Coen
2010年1月の地震で倒壊した自宅前で。唯一残された外壁にたたずむ16歳のクリスチャンさんと母親のエステラさん。

およそ22万人の死者を出した2010年1月12日のハイチ大地震から1年。いまだ癒えない震災の深い傷に苦しむ子どもたちがいます。地震で多くを失ったクリスチャンさん(16歳)の物語を通して、救出から復興までの長い道のりが見えてきます。

「それはとてもひどかった。僕の人生は前触れもなくすっかり変わってしまった」とクリスチャンさんは地震を振り返ります。「僕たちの家は完全に崩壊した。僕の家族9人は地震で倒壊した家の下敷きになったんだ。近くの住民が救い出してくれたけど、おばさんは亡くなってしまった。僕たち家族には何も残されていない。地震ですべてを失ったんだ。」

地震後、クリスチャンさんの家族は親戚を頼って、海岸沿いの町に身を寄せていましたが、お母さんの友人の支援によって首都ポルトー・プランスに戻ってくることができました。お母さんは病気のために正規の職に就くことができず、臨時で裁縫の仕事を始めました。

© UNICEF Haiti/2010/Coen
母の友人が借りてくれたポルトー・プランスの家で。学費を払えず学校に行けないクリスチャンさんは、ブレスレットを作って時が過ぎるのを待つ。

クリスチャンさん一家はお母さんのわずかな収入でその日暮らしの生活を送っています。クリスチャンさんは言います。「今はお母さんを助けるために、市場に行って皿を洗い、床のモップがけをして働いている。でも、本当はエンジニアになりたい。それが僕の夢だから。数学が得意な僕にとっての人生の目標なんだ。けれど、エンジニアになるには学校にいって勉強する必要がある・・・」クリスチャンさんは学費を支払えず、学校には行っていません。「かなりの数の才能ある若者たちが、本当はすばらしいことをできるのに、この状況が僕たちにそれを許さないんだ。」

ユニセフは現在、クリスチャンさんのようなハイチの若者にさまざまなチャンスをもたらすことを最優先事項にしています。「ユニセフはもっと若者の参加を得なくてはならない」と語るのはユニセフ・ハイチ事務所のフランソワーズ・グルロース・アッカーマン代表です。「私たちはこれまで、学校に行っていない若者、仕事に就いていない若者の存在を忘れていました。彼らの声に耳を傾けてこなかった。彼らは素晴らしいエネルギーと独創性を持っています。彼らはただ、私たちにこう言われるのを待っているのです。『さぁ、君たちの国を築くんだ。私たちとともに国を築こう』と。」

本当なら学校に行って勉強している時間を家で過ごすとき、クリスチャンさんはブレスレットやネックレスを作って時間をつぶします。幾多の困難にもかかわらず、クリスチャンさんは冷静で、将来に楽観的です。「人生には上り下りがあって、人はそれを理解するために経験する必要がある。でもお母さんがいつも僕に言うんだ。『生きていれば、希望はある』って。」

皆様のご支援に心より御礼申しあげます。引き続き、温かいご支援をどうぞよろしくお願い致します。