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財団法人日本ユニセフ協会
 



東日本大震災緊急募金 第59報
震災孤児への支援−子どもの最善の利益の確保を

【2011年5月18日 盛岡発】

© 日本ユニセフ協会/2011/k.shindo

子どもの保護専門家としてユニセフより応援派遣されている小林葉子は、岩手県内の、いわゆる震災孤児をはじめとする弱い立場に置かれた子どもたちの状況と同県の方針を確認するため、同県保健福祉部児童家庭課総括課長の奥寺高秋氏と面会。両親や保護者を亡くした孤児への社会的養護が、子どもの権利条約や子どもの代替的養護に関する国連ガイドラインに基づき、「子どもの最善の利益」を確保するかたちで実施されることを推奨するとともに、県の方針の説明を求めました。

奥寺氏は、同課が、国内法はもとより、子どもの権利条約に基づき、「子どもの最善の利益」を確保するかたちで震災孤児への社会的養護を実施していく方針であることを説明されました。日本ユニセフ協会支援本部岩手フィールドマネージャーの安田直史も各関連者との協議の中、同課の社会的養護方針の実施状況を確認しています。

以下は、奥寺氏から説明いただいた内容です。

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東北地方太平洋沖地震により、両親もしくは通常の保護者を失った子ども(以下被災孤児)は、岩手県内で57人と判明している(4月22日現在)。現時点では、すべての子どもたちは、親族宅等で保護されている。

岩手県では、被災孤児の社会的養護は、児童福祉法(平成20年改正)、厚生労働省里親ガイドライン、関連国際法と基準(子どもの権利条約、子どもの代替的養護に関する国連ガイドライン)、岩手子どもプラン案(保護を要する児童のための福祉の推進)に基づき、以下の基本方針と優先順位に基づき実施していく所存である。また、この方針に基づき、県児童家庭課、児童相談所、里親会、養護施設連絡協議会は、すでに連携し協力体制をとっている。

1. 基本方針

すべての被災孤児の代替養護の選択は、以下を基本方針とし、個別の子どもの状況に応じて判定をおこなう。

  • 子どもの最善の利益を、最も重要な条件とする。
  • 子どもの意見をよく聞き、気持ちを尊重する。特に、各子どもの年齢、理解度、成熟度を考慮し、子どもの意見を、決定過程に反映させる。
  • きょうだいは、原則として、一緒に保護する。
  • 可能な限り、子どもが慣れ親しんだ環境(学校の通学圏等)に近い距離で、家庭的な環境で養護する。

また、委託後も、受け入れ家族への子育て支援、子どもに対する包括的な支援を、児童相談所が主になり、継続的に実施する。

2. 優先順位

(1) 親族里親

第一優先は、子どもの生い立ちを理解し、今までの家族関係の継続を可能とする親族による家庭的養護である。早急に、適切な親族を、親族里親(子どもの三親等以内の親族がその子どもに限ってなる里親)として認定することにより、生活費、教育費の支給が可能となる。現時点で判明している県外の親族に引き取られた子どもと親族も、対象県の児童相談所と連携して、同様の支援をおこなう必要がある。

<活動事項>

  • 被災孤児を引き受けている親戚に里親制度に関しての情報を提供し、里親申請、認定までに必要な支援をする。子どもの意見を尊重し、子どもと親族の社会調査、家庭調査を実施する。
  • 通常1年に2度行われている社会福祉審議会児童福祉専門分科会(里親認定審査会)を、随時開き、遅延なしに里親認定する。
  • 児童相談所は、親族里親委託後も、家庭訪問等を通じて、親族里親と子どもを継続的に支援し、家庭的な養育環境の充実を図る。

(2) 岩手県内での養育里親委託

第二優先は、県内での養育里親による家庭的養護である。岩手県内の里親会で認定されている里親のなかで、震災孤児を含め要保護児童の受け入れを可能としている里親は35組いる。そのうち、22組は2以上の受け入れを可能としている。

<活動事項>

  • 岩手県内の里親の多くが内陸部に居住していて、震災で両親を亡くした子どもたちの住んでいた沿岸部では認定里親が少ない。このため、出来る限り生まれ育った故郷に近い場所での養育が出来るように、被災地(沿岸部)での養育里親を早急に募集することを検討する必要がある。
  • 養育里親に子どもが委託されると決まった際には、子どもの心のケアなど必要な研修の機会を提供する。
  • 児童相談所は、委託後も、家庭訪問等を通じて、養育里親と子どもを継続的に支援し、家庭的な養育環境の充実を図る。

(3) 県内での児童養護施設で養育

上記の第一優先もしくは第二優先の選択が、子どもの最善利益を考慮した上で、適切だと考えられない場合、第三優先は、県内での児童養護施設での養育である。

児童養護施設での養育も、出来る限り、家庭的雰囲気のある小規模な施設を優先する。この選択は、上記の基本方針に基づき、子どもの年齢、希望、状況を考慮し、子どもの意見を尊重したうえでなされる。

3. 連携

同県では、県庁児童家庭課、3つの児童相談所 、岩手県里親会、岩手県児童養護施設協議会 の間での既存の連携体制に基づき、被災孤児への社会的養護の体制を整えてきた。また、岩手弁護士会の協力を得て、未成年後見人等被災孤児の財産管理の問題にも取り組んでいる。今後、連携体制を、より一層強化し、可能な限りふるさとに近い場所での家庭的な環境での養育を実現させるべき努めていく所存である。

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現在の支援物資到着状況

支援先
(県別)
支援物資 到着日 数量 寄贈企業 備考
宮城 3月19日 12,288本 VanaH(株) 2Lペットボトル
福島 3月22日 12,672本 VanaH(株) 2Lペットボトル
宮城 男児・女児用下着 3月22日 20万枚    
岩手 男児・女児用下着 3月23日 3万枚    
福島 3月23日 4,680本 キリンMCダノンウォーターズ(株) 2Lペットボトル
宮城 子ども用靴 3月23日 10,000足  
宮城 子ども用おむつ 3月24日 80パック P&G  
岩手 子ども用下着 3月24日 9,700枚    
福島 3月24日 12,288本 VanaH(株) 2Lペットボトル
岩手 3月26日 1,404足 アキレス(株)  
岩手 男児・女児用下着 3月27日 28,266枚    
岩手 長靴 3月27日 7,462足    
岩手 お尻ふき 3月28日 1,200個 P&G 赤ちゃん用
宮城 レクリエーションキット
「箱の中の幼稚園」
4月2日 各50   ユニセフ物資供給センターより調達
岩手 レクリエーションキット
「箱の中の幼稚園」
4月2日 各50   ユニセフ物資供給センターより調達
宮城 ランドセル 4月6日 70個 日本ニューバッグチェーン  
岩手 ランドセル 4月6日
-7日
340個 セイバン  
宮城 学校用かばん 4月8日 18,000個   ユニセフ物資供給センターより調達
岩手 学校用かばん 4月8日 18,000個   ユニセフ物資供給センターより調達
宮城 防犯ブザー 4月8日 5,000個    
岩手 防犯ブザー 4月8日 5,000個    
宮城 軽自動車 4月8日 3台    
宮城 サプリメント 4月上旬〜 4,000ボトル    
福島 4月11日 1,536本 VanaH(株) 2Lペットボトル
宮城 レクリエーションキット
補充素材
4月12日 60セット
宮城 ミニカー 4月12日 約1,200 タカラトミー
相模原* 4月12日 12,288本 VanaH(株) 2Lペットボトル
宮城 プレイマット 4月13日 2種
各80枚
IKEA
宮城 お絵かきセット 4月13日 60セット IKEA
岩手 保育園用いす・テーブル・座卓 4月14日 いす75脚・テーブル11台・座卓9台   被災した各幼・小・中・高と移転先へ
宮城 原付バイク 4月15日 5台    
岩手 小・中学生用ノート・文具セット 4月15日 (16,700セット)    
宮城 PC183台・コピー・FAX複合機(57台)・プリンター(61台) 4月18〜21日     各幼・小・中・高と移転先へ
福島 移動式黒板 4月21日 10台    
福島 仮設トイレ 4月22日 20基    
福島 放射能量測定器 4月28日 14台   相馬市各学校へ
岩手 更衣室・授乳用仕切りシステム 4月29日 21セット    
埼玉* 牛乳 4月末〜     加須市双葉町避難所
埼玉* ヨーグルト 5月初旬〜   ダノンジャパン(株) 加須市双葉町避難所
岩手 クーピー(120セット)/絵の具(240セット) 5月13日      
岩手 卓上電気スタンド 5月14日 15台    
岩手 文具セット 5月16日 840セット    
福島 ロッカー 5月16日 22セット   南相馬市教育委員会へ
福島 PC 5月16日 1台   石川町教育委員会

ちっちゃな図書館送付状況:約11万冊が350箇所以上に発送済み。(5月16日現在)

*被災者受け入れ場所

※一部支援物資については、各県の物資集積倉庫より他県の避難所または被災者に配布されている場合もございます。

2011年5月16日午前9時現在 (広報室まとめ)