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日本ユニセフ協会
 



東日本大震災復興支援 第205報
8月30日から9月5日は「防災週間」−
『東日本大震災津波 岩手県保育所避難状況記録』
−保育中の子どもたちは、どう守られたのか-

【2013年8月30日 東京/岩手発】

東日本大震災津波 岩手県保育所避難状況記録』〜子どもたちは、どう守られたのか〜

日本ユニセフ協会は、東日本大震災緊急・復興支援活動の一環として、同震災の教訓を次の“万が一”に生かすことができるよう、本年はじめ、岩手県保健福祉部児童家庭課と共同で、2013年2月に、報告書『東日本大震災津波 岩手県保育所避難状況記録』を発表しました。

東日本大震災で、岩手県内の保育所も大きな被害を受けましたが、保育中の子どもたちや勤務中の職員の犠牲者は皆無でした。あの未曾有のスケールの大災害の中、子どもたちはどのように守られたのか?私たちは、国内外の子どもたちが通うあらゆる形態の施設の災害対策の強化や改善につなげることを目的に、アンケートと聞き取り調査を通じ、岩手県内の各保育所が取った避難行動やその背景にあった日頃の備えや心構えなどを調査し、報告書をまとめました。

◆日ごろの備えが守った命

本報告書を受け取ったユニセフ本部(ニューヨーク)の緊急支援本部長テッド・チャイバンは、「月に一回以上行っていた避難訓練などの日頃からの備えや、職員の方々の適切な判断、そして子どもたちと関わる仕事への並々ならぬ情熱が、岩手の子どもたちの命を守ったということがよく分かります。これらのことは、岩手や日本国内の保育所のみならず、世界中の学校や施設、地域の防災の取り組みにおいても重要です。早速、このレポートを各国のユニセフ事務所などとも共有し、実践に生かしていきます」とのコメントを寄せました。

本報告書には、大震災発生からの流れ、避難所での状況、復旧・再開までの道のり、今後の防災対策の課題が、調査結果と現場から寄せられた声とともに、まとめられています。

◆調査結果ハイライト

※本文15ページより引用

    ◆ 避難手段と持ち出し物

  • 0〜2歳児は保育士がおんぶ紐で背負ったり、避難車などに載せて避難
  • 2、3歳児以上は、誘導に従い、徒歩や駆け足
  • 避難車には毛布、おむつ、非常食、ティッシュなどを積み込んだ
  • 消防団や地域の人、小学生や中学生が手伝ってくれた
  • 非常持ち出しとして、園児名簿や救急用品、タオル、ラジオ、携帯電話など

    ◆ 避難所と常備品

  • 停電で、情報網が寸断、暖房も使えず、上下水道も使用不可に
  • 防災頭巾が防寒にも役立った
  • おやつや非常食が子どもの空腹をしのぎ、気持ちを安定させるのに役立った
  • 衛生環境が悪くなるので、手指消毒液やウェットティッシュが役立った

    ◆ 今後の課題

  • 防災訓練を繰り返すこと
  • 想像所以上の災害が発生する可能性も認識しておくこと
  • 子どもたちの体力や目線を考慮し、安全で、素早く避難できるルートを探すこと
  • 保護者との避難時の連絡方法を共有すること
  • 地域と連携・協力すること

◆参考:調査概要

  • 調査対象 岩手県内の認可保育所353か所。うち、263か所が回答。
  • 調査方法 アンケート(チェック式ならびに記述式)、聞き取り調査 ※避難状況に応じて調査方法を増減
  • 調査内容 (1)通常の保育所の防災対策 (2)地震発生時の保育所の状況 (3)地震発生時の避難行動 (4)発生当日の行動 (5)避難を行った際の状況 (6)震災により気づいた点等
  • 分析方法 津波被害を受けた沿岸12市町村とそれ以外の地域で比較分析
  • 調査期間 平成24年3月26日〜平成24年4月20日
© 日本ユニセフ協会
小学校の教室をかりて、保育再開
  
© 日本ユニセフ協会
園舎が被害を受け、間借りしたスペースで保育を再開した保育所。ダンボール箱がイス代わりに。

※本記録は、保育施設やその他の児童福祉・教育施設での災害対策マニュアルとして代用されるものではありません。また、調査で集められた数値データや叙述的内容を利用して、団体や個人の評価を行うことを目的としているものではありません。調査方法やデータ分析に関して制約があります。

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