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財団法人日本ユニセフ協会



パキスタン情報 第25報
パキスタン地震発生から半年 ユニセフの支援活動のご報告

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2005年10月8日にパキスタン実行支配下カシミールと北西国境州を襲ったマグニチュード7.6の大地震は、パキスタン史上最悪の緊急事態となりました。政府筋によれば、400万人近くが直接的な被害を受け、330万人が住む家を失い、7万5千人以上が死亡し、12万5千人が負傷しました。

この災害で最も大きな影響を受けたのは、全人口の半数を占める18歳未満の子どもたちです。地震は授業中の学校を襲い、多数の教師と1万7千人以上の児童が閉じ込められ、命を失ったことからから、「子どもの大惨事」として知られるようになりました。1万校以上の学校と約1,000の保健施設が、崩壊するか修復不可能な状態になりました。生き残った子どもたちにとって、地震前に知っていた世界は一瞬にしてなくなりました。多くの子どもが母親、父親、兄弟姉妹、親戚、先生、友達を失いました。そして、数千人の子どもが大きなけがをした上に、ひどい心の傷を負っています。

地震から6ヶ月。これまででもっとも複雑な人道支援活動のひとつとされた緊急支援は予想以上の成果をあげました。冬にしては穏やかだった気候、被災した人々の回復力、パキスタン政府や軍、国連機関、NGO、市民団体間のすばらしい連携などの要因が重なったことが理由です。もっとも大きな成果は、大変恐れられていた、伝染病、疾病、汚染が原因による第2の死の波を回避できたことです。

主な成果

被災地の人々や避難キャンプに移り住んだ数千人の人々のため、ユニセフは倉庫が空になるまで必要な物資やサービスを提供するなど、緊急事態に直ちに対応しました。

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保健と栄養:被災者の間で病気が発生しないよう、ユニセフは、緊急医療ケアを始めました。5歳未満の125万人の子どもたちには、地震後ただちにはしか予防接種キャンペーンが実施されました。10月8日以来、100万人以上の子どもたちが経口ポリオワクチンを接種し、87万人の子どもたちが免疫力を高めるためのビタミンAを摂取し、12万人の子どもたちが髄膜炎の予防接種を受けました。被災地の150万人に3ヶ月間の医療サービスを再開するために必要とされる、緊急保健キット150セットが提供されました。さらに、ユニセフは、拡大予防接種プログラム再開のために支援しており、ワクチン及びその輸送・保存のための備品を供給しています。

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水と衛生:ユニセフは政府と共に、破損したり壊れたりした都市上水道の再建に取り組みました。避難キャンプには、NGOとともに避難キャンプに安全な水とトイレを提供しました。又、避難キャンプで生活をする人たちに、トイレの使用や手洗いの習慣を促進するための活動も行いました。

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子どもの保護:冬が終わるまで、高地や避難民キャンプに住む子どもたちが厳しい寒さから身を守り、生き延びるために必要な毛布、掛け布団、および冬用小物の提供を行いました。ユニセフは、合計で82万枚の毛布、68万セットの冬用小物(雪用ブーツ、ジャケット、靴下、マフラー)、及び25万枚の掛け布団を、避難キャンプや物資の行き届きにくい地域に住む、もっとも弱い立場にいる子どもたちに届けました。教師や子どもたちの養育者は、心に傷を負った子どもたちのケアをするための訓練を受けました。避難キャンプには「子どもにやさしい空間」が作られ、保護が必要な子どもの観察とフォローが始められ、人々が家に戻り始めた今も続いています。

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教育:ユニセフは避難キャンプと被災したコミュニティにテントの学校を作り、14万4000人以上の子どもたちが学校に通えるようになりました。又、スクール・イン・ア・ボックス(ひとつで80人の児童が教育を受けられる教材セット)を提供しました。多くの子どもたち−特に女の子−は学校に通うのが初めてです。又、ユニセフは県の教育行政サービスを復興するための支援として、臨時サービス用の事務所、事務備品、及びプロジェクトのモニタリングや実施のための交通手段を提供しました。

10月8日以来、ユニセフは新たに5つの国内地域事務所を設立し、緊急・復興支援に携わるために150人のスタッフが地震の被害を受けたムザファラバード、マンセラ、バーグ、バッタグラーム、べシャムで活動しています。

今後の活動

現在、人々は自分達の村に戻りつつあります。今後は、避難キャンプで提供していたサービスを、山間部の村々に提供していく必要があります。ユニセフは村に帰還する人たち向けに布団や子ども用の衣服、学用品を提供したり、いくつかの村で基礎保健ユニットを設置しています。又、ユニセフは多くの子ども達を学校に戻し、そして今までに学校に通っていなかった子どもを学校に通わせるための「ウェルカム・トゥ・スクール」(学校にようこそ)プログラムを実施しています。

被災したパキスタン実行支配下カシミールと北西国境州の被災地域の社会指標は、パキスタン国内でも最低値を示しています。5歳未満の子どもの死亡率は1,000人あたり100人を優に超えています。妊産婦死亡率は10万人中600人です。アサード・ジャム・カシミール州の女性の識字率が非常に高い一方で、北西国境州の女性は事実上全員字を読むことができず、ごく少数の女の子しか学校に通っていません。その上、慢性的な栄養不良も広がっています。

しかし、大変困難ではありますが、状況は克服することが可能です。復興支援を通じて、以前より良い社会サービスを提供し、以前は社会サービスが行き届いていなかった地域にも新たにサービスが提供できるよう、今後も支援活動が継続されます。

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支援を受けた子どもたちのようす

〜冬物の衣服や布団が届く〜

冬は雪が降り、厳しい寒さが訪れる地震被災地には、冬物の衣服や布団が届けられました。支援物資を届けるのはとても大変でした。人々は深い谷の間から山の頂上まで点在していて、地震や雪によっていくつもの村が交通遮断されています。全ての家庭に布団を、全ての子どもに暖かい服を届けるために、ユニセフはパートナーと共に支援物資を可能な限り毎日空輸しました。

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病気の2歳の子どものための薬を手に入れた男性
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支援物資配布センターでもらった冬物のブーツにさっそくサンダルからはきかえる少女
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歯ブラシや石鹸、水容器等の支援物資を確かめる家族
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〜子どもたちにとって初めての学校〜

ユニセフはキャンプ内でもいち早く学校がはじめられるよう支援を行ってきました。今、テント学校に通う女の子の80%は、それまでに学校に通ったことのなかった子どもです。学校に通うことで、子どもたちの前に全く新しい世界が広がりました。ソビアもユニセフが支援するテント学校に通う女の子の一人。校舎は地震で崩壊してしまいました。地震の前は男の子と同じようには学校に通えなかったけれど、今はちゃんと学校に通えるようになりました。先生は、身の回りのことで家族が精一杯の時に、家族にかわって相談にのってくれます。キャンプ生活は大変ですが、学校に通うとその大変さを一時でも忘れることができます。学校でのソビアは、友達と冗談を言いながら笑顔を見せてくれます。学用品はユニセフの支援でもらいました。今では自分の将来のことを考える余裕もでき、先生になりたいという希望にむかってがんばって勉強しています。

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〜活躍する地域保健員〜

ファイサはユニセフの地域保健員として、地域の家庭を訪問し、人々の健康状態をチェックして相談にのっています。ユニセフの保健研修を受けたファイサは、病気の人の血圧を測ったり、けがの手当てをしたりしています。ファイサはユニセフから痛み止め、経口補水塩、ばんそうこう、殺菌クリームをもらいました。ファイサは地域の人の健康維持にとって欠かせない存在となっています。

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◇ 募金のお願い ◇

ユニセフは、いまも被災地の子どもたちのための緊急支援を続けています。
皆さまのご協力をお願いいたします。