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財団法人日本ユニセフ協会



パキスタン緊急募金 第38報
8歳のアルべリちゃんの訴え

【2010年9月9日 パキスタン発】

アルベリちゃん(8歳)は、日差しを遮る布が張られたハンモックに、他の子どもたちと一緒に座っていました。アルベリちゃんは、避難生活を送っているキャンプで、ユニセフの支援で活動している移動保健チームのナスレーン・ハスヘリ医師が、患者を治療している様子をじっと見つめていました。

アルベリちゃんと彼女の家族は、洪水の被害を受けた家を離れ、最近この避難キャンプに辿り着きました。アルベリちゃん一家は、村の他の11世帯の人々と共に、サックルまでの長い道のりを歩いて避難してきたのです。小さなアルベリちゃんは、今、母親や兄弟と一緒に、夏の強い日差しが降り注ぐ中、防水シートで作られたキャンプでの生活を余儀なくされています。

失われた家
© UNICEF/2010/McBride
自宅のあった村が洪水による壊滅的な被害を受け、長距離を移動して、サックルの避難キャンプに辿り着いたアルベリちゃん(8歳)。

「洪水に襲われて、家が粉々になっちゃったの」アルベリちゃんは、うつむいて、ほとんどささやくような声でこう話しました。「私の持ち物は、みんな水に浸かってだめになっちゃった。ベッドも流されちゃったの。」

村が洪水によって壊滅的な影響を受けた後、スックルの避難キャンプに向かって歩いて移動している間、アルベリちゃんは、この先どうなるのかとても不安でした。

「子どもたちは、疲れきって、脅えていました。」アルベリちゃんのお母さんは、その時のことを思い出してこう話します。「ただ家に戻ることが不可能だったんです。私たちの家は完全に壊れてしまいましたし、家畜もどこかへ行ってしまいました。どこにも行く場所はありませんでした。」

洪水被災地域に暮らす多くの幼い子どもたちと同様に、アルベリちゃんは、これまで学校に行ったことがありませんでした。そのかわりに、家で留守番をしたり、畑仕事や家畜の世話をしていました。そして突然、そうした彼女の今までの生活は洪水によって破壊されてしまったのです。小さなアルベリちゃんは、ショック状態に陥っています。でも、少しずつですが、新しい環境に適応し始めているようです。

見えない未来

アルベリちゃんは、今も、家や、ベッド、衣類がなくなって寂しいと言います。「家は良かったわ。」アルベリちゃんは、つぶやきました。

アルベリちゃんの家族がいつ村に戻れるのか、現在のところ全く見通しは立っていません。アルベリちゃん一家は、完全に水が引いたら、再び生活を立て直すために、村に戻りたいと思っています。でも今は、トラックの警笛の大音響とガソリンの臭いが立ち込める、汚く騒々しい道路沿いに置かれた白い防水シートで作られたテントが、彼らの家なのです。

こうした厳しい状況の中で、アルベリちゃんの願いはたったひとつです。
「これしか洋服がないの」と、アルベリちゃんは言います。「とにかく、新しい服と靴が欲しいの。」