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財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第55報
シリア:難民キャンプで衛生習慣を広めるシリア人ボランティア

【2013年6月24日 ヨルダン発】

© UNICEF Video
衛生習慣の啓発活動は時期を見極めることが重要です。限られた空間に多くの人がいる環境を衛生的に保つことはむずかしく、気温も上昇するため、衛生環境の悪化が懸念されています。

ヨルダンのザータリ難民キャンプ。強い日差しが降り注ぎ、モハメド・ホムシさん(35)の額には汗がにじみます。モハメドさん率いるシリア人保健ボランティアは15人、キャンプ内には、全部で12の保健ボランティアチームがあります。

12万人が避難生活を送るキャンプで、感染症の集団発生を予防するため、安全な衛生習慣の徹底を呼びかける8日間のキャンペーンを行いました。

「キャンプであっても、下痢は予防できる病気だからこそ、取り組む意義があります。自分には下痢は関係ないと思っていても、いずれ、自分自身や近所の人、家族もかかってしまうのです」と、モハメドさんは言います。

状況は深刻です。夏の暑さに伴い、細菌や寄生虫が増殖しており、過密状態のキャンプでは感染症に罹りやすいのです。感染症の発生を抑制するためには、キャンプ内を衛生的に保つことが欠かせません。

■簡単な方法で守れる命

© UNICEF Video
気温上昇が続くザータリ難民キャンプでは、シリア人保健ボランティア達が衛生習慣の徹底を呼びかけている。

このキャンペーンの目的は安全な浄水網の維持や食料の衛生的な管理、手洗い、ごみの分別などを強化することです。同時に、チームは下痢の症状の患者を探し出し、経口補水塩の提供や必要に応じて診療所への紹介も行っています。

ユニセフ、UNHCR、WHOや他のパートナー団体は、キャンペーンの一環で2〜4日間の研修を実施。モハメドさんや看護士、保健士、薬剤師などを含む124人のシリア難民の方が、すでにこの研修に参加しました。

人々があふれるキャンプの一角で、モハメドさんは父子向けに手洗いや調理をしてから2時間以内に飲食を終えることが重要であると伝えています。「子どもの命は、自分たちで守れるのだということを伝えなければいけません」とモハメドさんは、力強く語ります。

■地域社会を守る

キャンプ内でシリア人保健ボランティアとして働くモハメドさん。シリア人同士の絆を強く感じているといいます。「私たちはここを難民キャンプではなく、家だと考えています。ここにいるすべての子どもたちが我が子たちなのです。子どもたちに万が一のことがあれば私たちには耐え難いことなのです」と語りました。

モハメドさんはシリア南部の町ダルアー近郊で獣医研修生として勤務していました。5ヶ月前、障がいを持つ両親、妻、そして5人の子どもたちとともにシリアから逃れてきました。自身の生活が困難を極める中、モハメドさんはキャンプの状況改善のために立ち上がったのです。

訪問したテントに、下痢を患っている小さな女の子がいました。モハメドさんは、ていねいに経口補水液の作りかたを説明します。「この経口補水液を飲めば、心配はいりません」と伝えられると、家族はほっとした表情を見せました。

「どんな簡単な病気も、子どもたちにとっては命を脅かす存在です。しかし、簡単な方法で子どもたちの命を予防できる病気から守ることが出来るのです」とモハメドさんはいいます。

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