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財団法人日本ユニセフ協会
 



フィリピン台風緊急募金 第20報
学校の再開は復興の始まり
「一緒に前に進もう」 将来に希望をみる子どもたち

【2014年1月8日 フィリピン・サンロケ発】

フィリピン台風による被害から2か月がたち、ようやく戻れた学校。それぞれの思いを胸に、悲しみを乗り越え、前へ進み出しています。

海から朝日が昇るにつれ、サンロケ地区は活気にあふれ始めました。子どもたちはお風呂に入り、朝食を食べ、久しぶりに登校する学校の準備をしています。フィリピンに甚大な被害をもたらした台風30号からちょうど2か月。大切な一日の始まりです。

「この学校には17の教室ありましたが、残ったのはたった1つでした」と、サンロケ小学校のマイラ・サルヴェ先生が話します。

台風でこの学校の生徒9人が命を失いました。マイケル・レリオスくん(13歳)は「僕の大好きだった先生は、台風の被害にあって亡くなりました」と、母親のような存在だった先生を思い、目に涙を浮かべます。

「台風から2日後、学校を訪れました。学校は壊滅的な被害を受けましたが、希望は失いませんでした。なぜなら、必ず誰かが力を貸してくれると信じていたからです。私たちは、再び立ち上がります」(サルヴェ先生)

学校の再開は、復興の始まり

© UNICEF Philippines/2013/Reyna
フィリピン・タナワン市のサンロケ小学校に登校したマイケル・レリオスくん(13歳)。台風30号で学校が壊滅的な被害を受けました

サンロケ地区では仮の家屋やテント、避難所での生活を強いられている人々が依然として多く、台風被害の余波が続いています。この経験は、子どもたちにとってトラウマになる可能性もあります。学校に戻ることによって、子どもたちは日常生活を取り戻すことができます。それは、復興へ向けての大きな一歩を意味します。そして両親は、子どもたちが学校にいる間、家や生活を立て直すために時間を使うことができます。

ユニセフやNGO、パートナー団体の協力のもと、教育省と社会福祉開発省は台風の被害にあった地域に住む50万人の子どもたちのために、「一緒に前に進もう」をテーマに「バック・トゥー・ラーニング(再び学ぼう)」キャンペーンを開始しました。

12月2日には学校が部分的に開校され、非公式ながらも授業を開始することができました。ユニセフは子どもたち50万人分の学習やレクリエーションのための教材や物資の提供、3,000箇所の臨時の学習スペースの設置、1,000校への水と衛生施設の設置を12月から開始しています。

「学校に戻れてうれしいです。読み書きや他の人への思いやりを学ぶために、教育は大切です」と、13歳のロナリン・グラビロちゃんが話します。

マイケルくんも、将来のための教育の大切さを感じています。「学校に通うことはとても大事なことです。友達もできるし、将来仕事を持つときに役に立ちます」

サンロケ小学校は現在、2つのテントと6つの仮設の教室で授業を行っています。台風の被害にあう前は16人の教師と750人の生徒が在籍していました。しかし、今日学校に登校した生徒はその半数です。多くの子どもたちはマニラやセブに身を寄せています。

希望を生む、教育のちから

© Philippines/2013/Reyna
サンロケ小学校の臨時の教室でマイラ・サルヴェ先生の話を聞く生徒

緊急事態下や復興に向けた社会のなかで、教育がもたらす効果は多岐にわたります。緊急事態下でも、子どもたちは学校に通うことで守られた環境でケアをうけることができます。学校は、子どもたちが壊滅的な被害の中でも日常生活を取り戻し、普段の穏やかな感情に戻ることができる、心の癒し場所になるのです。サンロケ小学校も例外ではありません。そして学校の再開によって、両親は生活を立て直すために時間を費やすことができます。

教育は、悲しみに沈む心を前向きに変える力を持っています。ロナリンちゃんやマイケルくんを含め、子どもたちにとって、学校に戻って勉強することは、希望あふれる未来への出発でもあるのです。