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経口補水塩(ORS)誕生物語
1980年代中頃、げりを原因とする脱水症状が年間500万人の5歳未満の子どもの命を奪っていました。現在ではその数は大幅に減っています。これはORS(Oral Rehydration Salt=経口補水塩)を使った簡単な療法のおかげです。子どもにとって今世紀の大きな功績のひとつと言われるこのORSはどのようにして生まれたのか、その歴史をたどってみましょう。
ORSとは?
食塩とブドウ糖、ミネラルが配合された粉末です。安全な水1リットルに混ぜて飲むことで、より早く効率的に水分を補給することができます。げりやおうと、発熱などによる危険な脱水症状から子どもたちを救うのに役立つ緊急支援パッケージの1つです。
ORSはなぜ優れているの?
子どもがげりをすると、水分や栄養分が体からうばわれます。さらに、はげしいげりをこわがって、水や食べ物をひかえがちになると、すぐに脱水症状になってしまいます。脱水症状は子どもの命をうばうこともあるおそろしいものです。この状況に大きな変化をもたらしたのがORSです。
塩と砂糖を主な原料としてつくられている経口補水塩(ORS)を水にとかして飲むだけ。げりをして水分を吸収する力が落ちている子どもでも、この特別な水だけは体にしっかりと水分を補ってくれます。
このすばらしく簡単な療法は、経口補水療法=ORT(Oral Rehydration Therapy)とよばれています。
ORSが開発される前、げりによる脱水が起きたときに水分を補給する方法は「静脈への点滴」しかありませんでした。点滴や注射などの治療法は専門の医療知識や資格を持った人でないと子どもにおこなうことができません。これにくらべて安全な水にORSをとかして子どもの口から与えるだけのORTは、医療知識を持たない人でも簡単におこなうことができます。このように、ORSはだれもが簡単に、すばやく、脱水症状の治療を行うことができるようになった点で、とても画期的な発明でした。
ORS誕生
ORSの誕生は、19世紀以来のコレラ研究と深い関係があります。
1832年、アイルランドの医師ラッタが瀕死のコレラ患者15人に食塩水を注射し、5人の命を救いました。しかし、医学会は数十年にもわたり疑問を持ち、この治療法は普及しませんでした。それから約80年後、英国の病理学者ロジャースがインドのカルカッタでコレラ患者にこの療法をふたたび実施。患者の死亡率を下げることに成功しました。
1940年代末にはオックスフォード大学の研究員が、砂糖は小腸に吸収されるさいに、塩と水も一緒に小腸内に運んでいくことを発見しました。また、同じころアメリカのフィリップスが今日使用されているものに近い点滴溶液をつくりだしました。その後、彼はORSの開発にも目をむけましたが、塩の割合を誤って実験中に死者を出し、落胆したフィリップスはORS研究を中止してしまいます。しかし、フィリップスは66年に東パキスタン(現バングラデシュ)のコレラ研究所所長(現在の国際下痢研究所)に就任、ORSの開発に再び精力を注ぎはじめました。そして現地でコレラが流行したときに初めてORSを使った経口補水療法(ORT)の大規模テストに成功、中程度の脱水症状なら点滴でなくてもORTだけで症状が回復することを確かめました。
おうちでできる経口補水療法
ORSがさらに大きな効果を発揮したのは1971年、東パキスタンの内戦のときでした。隣接したインドの難民キャンプで3人にひとりが死亡するほどのコレラがたちまちのうちに広まったのです。。患者の5人に2人は小さな子どもでした。あまりの大流行のため、点滴液が不足し、カルカッタのジョンズホプキンズ大学研究所からORSを持った医療班が到着しました。この医療班は3700人の患者にORSを使って経口補水療法(ORT)を実施し、96%以上の患者の命を救うことができたのです。一方、病院に入院したコレラ患者の死亡率は25%にも上りました。ここでこの治療法の効用は、はっきりと証明されたのです。その後ORSは急速に広まっていきました。
1980年代にユニセフは「子ども健康革命」をすすめ、その中で積極的にORSを広めていました。1980年代はじめ、普及率はわずか1%でしたが、現在では、脱水症状になった子どもの多くが経口補水療法(ORT)によって治療されています。また、ORSのパッケージを使うだけでなく、水に決められた量の砂糖と塩を溶かして飲ませる方法を家庭に広めることでさらに効果が上がっています。いまだにげりは5歳になる前の子どもが命を落とす主な原因のひとつで、多くの幼い命がうばわれています。手軽にできる経口補水療法(ORT)をさらに広め、げりによる子どもの死を減らすことはユニセフの大きな使命のひとつです。
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