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【海外インターン帰国報告会】
井上保子さん(コンゴ民主共和国事務所)・森田智彦さん(エチオピア事務所)

【2015年11月5日】

ユニセフのコンゴ民主共和国事務所・エチオピア事務所でそれぞれ海外インターン生として活動していた井上保子さん、森田智彦さんが帰国し、厳しい環境が続く現地の状況や、インターンシップの様子を伝えました。

報告会のようすをお届けします!

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報告者の一人である井上さんは、2015年6月から9月までの3ヵ月間、コンゴ民主共和国ユニセフ現地事務所の保健システム強化ユニットに派遣されていました。コンゴ民主共和国事務所は、業務はすべてフランス語(!)という現地事務所です。今回は、主だった仕事のうち、妊産婦死亡率・乳幼児死亡率の削減を目標としたCAO4&5のドキュメンテーションに関して、特にその4つの柱の一つであるコミュニティ・エンパワメントについて報告を行いました。

ユニセフでは、コンゴ民主共和国において、州レベルにおける保健システムの支援を行っています。しかし、現在のシステムでは、ワクチン、マラリア、母子保健などといった、病気別・課題別の各ユニットがそれぞれ関係する部署に個別に支援をおこなっており、横のつながりがあまりない状態であるとのこと。その点に危機感を感じた各州において、国内の州数の拡大に伴い、各ユニットで分かれていたものをまとめることによる、縦割りのシステムの改善が試行されているそうです。ユニセフ現地事務所でもこれに賛同し、システム改善の動きが起こりはじめています。

インターンシップの内容に関する報告では、コミュニティ・エンパワメントが妊産婦や乳幼児の死亡率を削減するのにいかに重要であるかについて中心に、報告がおこなわれました。ユニセフが毎年発行している『世界子供白書』の2015年度版によると、2013年時点でコンゴ民主共和国の5才未満児死亡率は、出生1000人あたり119人、世界でもワースト8位に位置しています。この状態を改善するためコミュニティ・エンパワメントを通じた乳幼児死亡率の削減が取り組まれ、コミュニティ・ヘルスワーカーと呼ばれるボランティアが月に一度、健康のための適切な情報の普及のため家庭を訪問し、それに基づいて家庭において病気の予防、重症化の防止がはかられるなどの対策が講じられています。しかし、課題も多く、保健部門のほとんどが医者であるため、コミュニティ・エンパワメントについて詳しい人がいないなど、うまく機能していないのが実情のようです。

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もう一人の報告者である森田さんは、ユニセフエチオピア事務所でのインターン活動の様子を報告。森田さんが派遣されたのは、WASH(Water, Sanitation and Hygiene)セクションと呼ばれる部門で、農村部の水・衛生事業に携わっていました。

国連ミレニアム開発目標(MDGs)では、ターゲット7cにおいて「2015年までに、安全な飲料水および衛生施設を継続的に利用できない人々の割合を半減する」と定めています。エチオピアはこのうち、安全な水へのアクセスに関しては目標を達成できたものの、改善衛生施設へのアクセスは29%にとどまり、達成することはできませんでした。これらへのアクセスが不十分であると、手やハエなどの様々な媒体を通して体内へと排泄物が運ばれ、下痢や環境性腸症といった症状を引き起こすことで、栄養吸収が抑制。結果として慢性栄養失調となってしまうそうです。5歳未満の子どもが慢性栄養失調になると、死亡リスクが2.3%、重度のものになると5.5%上昇。そのため、安全な水や改善された衛生施設へのアクセスが重要となります。森田さんが携わっていたセクションでは、この問題に対して、給水・衛生施設の設置、コミュニティ主導による包括的衛生、衛生マーケティング、水の多目的利用といった4つの事業によって改善のためのアプローチを行っていました。

森田さんはインターンシップを通して、異なる分野の橋渡しをおこなえる人材が求められていると感じた一方で、国の政策レベルで貢献できる専門性を持つ人材も必要とされていることに気が付かれたとのこと。そして、「国の違う人達が、違う意見を出し合って、1つのものを作り上げていくこと」、そこにこそ国際機関で働く魅力があると述べ、今回の報告会を締めくくりました。

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日本ユニセフ協会では、「国際協力人材養成プログラム」の一環として、国際協力・社会開発・子どもの人権などに関する研究を行っている大学院生を対象に、ユニセフの現地事務所でインターンとして働く海外インターン派遣事業を行っております。毎年、支援現場の最前線で、多くの参加者が非常に有意義で貴重な体験を積んでいます。2015年度募集要項、今までの海外インターン生の体験記は以下リンクよりご覧ください。

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