Looking Back on 2008
2008年ユニセフのハイライト 日本語訳

2008年は、世界の子どもたちが天災・人災に立て続けに直面した年でした。常に準備を整えているユニセフは幾度となく要請に応じ、子どもと家族に人道支援の手を差し伸べました。しばしば大きな困難にぶつかりましたが、2008年を振り返ると、私たちは達成感で誇らしい気持ちですし、今後も困難に立ち向かう情熱を新たにしています。

 2008年のユニセフの業績からは、政府や国際機関、民間企業、地域社会が協力して行った活動が子どもに良い結果をもたらし、ミレニアム開発目標に向け前進したことがはっきりわかります。

 2008年には物価の高騰や人口増加、凶作、干ばつ、砂漠化などの悪影響で、弱い立場にある何百万人もの人々の食糧と栄養の保全が大きな懸念となっています。この状況に対処するため、バン・キ・ムン国連事務総長は4月にハイレベル・タスクフォースを発足させ、ユニセフもそのメンバーとなりました。

 今日、かつてないほど多くの子どもたちが学校に通っています。その中には、紛争や災害の影響を受けて暮らす何百万人もの子どもも含まれています。ユニセフと欧州連合(EU)は、イラクから流入した大勢の難民を受け入れるため、シリアの学校を支援しています。2月にはユニセフのアン・ヴェネマン事務局長がリベリアを訪れ、自身の目でいかに多くの子どもたちが学校に戻りつつあるか、そして地域社会が引き続き長年の紛争から回復しつつあるかを確かめました。

 ヴェネマン事務局長は今年だけで、ブラジル、ガーナ、ハイチ、アイルランド、カザフスタン、マダガスカル、メキシコ、シエラレオネ、トーゴなど計22カ国を公式訪問しました。

 コンゴ民主共和国では性的暴力の被害者らが、V-Dayとユニセフの国際キャンペーン“私たちの最大の資源(女子)へのレイプをやめよう、コンゴ民主共和国の女性と女の子に力を”の一環として、沈黙を破り発言しました。政府高官、国連職員、外国の代表団、V-Day創立者イブ・エンスラーの前で、女性と女の子たちはレイプや、それが彼女たちの生活に及ぼした影響について語りました。

 アルマ・アタ宣言から30年、プライマリー・ヘルスケアは今も前進を続けています。9月に公表された新たなデータでは、5歳未満児の死亡率が継続的に減少していることが明らかになりました。この前進をさらに拡大するため、ユニセフとH-8パートナーは技術的支援の発展、地域社会に根ざした対策活動の強化、能力開発、保健制度の強化、新生児と妊産婦の保健プログラムの拡大などに尽力しています。

 4月には妊産婦、新生児、子どもの生存に関する『2015年に向けてのカウントダウン』という報告書が、ケープ・タウンで開催された列国議会同盟の年次会議の席で発表されました。それに続き、世界中の保健専門家50人に対し、子どもと妊産婦の死亡率を改善する活動を加速するよう要請が行なわれました。4月に執行理事会が確認したところ、ニジェールも多くの国々と同様、妊娠に関係する死亡を減らすために“継続的ケア(continuum of care)”を導入しました。

 ナイジェリアの若者たちは、HIV/エイズと闘うため、教室や街角で自分たちの知識を使って指導的な役割を担っています。ザンベジ川ではRoll Back Malaria(マラリア撃退)パートナーシップがゴムボートを使い、世界の最も遠隔地であるいくつかの地域に蚊帳を配布しました。

 日本で行なわれたジュニア・エイト・サミット(J8)で、若者たちは世界のリーダーに対し、これからの地球温暖化に立ち向かうことを求めました。10月には国連環境計画(UNEP)の国連子ども環境ポスター原画展を通じ、気候をテーマに若者が描いた絵画の売り上げがユニセフの緊急プログラムに寄付されました。また、オーストラリアで人気のある子どもタレントのウィグルズが、初めての「世界手洗いの日」を記念してユニセフに歌を寄贈し、習慣の変革を呼びかけました。

 子どものための革新的な変化をもたらすことを目的とした政府と民間の協力は、2008年のユニセフの資金調達とアドボカシーの重要な戦略となりました。

 緊急支援の提供も、2008年のユニセフにとって大きな仕事でした。ユニセフはパートナー団体・機関とともに、中国の大地震やガザ地区での紛争で生き残った子どもたちに教育と外傷後ストレス・ケアを提供し、ハイチでは洪水で被害を受けた数多くの学校の再建と修復を行い、ミャンマーのサイクロン被害者には安全な飲料水と避難所を提供しました。

 11月には第3回子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議のため、リオデジャネイロに130カ国余りから約3000人が集いました。一方、ブルンジでは200人余りの子ども兵士が解放され、学校と社会に復帰しました。法律の改革は、持続的発展にとって最も見落とされてきたことのひとつです。過去10年間に、ユニセフは子どもの権利を見直すような法的改革を奨励することに指導的役割を果たしてきました。

 ユニセフ親善大使たちは、世界の関心を子どもの問題に向けるべく、警鐘を鳴らし続けました。デイビッド・ベッカム選手はシエラレオネを、ジャッキー・チェン氏は北京を訪問し、ミア・ファローさんは中央アフリカとハイチを何度も訪ねました。元子ども兵士のイシュマエル・ベアさんはジャマイカの若者たちに、暴力に反対するよう訴えました。ピアニストのランランさんは財団を発足させ、ヨルダンのラニア王妃はブラジルとアルゼンチンを訪問し、南アのデスモンド・トゥトゥ大司教は新しく作成された公共広告の中で、世界人権宣言の60周年を称えました。

 世界は過去60年間で、それ以前の500年間よりも子どものための大きな前進を遂げました。しかし地球規模での経済の下降が世界に影響を与え、子どもが直面する課題は今も緊急かつ複雑なまま残されています。

 ミレニアム開発目標の達成に向けた推進力を加速するため、世界は子どものために投資を続けねばなりません。民間のドナー、政府、ユニセフ国内委員会、NGOとの迅速かつ協調的な活動が必要とされています。ユニセフは進化を続け、これからも世界の子どもたちのニーズに応えていきます。

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