メニューをスキップ
財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー プレスリリース

「はしか」による死亡60%削減。
ユニセフ・WHO他 「はしか対策キャンペーン」の成果を発表

【2007年1月19日 ニューヨーク/ジュネーブ発】

© UNICEF/HQ06-0083/ Noorani

ユニセフは、WHO(世界保健機関)をはじめとする「はしか対策キャンペーン」実施パートナーと共同で、1999年から2005年の間に、「はしか」による死亡件数が60%削減されたと発表しました。これは、国際社会が当初掲げていた「半減(50%削減)」という目標を大きく上回る成果です。

WHOの統計によると、1999年に87万3,000件と推計されていた麻疹による死亡は、2005年には34万5,000件(推計)にまで削減されました。ユニセフなどは、特にアフリカにおける状況の改善(推計50万6,000件から12万6,000件に75%削減)が著しい、と報告しています。

今回報告された統計内容の詳細は、今週発行される国際的医学専門誌『The Lancet』に掲載される予定です。

はしか対策キャンペーン(はしかイニシアティブ)とは?
© UNICEF/HQ06-0975/ Noorani

「はしか対策キャンペーン(はしかイニシアティブ)」は、はしかによる死亡を世界的に減少(2010年までに、はしかによる推定年間死亡数を対2000年比で90%削減することを目標としています)させるために、ユニセフ・WHO・米国赤十字社、米国疾病予防管理センター(CDC)、国連財団などが2001年にスタートしたパートナーシップです。スタート後の5年間(2001−2005年)は、アフリカを中心に展開。3億6千万人以上の子どもたちに、はしかの予防接種を提供しました。こうしたアフリカでの実績を基に、本キャンペーンはアジアでも展開されるようになりました。本キャンペーンはまた、子どもの命を守るために必要なビタミンAや抗寄生虫薬、マラリア予防の為の殺虫剤処理された蚊帳など、はしかワクチン以外に必要なものも徐々にも加えて提供するようになりました。本キャンペーンは、2006年に、アフリカ・アジアで43カ国以上のキャンペーンを支援。2007年には、世界全ての地域のはしか予防接種キャンペーンのサポートをスタートする予定です。

はしか: 国際社会の重要課題

はしか対策キャンペーンなどの活動により、国際社会は、大変大きな目標を一つ実現しました。しかし、子どもたちが「はしかの脅威」から完全に開放されたわけではありません。

  • はしかは予防接種によって防ぐことができる子どもの死亡の原因の一つです。この病気のために、1999年だけで、世界で推定87万3千人の人々が亡くなりました。その大部分、79万千人は5歳未満の子どもでした。
  • はしかは、肺炎、下痢、脳炎や、失明の原因ともなりうる角膜障害といった深刻な合併症を引き起こすことがあります。
  • 開発途上国の「はしか」による死亡率は1-5%です。しかし、人々の栄養状態が悪かったり、医療機関へのアクセスが確保されていない地域では、はしかによる死亡率は10-30%に達する場合があります。
  • 飛まつ感染(空気感染)するため、はしかは最も伝染力の強い病気の1つです。
  • 世界では何百万もの子どもが、今もはしかの危険にさらされています。栄養不良の状態にあり、かつ予防接種を受けていない5歳未満の子どもは、はしかの感染率が高く、また死亡する可能性が高いのです。
  • 今でも「はしか」による死亡が少なくない背景には、最低1回の予防接種を全ての乳幼児に行えていないことに起因しています。
  • はしかの予防接種は、子どもの死亡を防ぐために、最も費用対効果の高い手段の1つです。1米ドルに満たない費用で、子ども一人に、はしかのワクチンを投与することができます。
  • はしか対策キャンペーンが支援する予防接種キャンペーン(全国一斉予防接種活動など)が、医療施設やサービスが普及していない開発途上国では、幼い子どもたちにとって医療サービスを受ける唯一の機会になることがあります。予防接種活動は、子どもたちが生き残るために無くてはならない活動です。
数字で見る「成果」と「課題」

*地域名はWHOの定義による。

  • 1999年から2005年の間に、全ての年齢層において、はしかによる死亡が60%削減された。
    1999年: 約873,000件 (誤差範囲: 634,000〜1,140,000件)
    2005年: 約345,000 件 (誤差範囲: 247,000〜458,000件)
  • アフリカ地域における死亡率の改善が最も大きく、全世界で削減された死亡件数の72%を占めている。
  • 1999年から2005年の間に、予防接種によって、およそ750万件のはしかによる死亡が回避された。
    通常の予防接種活動の拡充に加え、補足的な予防接種活動(Supplemental immunization activities-SIAs)が実施されたことにより、230万人の命が守られたと推定される。
  • 1999年に約791,000件(誤差範囲: 573,000 〜 1,032,000件)だった5歳未満の子どもの死亡が、2005年には311,000件 (誤差範囲: 222,000〜415,000件) にまで削減された。
    注目すべきは、この75%がアフリカ地域で達成されたという点。同地域では、5歳未満のはしかによる死亡件数が、459,000件 (統計的誤差範囲:335,000-597,000件)から114,000件 (統計的誤差範囲83,000 - 148,000件)となった。
  • 2000年から2005年の間に、はしかによる死亡率が高かった47の「重点国」で、生後9ヶ月から14歳までの子ども3億6200万人以上が、SIAsを通じて予防接種を受けた。
  • 「はしか予防接種キャンペーン」を通じ、1980年以降これまでに、全世界の15歳未満の子どもたちのおよそ60%が、通常の予防接種サービスを通じてはしかに対する耐性を得たと推定される。
    通常の予防接種サービスではしかの予防接種を受けられなかった子どもたちを対象にしたSIAsや「追加の予防接種」活動は、1980年代後半に始まり、2000年以降世界各地で広範に実施されるようになった。その結果、はしかの予防接種を受けられる15歳未満の子どもの数は、対1980年代比120%増となった。
  • 1999年から2005年の間に、通常の予防接種活動を通じた「接種率」が、71%から 77%に向上した。
    ただし、地域差は存在する(例: アフリカ地域では、1999年に50%だったが、2005年までに65%に改善された)
  • 残されている課題
    WHOとユニセフの推定では、通常の予防接種サービスを通じてはしかの予防接種を受けられなかった1歳未満の子どもは、全世界で、2005年1年間だけで2900万人以上にのぼる。また、同年1年間に、2000万件以上のはしか患者が発生したと推定されている。

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る