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財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー プレスリリース

イラクの子どもたち、希望と不安を胸に学校にもどる

【2007年10月6日 アマン/バグダッド/エルビル発】

イラクの約600万人の子どもたちが今週、教室にもどってくる。これは、イラクの学校を継続して機能させるために親や教師、地元の自治体職員らがきわめて大きな努力を払った結果である。

しかしながら現在も続く紛争のため、多くのイラク人家庭にとって質の高い教育を受けることは難しく、かれらの努力に対するいっそうの支援が必要とされている。

昨年度は学校にとって近年で最も困難な一年だった。年度末の試験の合格率は非常に悪く、避難生活や継続的な治安の悪さが大きく影響した。イラク教育省が公表した数値によると、イラク(クルド人地域を除く)の中学最終学年の生徒のうち、2007年の第1期試験で高校に合格したのは、わずかに40%であった(昨年の合格率は60%)。

さらに懸念されるのは、卒業年齢に当たる生徒のうち試験を受けた子どもは28%(17歳の人口約64万2,000人のうち152,000人)に過ぎなかったということである。この数字を増やすため、現在、追試が実施されている。

ユニセフ・イラク事務所長ロジャー・ライト氏は、「数値はどうであれ、イラクの子どもたちにとっては、試験を受けたことすなわち合格と考えるべきだ。かれらの多くは試験センターに行くだけで、大変な危険を冒しているのだから」と述べた。

「学校教育へのアクセスという点でも、子どもたちが受ける学習の質という点でも、イラクの学校は緊急に支援が必要である。良い教育を受けた子どもたちは、イラクを安全で希望ある未来へと導いてくれる。」

ユニセフの支援を受けてイラク政府が行なった2006年調査によると、前年、暴力や避難が激化する前でさえ、イラクでは、6人に1人の子どもが小学校に通っていなかった。地域社会からの報告では、治安の悪化や弾圧、学校や教員に対する直接的な攻撃の脅威などの理由により、多くの地域で出席率が低下しているとのことである。

さらに、イラクの学校制度に大きな負担となっているのが、避難の問題である。2006年初頭以降、22万人以上の学齢期の子どもたちが、家を離れなければならなくなった。学年度の中途で再就学する場合に関しての明確な規定がないため、多くの子どもたちが、新たに移り住んだ地域で学校に通うことができなかったり、何ヵ月も学校教育を受けられなかった。

夏の間中、ユニセフは、新年度には子どもたちが教育を受ける見通しが立つよう、イラク教育省を支援し続けた。難民となった子どもたちのための再就学手続きがより明確化され、生徒数が増えた学校の負担軽減のため、教員の再配属も行なわれた。ユニセフとパートナー団体・機関は、破損した校舎の修復や、教室および水やトイレの増築などを支援した。不安や喪失など精神的なダメージを受けた多くの子どもたちに対する心理社会的なケアを提供できるよう、教員研修も行われている。

また、ユニセフは地元の地域社会と協力し、避難したことや治安の悪化のために家にいることを余儀なくされている子どもたちのために、イラクで初めての家庭学習カリキュラムを推進している。現在、2万人の学校に通えない子どもたちが、教育を終えるためにこの特別学習促進プログラムに参加している。

ライト氏は、イラクの家庭が子どもに教育を受けさせたいという強い願いを持っていることを賞賛し、すべての当事者に対し、すべての子ども(とくに中途退学のおそれがある女の子)が学校に行けるようにするため、あらゆる努力を払うようにと呼びかけた。また、すべての子どもにサービスが届くように、教育対策活動への国内外の支援を要請した。現在のユニセフの緊急教育支援の実施は、内部資金に大きく依存している。

ライト氏は、イラクの親や教員が自信を取り戻すように働きかける一方、地元の治安維持をより強化しなければ子どもが通学できるようにはならないと強調した。

「どの子も皆、勉強してより良い未来を築きたいと思っているのに、家にいなければならず、フラストレーションを抱えている。現在のイラクに投資するとすれば、子どもたちが質の高い教育を受けられるようにすることこそが、最良の投資なのだ。」

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