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公益財団法人日本ユニセフ協会

ガザ地区:
がれきに埋もれたガザで、喪失を乗り越えて
23万人の子どもに心のケアやレクレーション活動を実施

【2014年9月29日 パレスチナ・ガザ地区発】

ガザの学校で風船を使って子どもたちとゲームをするカウンセラー。レクレーション活動を通じて、子どもたちが徐々に学習へ戻れるようにする取り組みの一環。
© UNICEF Gaza/2014/El Baba
ガザの学校で風船を使って子どもたちとゲームをするカウンセラー。レクレーション活動を通じて、子どもたちが徐々に学習へ戻れるようにする取り組みの一環。

ガザ市のシュジャイヤ地区に暮らす10歳のシャイマちゃん。かつては人でにぎわっていた自宅近くは、がれきにうもれ、戦闘で使われていた爆発物の残がいが、あちらこちらにあります。

この夏に起きた戦闘で、ガザでは1万8,000の住居が破壊され、子ども506名が死亡、3,000名以上が負傷しました。壊れた家のがれきは積み上げられ、かつての所有者の名前と連絡先を記した布が添えられています。

ほこりっぽい道路の行き止まりは下水で覆われ、壁には笑顔の男性と幼い女の子が描かれた布が掲げられていました。ここは戦闘で殺害されたふたりが暮らしていた家の玄関です。

家の中では、女の子が白いレースのえりがついた緑の制服を着て、学校に行く準備をしていました。

戦闘が始まって10日目。自宅近くは、激しい迫撃砲や空爆の攻撃を受けていました。シャイマちゃん一家は、より安全な同じ建物の1階にある祖父の家に避難していました。

「朝早く、 爆撃の音が近づいてきていました。すると突然、近所に爆弾が落ちました。みんな走って逃げましたが、お父さんと妹は逃げられませんでした。だれかが、私のお父さんが死んだと叫ぶ声が聞こえました」と当時の様子を語りました。

シャイマちゃんの父親のアデルさんは、2歳の娘ディマちゃんと一緒にリビングのソファーにいました。ディマちゃんを抱いて寝かしつけようとしていたとき、近所の家に爆弾が落ちました。家の壁を突き抜けた金属片が刺さり、ふたりは命を落としました。

「おじさんが妹を抱いているのを見ました。爆撃で、妹の頭が切断されていました。お父さんの方は見ませんでした。重傷だったらと思うと怖くて、見ることができなかったのです。ただただ走って逃げました」と話すシャイマちゃん。

深く傷ついて

カウンセラーに自身の経験や思いを話すシャイマちゃん。(ガザ)
© UNICEF Gaza/2014/El Baba
カウンセラーに自身の経験や思いを話すシャイマちゃん。

子どものトラウマ(心の傷)を専門的にケアするユニセフのパートナー団体のカウンセラーは、定期的にシャイマちゃんを訪問しています。カウンセラーは、シャイマちゃんの自宅を訪れ、シャイマちゃんが自身の経験を話す支援を行っています。

「お父さんにさようならを言うことはできませんでした。父親を亡くした子どもにはなりたくなかったし、お父さんと一緒にいたいのです。お父さんとの思い出は、楽しいことばかりです。私がおもちゃを買ってとお願いしなくても買ってきてくれるほど、優しいお父さんでした。お父さんと妹にもう一度会いたい。妹におしゃれをさせて、髪の毛をとかしてあげるのが大好きでした」と、語るシャイマちゃん。

シャイマちゃんの母親のシェリーンさんも、シャイマちゃんと同じく、深く傷ついています。

「夫は優しい人でした。子どもたちの求めに応じなかったことは、一度もありませんでした。娘のディマは、みんなにかわいがられていました。これまでにテレビで、亡くなったり、体を切断された子どもを見たことはありましたが、まさか自分の娘がそうなるなんて・・・とても傷つきました」

学校に通うことは、生活に以前のような日常を取り戻す助けとなることから、とても大切です。しかしシュジャイヤ地区では、学校に通うのは容易なことではありません。通りには、がれきと化した建物が並び、がれきにつまずいてしまう−これが新たな日常なのです。

学校にも戦闘の爪あとが残っており、建物の一部は、空爆の被害を受けています。

再び学ぶ

ユニセフとパートナー団体は、子どもたちが目撃や経験した恐怖を取り除くため、新学年が始まった最初の1週目をレクレーション活動に充てることにしました。レクレーション活動を通じて、子どもたちの心のケアを行い、ゆっくりと学習の再開へとつなげていきます。ユニセフは子どもたちが紛争後に抱える不安に対処し、特別な関心が必要な子どもたちを見つけ出すため、スクールカウンセラーや教員など約1万2,000人に研修を行いました。これにより、心のケアを受け、レクレーション活動に参加した子どもは23万人に上ります。

教室ではカウンセラー立会いのもと、シャイマちゃんや生徒たちが色とりどりの風船で遊んでいます。

急に体をこわばらせ、周囲のことなど何も目に入っていないように、うつろな目で壁を見つめたシャイマちゃん。

ひとりのカウンセラーがシャイマちゃんに近づき「こっちで一緒に遊んで、歌を歌おうよ」と声をかけました。

歌を歌う気分ではないと涙を流した10歳のシャイマちゃん。(ガザ)
© UNICEF Gaza/2014/El Baba
歌を歌う気分ではないと涙を流した10歳のシャイマちゃん。

シャイマちゃんは「歌なんて歌えません。亡くなったお父さんと妹のことを考えると、後ろめたく思います」とこたえると、頬には涙が流れました。

シャイマちゃんの英語の先生であるランダ・ハフムドさんは、「生徒たちは、恐ろしい光景を目にし、生き延びました。何もなかったかのように、また勉強し始めることなどできません。レクレーション活動と心のケアは、子どもたちが自身の経験と向き合う助けになると思います。わずかではありますが、シャイマちゃんも、教室で遊んだ後は笑顔を見せるのです」と、子どもたちの様子を語りました。

ガザでは、少なくとも37万3,000人の子どもたちが、心のケアを必要としています。ユニセフは、子どもの保護支援計画全体で1,250万米ドル(約13億6,250万円 ※1米ドル=109円で換算)の支援を必要としており、そのうち450万米ドル(約4億9,050万円)は心のケアプログラムが占めています。

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