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公益財団法人日本ユニセフ協会

バングラデシュ:
女の子が学校を休まなくなった理由
出席率や退学率に大きな影響を及ぼす、トイレの問題

【2013年10月9日 マウルビバザール(バングラディッシュ)発】

学校のトイレ環境は、女の子たちの出席率や中退率に大きな影響を及ぼす原因のひとつです。この状況を改善させるための支援システムや施設を設置するため、ユニセフは村の高等学校や政府と協力して支援を行っています。

* * *

想像してみてください。生徒数1,400人の学校に、たった2つのトイレ。トイレを使用するには長い列を並ばなくてはいけません。

やっとの思いで入るトイレにはハエが群がり、蚊の卵でいっぱいです。その悪臭は、30メートル先まで充満しています。

通っている学校にこのようなトイレしかなかったとしたら・・・初経を迎えた女の子が、「学校を休みたい」と思うのも無理はありません。

出席率を向上させるための試み

学校から自宅へ帰宅する女子生徒たち。新しいトイレの設置だけでなく、思春期の女の子の身体の変化などについて教えるプログラムも実施している。
© UNICEF Bangladesh/BANA2013-6020/Khokan
学校から自宅へ帰宅する女子生徒たち。新しいトイレの設置だけでなく、思春期の女の子の身体の変化などについて教えるプログラムも実施している。

バングラデシュ北部の農村部にあるタンガリ・バザー村の6年生から10年生が通うシャヒード・シュドーション高等学校では、女子生徒の出席率に大幅な低下が見られ、7年間にわたり、女子生徒の48%が中退していました。そして2011年まで、全生徒の半数は学校を中退していました。

しかし現在は状況が好転しています。全生徒の66%を女の子が占め、出席率は良好です。

成長に伴って異なるニーズが発生する若い女の子たちにとって、学校のトイレ環境が、登校を遠ざける要因となっていました。また、子どもたちは家庭や学校で、月経に関して何も教わっていませんでした。「月経がはじまると、生徒は1週間、学校から足が遠いていました。女の子たちは不衛生な状態のまま長時間トイレの列に並ぶことに耐えられなかったのです」と、ラニ・デヴィ先生が話します。

女子生徒の出席率と中退率、そして衛生状態を改善させるため、ユニセフは学校理事会や地域の政府関係者と協力して、衛生習慣や手洗いの方法について教育従事者との連携に重点を置いた支援を開始しました。そして、手洗いの施設や、18基のトイレを学校に設置するための資金が集まりました。

女性によるサポート

新しいトイレを使う女子生徒。「トイレができる前は、私も学校をやめたいと思っていました。でも今は、将来医者になりたいと思っています」と女子生徒が話します。
© UNICEF Bangladesh/BANA2013-6091/Khokan
新しいトイレを使う女子生徒。「トイレができる前は、私も学校をやめたいと思っていました。でも今は、将来医者になりたいと思っています」と女子生徒が話します。

「私はもう死んでしまうのだと思い、クリシュナお姉さんのところに行って泣きました」と13歳のシャーミンちゃんが、学校で初経を迎えたときのことを思い出して話します。「学校に行くのをやめようと思いました。でも、月経が女の子にとっては至って普通で健康なことだと教えてもらい、気持ちが楽になりました」

クリシュナお姉さんとは、クリシュナ・マラカーさんという、カウンセリングなどのサポートを女子生徒に行う地域のボランティアです。授業でも、デヴィ先生が衛生習慣について教えています。

マラカーさんは、女の子たちがきちんとサポートされていることを見てもらいたいと、薬箱をあけました。箱の中には、ばんそうこう、軽い鎮痛剤、殺菌用クリーム、そして支援プログラムの一環でトレーニングを受けた時から、生理用ナプキンも常備されています。

「身体を清潔に保つことが大切です。月経について先生に相談することを恥ずかしく思う女の子もいます。そのような生徒のために、私がいるのです」(マラカーさん)

「若いころから、月経の話は避けるように教えられていました。そして無意識に、話題にすることをやめていたのです。しかし、成長するにつれていずれ直面する問題について、子どもたち自身が正しい知識を身につけていることが重要です」と、デヴィ先生が話します。

シャーミンちゃんも、「女の子が教育を受けたり、月経中に体を清潔に保つことの大切さなど、月経に関する知識を身につけるべきだという考え方はまだ多くの人に知れわたっていません。ですから、私たちがこの状況を変えていかなくてはいけないのです」と話します。

「シャーミンちゃんのように、女子生徒も学校に通うことができるようになりました。これは、衛生環境の改善に取り組むとともに、子どもたちが自らの力で未来を切り開くことができるよう、行った教育の成果です」(デヴィ先生)

先生やコミュニティへのトレーニング

この学校の卒業生でもあるモハメド・ワヒドー・ラフマーン校長は、生徒が適切な衛生の知識や習慣を身につけられるよう、今後も取り組みを続けていくと語ります。2011年5月から、ラフマーン校長を含む6人の教員がマラカーさんとともにトレーニングを受けています。

この地域で1年以上活動するユニセフのカムル・アラム水と衛生専門官は「教育従事者の知識や情報を向上させなければ、衛生習慣に関する支援活動に成果が出ることはありません」と語ります。

モハメッド・ジア・イスラムさんなどのコミュニティ保健医療従事者は、衛生習慣や月経など、より配慮が必要な問題に取り組むため、トレーニングの実施や、衛生に関する子ども用の教材や本の普及を学校関係者と協力して行っています。

「このプロジェクトを開始した3年前、ラジナゴールでは依然として屋外排泄をしている人たちがいました。女子生徒の中退の原因が月経にあるという考えだけでなく、手洗いの習慣もありませんでした。そのため、この地域では少なくとも毎年15〜20人が、下痢が原因で命を落としていました。生徒に衛生習慣に関する授業を実施してから、現在までの死亡例はたった1件にまで減少しました」(イスラムさん)

シャヒード・シュドーション高校では、生徒がグループを作り、コミュニティに手洗いや衛生習慣、思春期に関するメッセージを伝える取り組みが行われています。そのメッセージは生徒から親へ伝わり、衛生環境を改善するためにコミュニティの人々が立ち上がりました。コミュニティのリーダーたちは資金を提供し、2年間で7つの手洗い施設を学校に設置したのです。

政府関係者も学校と協力して、ラジナゴールの3つの地域でトイレ施設の改善に取り組んでいます。

生徒の代表であるサビナ・ヤズミンさんは、「トイレがつくられる前は、私も学校をやめたいと思っていました。でも今は、将来医者になりたいと思っています。そして、衛生に関するメッセージをこの村で広めたいです。村は、その国の姿を映し出すものですから」

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