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公益財団法人日本ユニセフ協会

ガザ地区:
停戦から6カ月、トラウマに苦しむ子どもたち
日常に戻るための心のケアや教育支援を提供

【2015年2月26日 ガザ地区(パレスチナ)発】

昨年夏にガザ地区で勃発した激しい戦闘で父親と自宅を失った、ふたりの姉妹。未だに、過去を受け入れることも、より輝かしい未来のための一歩を進むことも、できずにいます。

* * *

ガザ地区で起こった51日間に及ぶ激しい戦闘が停戦を迎えてから6カ月が経ちました。しかし、サマールちゃん(11歳)とロソルちゃん(6歳)のように、子どもたちが戦闘で心身に負った傷は依然として消えることがありません。

かつて生活を送っていた自宅のある、戦闘で破壊された建物の前を歩くアリさん(中央)と孫のサマールちゃん(左)、ロソルちゃん(右)。
© UNICEF/NYHQ2015-0248/El Baba
かつて生活を送っていた自宅のある、戦闘で破壊された建物の前を歩くアリさん(中央)と孫のサマールちゃん(左)、ロソルちゃん(右)。

ふたりは激しい爆撃の中、両親や3人の兄弟と一緒に自宅から国連が運営する学校へ避難しました。その夜、一家が身を寄せていた教室が砲弾を受け、父親は死亡、母親が重傷を負いました。そして、ふたりも砲弾で傷を負ったのです。

破壊された自宅

サマールちゃんとロソルちゃんが暮らしていた自宅のある建物は戦闘で破壊され、停戦後も戻ることができませんでした。今は、ベイトラヒヤにある小さな廃墟で暮らしています。寝室が2部屋の小さな家に、おじいさんを含め12人が身を寄せています。

戦闘で自宅が損壊や破壊し、依然として10万人以上が避難生活を強いられています。そして、その半数は子どもたちです。

「子どもたちはすべてを失いました。あらゆるものが必要です。父親を失った今、母親である私は、子どもたちの父親役も果たさなければなりません」と、母親のネビーンさんが話します。ネビーンさん自身も戦闘で障がいを負っており、日常生活に助けが必要な状態です。

安全な場所など、どこにもない

父親の死を乗り越えようと懸命に努めながらも、深い悲しみに暮れるサマールちゃんとロソルちゃんを、ネビーンさんは見守り、支えています。

ロソルちゃんが再び制服を着て学校に戻ることを決意した数カ月前のことでした。先生が好きか尋ねると、ロソルちゃんは黙り込み、しばらくして涙を流し始めました。

「子どもたちは学校で攻撃に遭い、傷を負いました。手足を失った人々や顔や目に傷を負った人を目にしています。そして、父親の死にも居合わせました。娘たちはもう、学校が安全な場所だとは思えないのです」(ネビーンさん)

心に負った傷

ユニセフのパートナー団体のカウンセラーが、サマールちゃんやロソルちゃんの経過観察を行っています。

おじいさんの家の外の階段に座るサマールちゃんとロソルちゃん。
© UNICEF/NYHQ2015-0256/El Baba
おじいさんの家の外の階段に座るサマールちゃんとロソルちゃん。

サマールちゃんは回復の兆しが見えるものの、戦闘が起こってからは、かんしゃくを起こしたり、宿題をしたくないと言ったりしていました。何度かカウンセリングを行ったことで、幾分落ち着きを取り戻しているといいます。

サマールちゃんは時々おじいさんのアリさんと一緒に自宅があった場所を訪れるといいます。状況を受け入れつつあるものの、勉強に集中することができず、学業成績は低下しています。

「学校で起きた出来事によって、すべてが変わってしまいました。お父さんは殺され、家族みんなが傷を負いました。もう、家もありません」と、サマールちゃんが語ります。

継続的な支援が必要

ガザで暮らす多くの子どもたちのように、サマールちゃんとロソルちゃんは、これまでの日常に戻ることができるようにするため、心のケアや教育面での支援が必要です。子どもたちが直面する心身の問題を乗り越えることができるようにするためには、学校の関与が必要不可欠です。しかし、沿岸地域にある、少なくとも281の学校が被害を受けており、依然として修復は進んでいません。このような困難な状況に加え、先生自身も心身の傷に苦しんでいます。

これまでにユニセフは約3万5,000人の子どもと7,000人以上の養育者に心のケアを提供し、公立学校の教員1万2,000人に子どもたちに寄り添い手を差し伸べるための対応方法に関する研修を行いました。ユニセフは昨年9月に実施され、23万人の子どもに学用品を提供した「学校に戻ろう」キャンペーン続き、制服やくつの提供や学校の修復も行っています。これらの支援で生徒たちの生活に改善がみられているものの、依然として状況は不安定なままです。

「ガザで暮らす男の人、女の人、子どもたちのだれ一人、未来への希望を感じられずにいます。ガザの再建に向けた多くの計画が実現されることを祈っています。そうすれば娘は治療を受けて傷を治すことができ、自宅を失った人々が生活を再建し、よりよい人生を築いていくための基盤となる場所を手に入れることができますから」と、アリさんが語ります。

「孫たちにも世界の子どもたちと同じように、よりよい人生を送る権利があるのです」(アリさん)

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