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公益財団法人日本ユニセフ協会
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ネパール大地震緊急募金 第23報
ネパール大地震
災害後に高まる人身売買の危険
施設が子どもの売買や違法な養子縁組の温床に

【2015年6月19日 ジュネーブ/カトマンズ発】

被災した9歳の双子の姉妹。※本文との直接の関係はありません。
© UNICEF/PFPG2015-3137/Sokol
被災した9歳の双子の姉妹。※本文との直接の関係はありません。

ネパールで4月に発生した最初の大地震から約2カ月。ユニセフ(国連児童基金)は、これまでに少なくとも245人の子どもが、人身売買の被害に遭いかけたり、不必要あるいは違法な形で児童養護施設に収容されようとしていたと発表しました。

災害後に高まる人身売買の危険

ユニセフは、ネパールの女性・子ども社会福祉省や中央児童福祉委員会、内務省、警察、入国管理局と協力し、政策や直接的な対応を通じて、子どもの人身売買のリスクを軽減する活動を行っています。

「ユニセフは2度の大地震の後、人身売買の事例が急増することを危惧していました」と、ユニセフ・ネパール事務所代表の穂積智夫は話します。「生活の糧を失い、生活環境が悪化していく状況下で、親たちは、子どもが今よりもよい生活ができるとの人身売買業者の言葉を容易に信じ、子どもを手放すように説得されてしまいます。人身売買業者は、子どもたちへの教育や食事、そしてよりよい将来を約束します。しかし現実には、多くの子どもが過酷な搾取や虐待に遭ってしまうのです」

人身売買は4月25日の地震以前からネパールに広がっており、2001年に実施されたILO(国際労働機関)の調査によると、毎年1万2,000人のネパールの子どもたちがインドに売られているとみられています。買売春業に就くことがなかった女の子たちも、インドをはじめ他国の家庭で奴隷のように働かされたり、男の子は強制労働をさせられたりしています。地震のような災害の後には、こうした人身売買が横行する危険が高まります。

またネパールでは内戦以降、安全や教育を約束してくれるカトマンズやポカラの児童養護施設に、簡単に子どもを預けてしまう傾向がありました。大地震が起こる前の時点で既に1万5,000人の子どもたちが施設で暮らしており、そうした子どもたちは、規制が不十分な養子縁組、搾取、虐待の被害に遭いやすい状況にいます。施設で生活する子どもの85%に、少なくとも片方の親が生存していることが分かっています。

ユニセフの取り組み

ユニセフが支援する「子どもにやさしい空間」で遊ぶ子どもたち。守られた環境で安心して過ごすことができるこの空間で、子どもたちはスポーツをしたり、遊んだり、絵を描いたりできる。
© UNICEF/NYHQ2015-1081/Karki
ユニセフが支援する「子どもにやさしい空間」で遊ぶ子どもたち。守られた環境で安心して過ごすことができるこの空間で、子どもたちはスポーツをしたり、遊んだり、絵を描いたりできる。

ユニセフはネパール政府やパートナー団体と共に、子どもの人身売買を防ぐ取り組みを早急に行っています。

  • ユニセフは被災地をはじめ、ネパール全土の84カ所の検問所や交番の強化・新設を支援しています。
  • ユニセフはネパール国内のNGO団体を通じて、インドや中国との国境地帯に12カ所の審査・保護所を設けたり、人身売買の被害に遭った子どもの一時保護施設を11カ所設置する支援をしています。また、地震で最も被害が大きかった14郡で、人身売買に関する調査や啓発活動も行っています。
  • ユニセフは情報管理システムを強化することで、人身売買の疑いのあるすべての事例を確認し、被害を受けたすべての子どもたちを把握できるよう、関係者への支援を行っています。
  • ネパール政府は4月25日の地震直後から国際的な養子縁組を一時的に止めると共に、6月上旬には、子どもが親や承認された保護者を伴わずに郡をまたいで移動することを禁止しました。この措置は、親と共に暮らす子どもに対する不必要な国際養子縁組を防止する目的で行われました。
  • 新たな児童養護施設の登記は見送られています。子どもが故郷から別の郡に移住する際には、中央児童福祉委員会の事前の承認が必要です。また、すべての児童養護施設で、新たに子どもを受け入れるには、事前に政府に通知し、承認を得ることが必要となりました。
  • インド内務省は国境の監視体制を強化するよう通達を出しました。さらに、インドの市民社会は、人身売買の防止のための行動を呼びかけました。
  • ユニセフは地震が発生して以来、子どもの保護に関する意識喚起や広報キャンペーンを主導してきました。これまでに、家族の離散や人身売買を防ぐためのチラシ4万枚を、被災14郡の交番、避難民キャンプ、コミュニティ、地元団体などに配りました。
  • ネパールで運航している航空会社25社は、子どもの同伴者が法的な保護者であることを確認する必要性について、認識を新たにしました。
  • ラジオ・ネパールでは、人口の推定70%を占める視聴者に対し、親は子どもの安全を確保すること、子どもに話しかけたり、いい話を持ち掛けて子どもを手放すよう誘ってきたりする怪しい人物に注意することなどのメッセージを放送しています。
  • ユニセフは141カ所に「子どもにやさしい空間」を設置し、1万4,000人の子どもたちが利用できるよう支援しています。そこでは、子どもたちが地震のショックから回復する支援をしたり、ファシリテーターが家族との別離や人身売買の危険がある子どもを見つけ出したりすることができます。
  • ユニセフが設置した仮設の学習センターと「学校へ戻ろう」キャンペーンの一環で配布した教材は単に教育の中断を最小限にするためだけでなく、子どもたちを搾取や虐待から守り、自らの安全や健康を守るための情報を子どもたちに伝えるための支援でもあります。

ボランツーリズムに警鐘

ユニセフは養子縁組や児童養護施設への訪問を通じてネパールの子どもを助けたいとする“児童養護施設ボランツーリズム”に対しても、懸念を抱いています。

「ときには、子どもたちが故意に家族から引き離されて児童養護施設に入れられ、養子を望む家庭やボランティア、寄付者を引き込むために利用されていることもあります。多くのボランティアは善意でやってきますが、彼ら自身がそうと気づかずに、子どもたちを傷つけていることもあるのです。さらに、ボランティアの素性調査はされないこともあり、こうした体制は子どもの搾取や虐待を増加させる危険があります」(穂積代表)

“児童養護施設ボランツーリズム”の結果生じるマイナスの側面について周知するために、ユニセフは旅行業界やボランティアの分野の人々と緊密に連携しながら活動しています。ネパール国内外に40ほどある、児童養護施設へのボランティアを募っている代理店を特定し、こうしたボランティアプログラムを中止するよう働きかけています。そのうち8つの代理店では、すでにネパールでのボランティアプログラムを一時中止にしました。

「被災したコミュニティを建て直し、家族が一緒に暮らせるようにすることが、ネパールの子どもたちの震災からの回復を支える最善の道なのです」と穂積代表は話しました。

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