カンボジアスタディツアー報告

 7月27日の下院選挙投票が終わって1ヶ月。カンボジアの首都プノンペンは混乱も見られず、バイクが行き交い活気に満ちています。「人差し指の爪が黒いのは選挙にいった証拠なんだよ」と右手の人差し指を見せながら、ユニセフのスタッフ。例年7月下旬に行っている学校事業部のスタディツアーは、この選挙を考慮して今年は8月23日(土)から8月31日(日)に開催しました。その様子をお届けします。

セッコマープログラム

 学校事業部の指定募金では、カンボジアのセッコマープログラムを支援しています。セッコマーとはクメール語で「子どもの権利」。カンボジアの子どもたちの権利が守られるように、村全体でさまざまなプログラムが実施されています。対象となっているのは6つの州ですが、今回はそのうちの2つの州、南東部のプレイベン州と北西部のオッダーミアンチェイ州のアンロンベンを訪問しました。

プレイベン州での視察内容から

 クメール語で「森が長い」を意味するプレイベンですが、森林は切り開かれあたり一面に水田が広がっていました。比較的早期に解放されたこの地域では、特に女の子の支援に力をいれた活動を視察しました。

発育観察

発育観察 地域の子どもたちの健康状態を見るために、2歳未満の子どもは年に3回、5歳未満の子どもは年に1回、地域で発育観察を行います。名前の登録をすませると、体重と身長を測定して記録し、栄養指導や問診が行われます。また、これからお母さんになる女性には、母乳育児の重要性を教えていました。12歳から16歳の女の子たち数人が、育児や子どもの健康に関するロールプレイを集まった人びとの前で演じていました。この少女たちは、村の奨学金を受けています。村の発育観察の時に作業の補佐をしたり、村の人たちにロールプレイを通じて子育てについての情報を伝えたりしていますが、ここで身についた知識は自分たちがお母さんになったときにも生かすことができます。

村落行動計画

村落行動計画 村の住民が集まって、地域の問題について話し合い、解決方法を考える(村落行動計画)集会が開かれていました。ここでも奨学金を受けている女の子たち(12歳から14歳)がロールプレイを演じ、話し合ったり、相談することで問題解決することの大切さを伝えていました。その後、男性グループ、女性グループ、女の子グループに分かれ、それぞれのかかえる問題をあげ、原因とその解決方法について主体的に意見を出し合って紙に書き出していきました。自分たちの問題を自分たちの力で解決しよう、という意気込みが伝わってきます。

  アンロンベンでの視察内容から

 北部オッダーミアンチェイ州の町アンロンベンはポル・ポトが最後まで残った地、ということで1999年にようやく国内での紛争が終結しました。そのため、いまだに多くの地雷や不発弾が残っており、開発や支援もはじまったばかり。保健担当の職員が「ゼロからのスタートではなく、ゼロ以下(アンダーゼロ)からのスタートなんだよ」というように、まだまだ課題の多い地域です。ここでは地雷教育と米銀行について報告します。

地雷教育

地雷教育 まだ多くの地雷が残る地域だけに、子どもたちを中心に村の住民に対しても地雷教室が頻繁に開かれています。学校に通える子どもと、家の手伝いなど諸事情で学校に通えない子どもがいるのですが、学校で地雷について教わった子どもが先生役をつとめ、地域の子どもたちに地雷や不発弾について伝えています。14歳の女の子と11歳の男の子が大きな紙に書かれた地雷や不発弾の種類を説明したり、それらを見つけた場合の対処方法について、子どもたちがわかるまで何度も丁寧に教えていました。集まっていた子どもたちの中に、不発弾を見たことのある子が2人いたのですが、教室で教わった通り、近くにいた自分の親にその存在を伝えたそうです。

米銀行

米銀行 地域の住民が、一家につき米80Kgを出し合い、種が足りない家が借りることのできるシステムです。利息は10%と多めですが、それでも一般の米貸しよりは少ない利息なのだそうです。不作で借りた米全体が返せない年は10%の利息分だけを返済すればよいとのこと。現在参加している家族は地域の50世帯のうち20世帯。そのため、まだまだ米の量が十分でなく、貸し出せる量に限界があることが課題だと村長さんが訴えていました。この米銀行は利息が低めなので村民にもとても好評で、このシステムによって村人どうしの連帯感が強まったそうです。この米銀行の目的は、収入を安定させるだけでなく、それによってこの地に定住する住民を増やすことでもあるのです。


 今回視察できた部分は指定募金によって支援されているセッコマープログラムのごく一部です。それでも、ユニセフの地道な支援活動によって少しずつ地域が変わりつつあることを感じることができました。カンボジアの子どもたちの権利が守られるように、今後ともご支援をよろしくお願いいたします。