ユニセフは、年間およそ25億回分のワクチンを調達し、世界の5歳未満児の45%に届けている(2016年現在)。 世界最大のワクチン購入者として、ユニセフはワクチン市場の成長や価格の削減にも貢献している。

旅の出発地点はコペンハーゲン(デンマーク)。ここにあるユニセフ物資供給センターは、ユニセフの物流拠点として、物資調達本部とユニセフ最大の物資倉庫の機能を持ち、世界の支援現場に物資を届ける。自動化された倉庫で、ロボットにより運び出される物資の様子を見る長谷部選手。

物資調達本部のワクチン供給担当者から、ワクチンの製造、 発注、輸送のためのコールドチェーン(保冷物流システム)などの 仕組みを学ぶ。

2017年5月、アフリカ東部の国エチオピアで、ワクチンが運ばれるコールドチェーンをたどる旅が実現した。

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エチオピアに到着した日、まず向かったのは首都アジスアベバの中央冷蔵倉庫。主に国の中部~北部に送られるワクチンを貯蔵している。低温に保たれた倉庫から、ワクチンを運び出す。

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2000人分のワクチンを詰め込んだ保冷ボックスはかなりの重さ。スタッフと共にトラックに積み込む。 アムハラ州の南部に位置する北シェワ地域に向かって、ここからワクチンを積んだトラックが出発する。

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トラックを追ってアジスアベバからおよそ130km、北シェワ地域に到着。この地域を担当する ユニセフのエチオピア人スタッフたちが、この国の伝統的な“コーヒーセレモニー”で歓迎する。

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北シェワ地域の保冷施設では、ワクチンが種類ごとに分けられ、大型保冷ボックスの中で 保管されている。この1瓶で、10人分のワクチン。瓶には温度に反応して色が変わるシール が貼られ、適切な温度が保たれていることが確認できる。ここで、アルメニア地区に届ける ワクチンを積み込む。

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移動中、広場でサッカーをする若者たちを見かけ、声をかけてみる。 ヨーロッパのチームの試合をよく見ているという若者たち。長谷部選手のファンだという青年も。

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翌日、アルメニア地区保健センターで、この日に予防接種が行われるガシュ・アンバ村のために、保冷ボックスにワクチンを詰めていく。子どもたちの年齢や人数に応じて、必要なワクチンの種類や数がオーダー表に書かれている。

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ワクチンを詰めた保冷ボックスを持って保健センターを出る長谷部選手。ワクチンを託すのは、 保健普及員のテサイさんだ。テサイさんは、農村部に基礎的な医療・保健サービスを届ける役割を 担う、全国に38,000人いる保健普及員のひとり。

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ワクチンを届けて予防接種をおこなったり、保健や栄養の知識を伝えて保健ケアの裾野を広げたりする 保健普及員たちは、徒歩やバイクで村々を訪ねる。 バイクに乗り、この日の目的地、ガシュ・アンバ村に向うテサイさんを見送る。

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テサイさんを追って走ること約40分。ワクチンの旅のゴール、ガシュ・アンバ村に到着。村のシンボルである大木の下に即席の保健所が作られ、子どもを連れた母親たちが集まっていた。

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木の下で予防接種が始まり、赤ちゃんの泣き声が響く。 ガシュ・アンバ村では、ボランティアの女性たちが予防接種の大切さを伝え合い、子どもに受けさせていない家庭には声をかけて、子どもの健康に関する意識を高め合っている。

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木の下では、予防接種だけでなく、子どもの体重を測って成長を確認したり、保健師から栄養や発達に関して アドバイスをもらったりすることもできる。まさに、青空保健所。

旅のルートのあちこちで、サッカーをする子どもたちと出会った。ワクチンの旅の最終ゴールは、元気に成長する彼らの笑顔だ。

訪問を終えて 今回エチオピアで、ユニセフを通じて支援していることをしっかりとこの目で見られたことは、とても大きなことでした。現場に足を運ばなくては感じられないことが沢山ありました。子どもたちの命を守るワクチンは、コールドチェーンによってきちんと温度調節され、道なき道を運ばれていました。ワクチンを届けるために、困難な環境の中、様々な努力がされていることもわかりました。エチオピアで出会った子どもたちは、物質的には豊かではないかも知れませんが、みんな笑顔で生きていました。幸せって何だろうということを、子どもたちに教えてもらったように思います。大きな可能性を秘めたこの国を、彼らがより良くしていってくれると信じています。 日本ユニセフ協会大使
 長谷部 誠

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