女性のエンパワーメント
水くみの困難さが阻む、女性の社会進出

開発途上国では、家事や子どもの世話など、家の中の仕事は女性が行います。 家族全員分の飲み水や生活用水の確保も女性の仕事です。 片道1〜2時間かかる水源と家の間を何往復も繰り返し、 水くみだけで、毎日何時間も費やしているのが現実です。 井戸が近くにあれば、水へのアクセスを改善して女性を水くみの重労働から解放することで、 母親を対象とした所得向上活動の普及、ひいては、女性の社会進出にも貢献します。

© UNICEF/HQ00-0631/Lemoyne
井戸からくみ上げたきれいな水を飲む女の子 インド、ラジャスタン地区

女性のエンパワーメント
井戸修理工は女性たち! インド

世界のほかの開発途上国がそうであるように、インドでも水汲みは女性の仕事です。 毎日何時間も水汲みに費やします。 女性たちは水源の場所や水質について地域の水事情について良く知っています。 家族が必要な生活用水を確保して、やりくりする彼女たちは、 家族の健康、地域の健康に対する意識がとても高いのです。 だからユニセフは、「水と衛生」プロジェクトの重要なメンバーとして女性たちを 取り込みました。

ユニセフが支援する「水・衛生・コミュニティ健康プロジェクト」は、 井戸を女性たちが中心となり管理するというものです。
なぜ「女性中心」であるべきか? それは、女性たちの社会進出を 後押しするという大きな目標があるからです。 インドでは、女性が家の所得やそのほかの資源に関わる意思決定か ら締め出されているケースが支配的です。 しかし、 家庭内の意思決定に女性が平等に参加できて いれば、女性は子どもに対して、そして家族の健康に対して十分な対応が できるようになります。
ユニセフは地元のNGOと協力し、識字教育を受けていない女性たちを対象に 井戸の管理や修理の研修をはじめました。

女性のエンパワーメント

ナラニー、ラシラ、シャンブー、ミラ、ラシミー。 この5人もユニセフの研修を受け ラジャスタン地区に設置された井戸の番人となりました。 今では、グレーの作業着の上に色鮮やかなサリーをまとった彼女たちが、 足しげく井戸を往復し、井戸の修理に奮闘する姿を目にすることができます。
「井戸が壊れた、井戸の調子が悪い」などの連絡が入ると、彼女たちは 井戸にかけつけます。作業の依頼は、1人あたり月に6回程度。 賃金もきちんと支払われます。

井戸の番人の一人、シャンブーは振り返ります。 「はじめはみんな私たちを馬鹿にしていました。男の仕事を女ができるわけないと 思っていたんです。」
たしかに、井戸の修理は力仕事です。 修理に欠かせない工具ボックスも15キロの重さ。 これを毎回持ち運ぶわけですから、女性にとっては大変な仕事です。

女性のエンパワーメント

険しい山道を何キロも歩いたところに井戸がある場合、 時として依頼人が山から下りてきて、工具持ちをしてくれるケースもあります。 でも、こうした助けを女性たちはあまり歓迎していません。 「男性に頼らずに、自分たちの力で仕事をやり遂げたい」 強い意志と責任感を持っています。 彼女たちの地道な努力は、徐々に地域住民の信頼を勝ち得ていきました。

ユニセフは、インドのほかの地域でも、 女性が中心となって行う「持続可能な水と衛生プロジェクト」を 進めており、プロジェクトの効果は全国に波及しつつあります。
「井戸」をきっかけに女性が社会の構成員として重要な役割を担うようになってきています。 それだけではありません。より多くの女性が尊厳と自尊心を持つことができるようになりました。 「女性のエンパワーメント」これは、大きな前進です。