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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたちは今

中央アフリカ共和国:
紛争に巻き込まれる市民
「大切な兄弟は殺され、家を焼き討ちされた」

【2014年4月9日 中央アフリカ共和国カガ・バンドロ発】

アデリーヌさんと息子のディマンシュ・ジーザスくん
© UNICEF Central African Republic/2014/Timme
避難民施設内で診察を受けるアデリーヌさんと息子のディマンシュ・ジーザスくん。

紛争が続く中央アフリカ共和国で、最も苦しい立場に置かれているのは一般市民、特に女性と子どもたちです。

夜になって銃撃が始まると、アデリーヌさんは飛び起き、1歳過ぎの息子ディマンシュ・ジーザスくんを抱え、急いで茂みの中に隠れます。このような夜を数えきれないほど過ごしています。アデリーヌの動きはゆっくりで、疲れた目が極度の疲労を物語っています

カガ・バンドロのナチビテ教会の敷地に避難しているアデリーヌ。1,300人以上の男性、女性、子どもたちが避難しており、拡大する紛争で避難してきた人たちの非公式居住地となっています。

教会の前で、30人ほどの子どもたちがゲームをして遊んでいます。昼は何気ない生活のようにも見えますが、敷地内には大勢の人がおり、適切な住まいもなく、衛生状況は劣悪でトイレは不足しているなど、キャンプ周辺は厳しい状況です。夜になれば、危険が増すばかりです。

避難民キャンプの限界とリスク

ユニセフは、避難してきた人々に防水シートや貯水用の容器、石けん、マットや蚊帳を提供してきました。給水用のポンプが設置され、世界食糧計画(WFP)は食糧を提供し、移動保健チームは毎日やってきて大勢の人を診察しています。

カガ・バンドロのユニセフ事務所長イブラヒム・アブディ・シャイアは「対応によって少し状況は改善しましたが、周辺地域の治安が安定しない限り、支援を必要とする人たちはさらにやって来ます。避難民キャンプに収容できる人は限界を迎えます。また、雨季も近づいています」と述べました。

非公式居住地で、トイレが不足すると深刻な健康上のリスクをもたらします。雨が降り始めれば、排泄物で汚染された水によって、水に起因する病気にかかりやすくなるのです。

紛争に巻き込まれて

支援が最も必要な人たちへのアクセスが依然として難しい状況になっている
© UNICEF Central African Republic/2014/Timme
支援が最も必要な人たちへのアクセスが依然として難しい状況になっている。

アデリーヌさんと家族は、2週間前にキャンプに到着しました。マンゴーの木の下にある医療相談所の順番を待つ長い列に並んでいる間、自分の話をしてくれました。「畑で働いていたとき突然、武装した男たちが現れ、私たちに向かって銃を撃ち始めました。全員命がけで逃げましたが、一人は逃れられませんでした。私の大切な兄弟は殺されたのです」

目に涙を浮かべながら、家は強奪され、燃やされたと語ったアデリーヌさん。同じ日に夫と二人の子どもを連れて、10キロの道のりを歩いて教会の敷地にあるこの臨時避難所に来ました。

アデリーヌさんの家族は、中央アフリカ共和国で勃発した武力紛争で家を追われた何千もの家庭のひとつです。反政府勢力のセレカは、2013年3月に首都を制圧したものの、2014年1月には国際社会による圧力で新大統領は辞任を強いられました。セレカは北部に逃がれたものの、カガ・バンドロと周辺地域に来た武装集団は、勢力は地元民による民兵組織「アンチ・バラカ(アンチ・マチェーテ)」による攻撃を受けています。

主にイスラム教徒で構成されているセレカと、キリスト教徒が圧倒的に多い民兵組織アンチ・バラカ間に激しい宗派闘争が起こり、暴力行為は一般市民にまで及んでいます。カガ・バンドロのように、キリスト教徒とイスラム教徒が共に暮らしてきた町も、宗教や民族の紛争に突然巻き込まれました。

アデリーヌさんの兄弟を殺した男たちは、ボロロから来ていて、サヘル地域の多くの場所で暮らしているフラニ族でした。フラニ族のようなイスラム系の半遊牧民は、定住している地元の農家との間には、土地の利用を巡って緊迫した状態が何十年も続いてきました。しかし、長年にわたり、紛争解決メカニズムによってコミュニティへの農地の割り当てや放牧のための土地の割り当てなどが行われ、紛争には至りませんでした。

しかし、民兵組織が現れたことでコミュニティ間の信頼は徐々に損なわれ、これまでのしくみが破壊されました。その結果、利益の対立から武力衝突が起きています。

治安を取り戻す

ユニセフ緊急支援本部と州知事。
© UNICEF Central African Republic/2014/Timme
ユニセフ緊急支援本部のテッド・チャイバン部長と州知事のシローゼ・ガブリエル・ドウモロコ氏。

州知事のシローゼ・ガブリエル・ドウモロコ氏は、コミュニティ間の対話を再び促進しようと努めていると述べています。 「あまりにも多くの苦痛と悲しみを互いに与えてきました。許すことは難しいことではありますが、許し以外の選択はないのです。我々は再び共に暮らすことを学ばなければなりません」と続けました。

ユニセフ緊急支援本部のテッド・チャイバン部長は、中央アフリカ共和国を訪問、ナチビテ教会の避難キャンプを訪れました。チャイバン部長は、直ちに治安を回復させ、和解プロセスの開始の必要性を指摘しました。

「コミュニティは再び対話を始めなければなりません。住民は自宅に戻り、農作業をしなければならないのです。子どもたちは学校に戻る必要があります。ユニセフやパートナー団体の活動は、暴力行為に加え、アクセスの制限から、支援を必要としている人たちに届いていません。私たちは中央アフリカ共和国に安全をもたらすための国際社会による新たな取り組みを歓迎します」と述べました。

チャイバン部長は、人道危機への対応の重要性も強調しました。「世界では今、複数の大きな緊急事態が起きています。しかし、国連やユニセフは中央アフリカ共和国の女性と子どもたちを忘れてはいけません」と述べました。

避難で高まるマラリアの感染リスク

診察の順番が回ってくると、看護師のロジャーさんは、アデリーヌさんの息子の体温を測りました。息子のディマンシュ・ジーザスくんの熱は高く、嘔吐もしており、マラリアにも感染しています。

ロジャーさんは「キャンプでは蚊帳の下で眠れますが、茂みに身を隠れなければならないときは、蚊帳はありません。茂みで一晩を過ごさなければならなかった恐ろしい夜に、マラリアに感染した可能性が高いでしょう」と話しました。

アデリーヌさんは息子用の薬を受け取りました。子どもが回復するには、子どもにも母親にもたくさんの休息と心の安らぎが必要です。そして、紛争に終止符が打たれることが欠かせません。

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