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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

南スーダン:
激化する紛争で、増え続ける子どもの兵士の徴用
推定9,000人の子どもたち

【2014年5月5日 南スーダン発】

Mingkamanに避難してきた住民
©UNICEF South Sudan/2014/Holt
人道支援が行われているMingkamanに避難してきた南スーダン・ジョングレイ州、ボルの住民。40万人の子どもを含む、70万人以上の住民が避難を強いられている。

ユニセフは、推定9,000人もの子どもたちが、南スーダンで武力衝突を引き起こしている両陣営に徴用されているとの、信用性の高い報告を得ました。

これは、武装勢力と行動を共にしている子どもたち、軍服を着て武器を持つ子どもたち、軍事訓練を受けている子どもたちの観察調査をもとにした報告です。国際法ならびに南スーダンの法律では、正規の軍隊または非公式の民兵を問わず、強制的あるいは自発的にかかわらず、18歳未満の子どもを兵士として徴用することを禁止しています。

子どもの兵士の徴用は、子どもたちと地域社会に、短期的にダメージを与えるだけでなく、長期にわたって心身へ被害をおよぼします。南スーダンでは、過去数十年にわたって、子どもたちが武装集団の一員となって戦闘に参加してきました。その結果、彼らは教育を受ける機会をのがし、紛争という文化のなかでおとなになっていきます。

これからお話する元子どもの兵士の経験は、意思に反して強制的に紛争で戦うことを余儀なくされた子どもたちが、短期的なリスクにさらされるだけでなく、長期にわたってうける影響を浮き彫りにしています。ユニセフのケント・ページ広報官による報告です。

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リング・プラシドさんは、温厚で陽気、落ち着きがあり、やせ形で、優しい口調の23歳です。ジュバで急成長しているレゲエ音楽界で有名な歌手であり、バンドのリーダーです。町で行われる彼の演奏は、いつも満員となり、英国やアジアでの演奏にも呼ばれるほどの人気歌手です。

彼も、元子どもの兵士です。

リングさんは、スーダン人民解放軍(SPLA)の大佐を父に持ち、軍の兵舎で生まれました。しかし6歳の頃、兵舎を攻撃してきた反政府勢力によって、他の子どもたち数名とともに誘拐されました。そして、自宅から離れた遠い村に連れて行かれ、“ニョニー”と呼ばれる反政府組織の一員となりました。

「母から引き離されるときは、恐怖に陥りました」とリング氏は思い返します。「ですが、殴られることを恐れて、恐怖や悲しみを顔に表せませんでした。彼らの仲間になるほか、選択肢はありませんでした」

怒りと敵意の感情

Mingkamanの給水場所に集まる子どもたちと女性
©UNICEF South Sudan/2014/Holt
人道支援が行われているMingkamanの給水場所に集まる子どもたちと女性。

その後4年間にわたり、リングさんは、反政府組織のために戦いを強いられました。反政府組織は、敵の砲火のおびき寄せのために、最前線に子どもたちを走らせました。リングさんは、10歳までに、三つの大きな戦闘を経験していました。「戦闘を強いられることによって、私の中に、怒りや敵意などの感情が芽生えていました」

リングさんは、一度、武装勢力からかろうじて逃げ出すことができ、両親の居場所に戻ることが出来たこともあります。けれども、2年も経たないうちに、再び強制的に兵士へ徴用されてしまいました。その後は、2009年に国家武装解除・解放・社会復帰委員会(NDDRC)によって解放されるまで、通信士としてSPLAで働かされました。

解放された時、リングさんは18歳になっていました。11年間、彼は武装勢力の一員として生きることを強制されていました。

新たな戦い、増える子どもの徴用

南スーダンとして独立する以前から、スーダンでは紛争が繰り広げられ、武装勢力は、戦闘員としてだけでなく、荷物運びや料理人、通信士などとして、子どもたちを徴用してきました。2005年に南北包括和平合意(CPA)が締結され、SPLAとスーダン政府の間の紛争が終結するまで、自発的あるいは強制的に、子どもたちはSPLAやほかの武装勢力に徴用されていました。

南スーダンの2011年の独立は、平和、希望、機会の溢れる新しい時代の幕開けとして歓迎されました。ユニセフの支援をうけながら、主にNDDRCの尽力によって、南北包括和平合意(CPA)後10年で、徴用される子どもたちの数は着実に減りました。2012年後半までに、約4,000人の子どもたちは解放され、家族の元や住んでいた土地に戻っています。

世界で最も新しい国家として誕生して約3年。南スーダンは再び、武力衝突が発生し、人々は避難を余儀なくされ、恐怖にさらされています。政府軍と複数の反政府勢力間の戦いで、子どもたちの徴用は再び増加しています。およそ9,000人もの子どもたちが、紛争に関わる両陣営の武装勢力へ徴用されていると推定されています。

リングさんは、これらの子どもたちが直面する状況を嫌というほど知っています。

「この状況は間違っています。子どもたちは、軍服をきて戦い方を学ぶのではなく、学校で考えることを学ぶべきです。なぜなら、私や、私のような状況に置かれた子どもたちは学校に行かなかったことで、おとなになって良い仕事を見つけることが難しくなりました。私たちは社会から取り残されたのです」

リングさんは言葉を続けます。

「それでも、私は幸運だと思います。なぜなら、もし解放されていなければ、すでに命を落としていたでしょうから」

徴用の背景にある、深刻な貧困問題

NDDRCのアンドリュー•ホルト氏は、「南スーダンは、長きにわたり、暴力や戦争が続いています。この世代に生まれた子どもたちは、読み書きを習うように、銃の扱い方を習ってきたという好ましくない傾向にあります」と話します。

南スーダンの子どもの兵士への徴用は、複雑な問題です。なぜなら、ほとんどの場合、国の深刻な貧困問題に根ざしているからです。「子どもたちは、主に2つの理由で徴用されています」と、ホルト氏は説明しました。「拉致されて働かされているか、家族からの勧めで徴用されています。後者の子どもたちは、適切な世話を受けることのできない非常に貧しい家庭から来る傾向があります。貧しい親たちにとって、自分の子どもが兵士に徴用されることは、きちんと食事を与えられ、雨風から守られる機会のように映ります。

原因が何であれ、武装集団への子どもたちの徴用は、健康、安全、教育など基本的権利を含む子どもの権利の重大な侵害です。それによって、子どもたちの将来も脅かされます。ユニセフとNDDRCは、武装解除と武装集団に徴用されている子どもたちの解放を求めるだけでなく、解放された子どもたちが適切な教育や職業訓練を受けられるよう、支援しています。一般的に、南スーダンでは、武装勢力から解放された子どもたちは、正式な教育を受けることはほとんどなく、補習授業や職業訓練を必要としています。

リングさんは自らの経験をもとに、強く訴えます。

「徴用された子どもたちを探し出して解放し、教育と職業訓練の機会を提供するためにあらゆる努力をすることが、私たちの義務です。私のように子どもの兵士だった人を変えられるのは、教育だけです。子どもの兵士たちを連れ出し、教育の機会を与えてください」

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