HOME > 世界の子どもたち > 緊急支援情報 > 東日本大震災緊急募金
日本ユニセフ協会
 



東日本大震災緊急募金 第182報
3月11日、保育現場は子どもをどう守ったのか?
『岩手県保育所避難状況記録』を発表

【2013年2月6日 東京発】

東日本大震災で、沿岸市町村を中心に甚大な被害を受けた岩手県。地震が発生したその時、県内350以上の保育所では、およそ2万人の乳幼児が保育されていました。“想定以上”の大災害で“想定外”の対応を迫られる中、日頃の避難訓練や保育士たちの適確な判断と臨機応変な行動で、岩手県内では、少なくとも保育中の園児や勤務中の職員に被害はありませんでした。

日本ユニセフ協会と岩手県保健福祉部児童家庭課は、この経験と教訓を保育施設における災害対策の強化に役立てるため、共同で県内全域の保育所を調査しました。そして、震災発生時に各保育現場が取った避難行動をまとめたレポート『東日本大震災津波 岩手県保育所避難状況記録 —子どもたちはどう守られたのか』を発表しました。

今回の調査では、調査票を内陸部を含めた岩手県内の全保育所に配付。75%から回答を得ました。また、沿岸部の保育所では聞き取り調査を通じ、地震発生時以降の職員の行動を細かく追跡。緊迫した状況の中、乳児を背負い、幼児たちの手を引いて、道なき道をひたすら高台を目指した避難行動の様子や、地域住民や消防団などとの協力・連携が大きな意味を持ったこと、ライフラインの再開の目途も立たない中で保育再開に向け懸命に努力された様子など、これまであまり伝えられることがなかった、被災地の子どもたちを、“あの状況”の中で必死に守った人々の姿が明らかになりました。レポートでは、また、「日頃の備え」や「訓練」がどのように活かされたかも検証し、避難訓練や防災対策の重要性や今後の課題なども確認しています。

山田町内保育所提供
園庭になだれ込む津波

昨年3月まで日本ユニセフ協会東日本大震災緊急支援本部 岩手フィールドマネージャーを努め、今回の調査・分析にあたったリサーチコンサルタント 近藤智春さんは、完成にあたって次のように話しています。

「この調査は、岩手県児童家庭課の職員の方々との会話の中で、東日本大震災に際して県内では保育中の園児に被害や怪我などが無かったこと、それは日頃の避難訓練の成果であったこと、そういった震災の経験を記録として残し、今後保育所などの防災対策に役立てられたら、というお話が挙がりスタートしました。

© 日本ユニセフ協会/K.Goto
保育再開の日、園児を抱きしめる保育士

調査を行ったのは2012年3〜4月にかけてで、震災から1年が経過していました。調査に参加して頂いた保育所関係者の方々には、改めて震災の経験を思い出していただかなくてはいけない面もありましたが、実際に、調査を行ってみると、『1年経った後でも、 震災の際の避難過程など、初めて思い返した』、『ゆっくり震災のときのことを話す機会がなかった』というような感想をいただきました。県内353施設中、263の保育所からいただいたアンケートや記述式の調査回答の中でも、震災時の様子や避難待機の状況など詳細にわたって回答していただきました。改めて、調査にご協力くださったみなさまに、感謝申し上げます。

今回の調査の中で、小さなお子さんを預かる保育所関係者のみなさんが、被災後も子どもを預かる、守る立場で様々な事を考えながら保育を続けていらっしゃった様子が分かりました。そういった思いをこの記録を通して、共有していただければと思っています。

大槌町内保育所提供
日頃の避難訓練の様子

近年、日本でも海外でも、自然災害が増えていて、それに対する防災対策が重要視されてきています。特に、小さな子どもを預かる保育や教育施設での防災対策は今後も重要な課題となっていくでしょう。この記録が、岩手県のみならず、国内はもちろん海外の保育や教育関係者にとって役立つものになれば、と強く願います」

この『岩手県保育所避難状況記録』は、今後、岩手県から、県内各保育所や県内外の自治体などに配付される予定です。また、日本ユニセフ協会では、英語版の制作(PDF版のみ)も予定しています。

pdf『岩手県保育所避難状況記録』PDF版はこちらからご覧いただけます[5.56MB] »

pdf緊急・復興支援活動 1年レポート(収支報告)はこちら[5.96MB] »