EYE SEE TOHOKU〜子どもたちの目が見る被災地の今と明日〜

写真ワークショップレポート

EYE SEE TOHOKU in 福島県相馬市

1日目 11月27日(日)

9:00

ワークショップ・スタート:

相馬市のワークショップに参加する子どもたちは、市内の小・中学校から希望して集まってくれました。年齢もさまざまですが、なぜかすべて女子。同じ学校から参加していても、お互いが参加することを知らずにいて、当日会場で会ってびっくり、という場面もありました。

最初に相馬市教育委員会の林さんが子どもたちにこんなお話をしてくださいました。
 「このプロジェクトは、写真を撮るだけではなく、皆さんの考えを大人の人たちに伝えるためのものであるということです。ここに参加している皆さんは写真が好きだと聞きました。写真を通じて、皆さんが相馬市に暮らす人として感じていること、想いを伝えていただければと思います」

外から入ってくる光の当たり方なども実際に見て理解

いよいよワークショップがスタートします。
午前中は、岩手や宮城でも実施してきたジャコモ・ピロッツィさんによるプレゼンテーションです。写真に関心を持っているというみなさんだけに、ジャコモさんに向ける目は真剣です。ジャコモさんが紹介する世界各国の子どもたちの写真や、その撮影技術に見入っています。

ひととおりの説明が終わるともう昼食の時間です。
初めて会う子が多いので最初は少しかたい感じでしたが、そこは女の子たち。ちょっとしたきっかけで、それぞれの学校の話や好きなアイドルの話などで盛り上がるようになり、打ち解けてきました。

13:00

チームに分かれての話し合い

話し合いの内容を発表するAチーム

©UNICEF/2011Japan/
GiacomoPirozzi

地図を見ながら撮影場所についても話し合い

午後は、2チームに分かれて、それぞれ撮影したいもの、撮影のテーマを話し合うことからはじめました。

【チームA】

柚月さん、摩耶さん、乃愛さん、愛叶さん

【チームB】

樹里さん、陽さん、李理さん

チームの話し合いのなかから次のような声が聞こえていました。

真剣な表情のBチーム

「震災の後、人が多くなってるよね。人口が増えました。いわきの車とか、停まってる」
「漁師が今海にでているのは瓦礫処理のため。魚が捕れる状況ではないからです。魚市の魚は相馬市街から、野菜も多分そうだと思います」
(これに対して、ジャコモさんからは、市場で、食べ物がどこからきているかも聞いてみるといいですね、とアドバイス)
「野馬追いの写真を撮りたい。中村神社から馬で相馬市をまわるお祭りなんです。野馬も津波で流されてしまいました」
「絆を感じられるものを写したいです。例えば、ちっちゃい子がお母さんと手をつないでいるところとか」
「3.11の日には卒業式の日で友達が家に来ていました。友達の家は海の近くにあったので流されてしまって、今は縁の下の土台ぐらいしか残っていないです」
「自然の家というのがあったんです。みんなが遠くから来るような場所だったけれど、今は津波でこっぱみじんです」
「土日に"はらがま市"というのが開催されます。震災で市場がなくなったので、新しくやることになった朝市です」
「学校に行きたい。部活か何かをしている人が写せたら写したいと思います」
「第二中学校は校舎ぎりぎりまで波がきました。これまで木があったけれど、木がなくなっちゃった。そして、蟹がやたら増えました」
「学校で先生が(放射能)測定器を持っているところを写したいです。」
「市役所に災害FMのスタジオがあります。それを写しにいきたいです」
「テーマは『雑草魂』がいいな」「(雑草っていうなら)たんぽぽ魂がいいよ」
「もっと辛い人が受けとめてちゃってるからね。受けとめざるを得ないよね」
「被害にあったところとかに行きたいです」
「仮設住宅に行きたいです。自分にはまだ被害を受けていないけれど、聞いてみたい。野間の馬追いの話を聞きたいと思います」
「地震のことは震災などの後のことを写すことで伝えられる、これからのことは、住んでいる人たちの笑顔で伝えられると思います」
「仮設には相馬市街から原発事故で避難して来た人が来ていることです」

アドバイスをするジャコモさん

ジャコモさんからは次のようなコメントがありました。
「皆さんには情熱があり、それはとてもいいことと思います。きっといい写真がたくさん撮れると思います。だから、写真の撮り方で失敗しないようにがんばってください。もし時間が出来たら、1時間ぐらい使って、一つの場所だけで撮ってみてください。そこでいろいろな撮り方を試してみてください」
また、放射能の問題について子どもたちから"見えないものを撮るのは難しい"という声があがっていました。
ジャコモさんは、「最近、(ウクライナの)チェルノブイリで、写真ワークショップをおこなってきたところなんです。子どもたちは、市場、食べもの、病院などを写しにいきました。精神的なもの、象徴的な写真を写している子どもたちもいましたよ。写真を、想像力を使って、ポエティック(詩的)に、シンボリックに撮ることも考えてみるとよいかもしれませんね」と子どもたちにアドバイスをしていました。

いよいよカメラを手に:

各チームごとに話し合って決めたテーマと撮影に行きたい場所を発表した後、いよいよカメラが手渡されます。
カメラの扱い方について説明を受け、モードを丁寧に設定していきます。
フラッシュは使わない原則なので、箱に戻します。

「みんな、撮影した写真は1枚も削除してはいけません!失敗したと思っても自分では絶対に消さないでね」と注意が飛びます。
子どもたちはすっかり夢中のようすで、隣の友達やおとなたちジャコモさんを楽しそうに撮りはじめます。
外にも出てみようと言われて飛び出した子どもたち。友達や周囲の木々と花々をいろいろな角度で撮ってゆきます。

次のワークショップまで1週間。みんなカメラを持ち帰ります。
「それぞれ自分の生活のなかで、できる範囲でいろいろな写真を撮ってみてください。今日のアドバイスを忘れないようにね!暗いところで撮るときは、絶対にカメラを動かさないんだよ」
ジャコモさんが最後までアドバイスを続けます。
大事そうにカメラをかばんに詰めて、子どもたちは帰途についてゆきました。

はじめに

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