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超大型台風の直撃、家や生計手段を失った人々

【2007年1月1日、マニラ発】

© UNICEFPhilippines/2006/Carreon

台風21号によって破壊されたココヤシの木々

見渡せる限り、ココヤシの木は力なく垂れ下がっており、中には葉っぱが原型を保っていないもの、葉っぱさえも強風に吹き飛ばされてしまい幹だけになっているものもあります。その光景はあまりにも悲しいものです。しかし、さらに悪いことに、11月30日にフィリピン東部のビコール地域を通過した台風21号は、この地域で生活する非常に多くの住民たちの生活に多大な被害をもたらしました。

ココナッツ栽培はビコール地域の中心的な産業のひとつです。ビコール地域の経済成長率は低迷しており、失業率も高く、貧困に苦しむ家庭も多い地域です。この地域には漁業で生計を立てている人も多くいますが、今回の台風の直撃により設備の大部分が破壊され、吹き飛ばされたうえに、いくつかの天然漁場が汚染されていると考えられ、大きな影響を受けています。

「台風によって私達の生活は大きな痛手を受けています。」フェルナンド・ゴンザレス氏はビコール地域の中でも台風21号の被害が特に大きかったアルバイ州の州知事です。「アルバイ州にはただでさえ十分な働き口が無いのに、いったいこれからどうすればいいのでしょうか。」

ココヤシの実は通常1ヶ月に1度収穫することができますが、「台風21号のせいでココヤシの木はすべてだめになってしまいました。再び以前のようにココヤシの実を収穫できるようになるまでには、少なくともあと2年はかかるでしょう。」台風により執務室が被害を受け、今は庁舎の廊下に置かれた簡素な机で仕事をしているゴンザレス州知事は話します。隣接する南カマリネス州では、行政担当者いわく、ココヤシの木が以前のようにたくさんの実をつけるようになるまでには、5年から10年の歳月がかかるだろうということです。ココナッツの収穫量が減るということは、間接的に多くの人々の生活に影響を及ぼします。「ココナッツ油産業も行き詰まってしまうでしょう。」とゴンザレス氏はいいます。

南カマリネス州バドにある穏やかなで滑らかな湖の水面は、この湖が水産資源の宝庫であることを約束しているかのように見えます。しかし、漁師たちの多くはこの湖で漁をすることができません。「ここで生活する人々は湖で生計を立てているようなものです。しかし、湖は台風で被害をうけ、たくさんの魚が死んでいます。」とジェーミー・ティンバング・ゴンザレス町長は話します。町長は、湖の魚が大量に死んだ原因は、アルバイ州のマヨン火山から湖に流れ込んだ硫黄を含む堆積物にあると考えています。台風21号の影響でマヨン山の山肌で大規模な地滑りが発生し、ふもとの8つの集落がのみこまれました。現在、農業省による湖の水質調査が行われています。

© UNICEFPhilippines/2006/Ruiz

台風の被害でがれきの山になったサルバチオン村。ここに住んでいた5人家族は新しい家ができるまで小さな避難所で生活しています。

自然災害の影響をうけやすいフィリピンでは、台風21号のような大型台風により人々の生活が危機にさらされるということは決して稀ではなく、中でもビコール地域は自然災害による被害が特に大きい地域のひとつです。しかし、台風21号は今までで最も勢力が強い台風の一つで、その協力な破壊力は通過した場所の風景をも一瞬で変えてしまいました。4ヶ月の間に立て続けに上陸した台風により、被害はさらに悪化しました。

「今回の台風による被害はもしかすると、2004年のスマトラ沖津波のときよりも大きいかもしれません。台風21号の被害は沿岸だけでなく内陸にも広がっているからです。」ゴンザレス知事は話します。

農業も漁業も不安定な状態が続いており、食料の確保は家庭にとって最も差し迫った問題です。

「ほら、ここにある私の家の屋根なんて無いに等しいです。私が植えていたとうもろこしは、洪水であふれ出た水と泥で大きな被害を受けました。私達には今収穫できるものが何もないのです。」約1,000世帯が生活する南カマリネス州・サルバチオン村の住民、ロールデス・エイレスさんは話します。サルバチオン村に住む人の大半は、漁業かココヤシの木の栽培を生業としています。

「みんなお腹をすかせています。」レオナルド・イバルリン村長は言います。「この集落で暮らす家族のこれからの生活が気がかりです。」イバルリン氏はサルバチオン村の家屋の約7割が台風21号によって破壊されたと推計されています。

© UNICEFPhilippines/2006/Ruiz

以前の家から数メートル離れたところに建てられた新しい家の前に立つ男の子。南かマリネス州サルバチオン村にて。

サルバチオン村の家屋は、ビコール地域の多くの農村地域と同じように、竹やニパと呼ばれるココヤシの木の葉を使って建てられ、そのつくりは簡素なものです。そのために、このような家屋は突風や豪雨がくればひとたまりもありません。この村の住民は今も手に入るあらゆるものを使って新しい住まいを建てているところですが、次に強力な台風が直撃すれば、その軟弱な住まいはあっという間に壊されてしまうでしょう。このように、ここの住民は台風で家屋が破壊されるたびに建てなおすという作業を繰り返しているのです。

今のところ、住む場所と生計を立てる術を失った多くの人々は救援物資に頼って生き延びています。この救援物資はユニセフなどの人道機関から支援され、政府が配給しています。ユニセフは米、イワシ、豆などの食料の他、毛布、テント、なべ、浄水剤や水容器などの必要物資を配布しています。配布作業は現在も進行中です。

現在、ユニセフとパートナー組織の支援活動は、州政府による給水システムや学校などの必要不可欠な施設の修復などの復興支援段階に移行しようとしています。水道の蛇口から水が出るようにすること、電力供給を復旧すること、そして修復した教室に子ども達を戻すことは、生計を立て直す事と同じくらい重要なことです。

ビコール地域の支援活動には多額の資金が必要になると考えられています。立て続けに大型の台風の直撃を受けたフィリピンを支援するために、国連は4,600万米ドル(約55億円)の緊急支援要請を行いました。この中には、農業や住宅の支援も含まれます。この支援活動をただ単に台風21号以前の状態に戻すための活動に留めず、自然災害に対するもろさの克服し、貧困を緩和し、働き口増加のための機会にすることが目標とされています。

アルバイ州には、溶岩によって家屋をつぶされた人々のために、場合によってはひとつの集落内の家屋すべてを再建しなければならないところもあります。

「ふつう、ひとつの家屋を建てるのに約5万ペソ(約1万1,000米ドル、約130万円)かかります。しかし、台風に強い家を建てるためには、7万5000ペソから8万ペソを推奨しています。」とビコール地域災害調整委員会のセドリック・ダエプ氏は話します。上乗せした予算で、高質のセメントや棒鋼を建築資材として使用することができ、家屋の耐性を強化することができるのです。

より大規模な建設プロジェクトも予定されています。レガスピ市と近隣のドラガにある重要設備・施設を洪水や土石流の脅威から守るために、外部からの技術的支援を受けて、堤防を一刻も早く建設する必要があると、ダエプ氏は言います。支援によって、建設業が景気づき、働き口の増加に繋がる可能性があります。

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