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財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第120報
2年ぶりに届いた支援物資
行きつ戻りつ3日間、国連機関連携で

【2014年6月22日 アレッポ発】

支援物資を積み、アレッポ郊外のZahraに向かう車両
© UNICEF/Syria-2014/Nizam
支援物資を積み、アレッポ郊外のZahraに向かう車両。

終わりの見えない紛争が続くシリア。2014年6月、複数の国連機関が協力し、過去数年間立ち入ることができなかった地域に緊急人道支援物資を届けることができました。任務にあたったユニセフ・シリア事務所のインサフ・ニザム子どもの保護チーフが現地の状況や子どもたちの様子を報告しています。

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私は最近、支援を届けるのが困難なアレッポ北東部の6つの村で暮らす子どもや家族に、緊急人道支援のための物資を届けるという任務にあたりました。トルコとの国境付近にある人里離れたこの地域で暮らす住民が、最後に人道支援を受けたのは、もう2年ほど前のことです。

市民は、紛争下の複雑な状況に巻き込まれています。紛争に関わるグループに支配された地域では、自由に移動をすることもできません。この支援物資を届けるという任務も、長期にわたる交渉の末、ようやく実現したのです。

配布された支援物資は、食糧、医薬品、子ども用の栄養サプリメント、水キット、衛生キットなど、最大1万5,000人分です。

3日間かけて行われたこの任務は、ユニセフ単独ではなく、WFP、WHO、UNHCR、IOM、UNDSSという様々な国連機関が力を合わせて実施することができました。さらに、シリア・アラブ赤新月社(SARC)も重要な役割を果たしました。

行きつ戻りつ3日間

任務初日は、アレッポにあるSARCの倉庫で、支援物資をトラックへ積み込む作業から始まりました。しかし、複数ある政府検問所の最後で4時間待たされた後、任務を遂行するのに必要な安全が確保できないという理由で、この日の任務は中止と告げられました。

2日目、大幅に遅れはしたものの、支援物資を積んだ車列が反体制勢力支配下の地域に入ることができました。物資を積んだトラック6台が、目的地である4つの村にたどり着きました。しかし、政府の支配下にあるNabulとZahra村に近づくと、人道支援車両は現地の司令官によって行く手を阻まれてしまいました。長い間話し合いが続いたうえ、他の武装グループも集まり始め、その場に緊張感が高まりました。私たちは支援物資を積んだ14台のトラックとともに、アレッポに引き返さざるを得ませんでした。

支援物資を届ける途中、道端の店やガレージ、採石場、工場で、たくさんの子どもたちが働いている姿を見ました。軍服に身を包み、銃を担いでいる子どもたちもいました。子どもたちは何もすることがないから銃を手にするのだと、武装グループのリーダーが語っていました。学校は機能しておらず、子どもたちは将来に何も希望も持てない中、生活をしているのです。

3日目、ようやく関係者すべての合意を得ることができ、支援車両はZahra村にたどり着くことができました。大げさではなく、村の住民全員が外に出て、私たちを歓迎してくれました。男の子や男性が車両を囲み、女の子や女性は信じられないといった様子で家の玄関で車両を見つめていました。孤立状態が続いていたこの村では、これが数カ月ぶりの外の世界との接触だったのです。

この村の住民たちはこれまで、他の小さな村と関係を保ち、最終的にはトルコとつながるルートを通じてライフラインを確保していたそうです。

恐怖で学校に通えない子どもたち

14歳の学生、教師、地元の教職員会のリーダーなど、複数の住民と話を交わすことができました。村の学校は機能しているものの、武力衝突で多くの校舎が損壊していると住民から話を聞きました。過去3年間、新しい教科書を手に入れることができず、生徒は古いものを使いまわして勉強していたそうです。文房具は高価で、めったに手に入れることもできません。しかし、子どもたちを学校から遠ざけている一番の原因は、学校への攻撃によって負傷したり殺害されるかもしれない、という恐怖です。

また、拉致される住民が相次いでいるという話も聞きました。拉致された住民の解放のために国連機関に力を貸してほしい、居場所だけでも突き止めてほしいと、住民の切なる訴えを聞きました。

地域のリーダーによると、過去3年間で子どもを含む1,000人以上が死傷しています。住民は、子どもたちが安全に学校に通ることができ、進級試験を受けられればと願っています。しかし、過去2年間、その願いが叶うことはありませんでした。

最も支援を必要とする人のために

現在シリアには350万人が紛争の影響で支援が届きにくい地域で生活し、推定24万人が政府軍あるいは反政府勢力に支配された地域で生活を送っていると言われています。この任務で目にした状況は、シリアでは決して特別なことではなく、多くの地で起こっていることなのです。これらの地域に取り残されている住民は、恐怖に苛まれ、先の見通しが全く見えない中での生活を強いられています。そして、保健や教育など、必要不可欠なサービスは、ほとんど利用することができません。

紛争下での生活を余儀なくされ、最も支援が必要な人たちに支援を届けることは、容易ではありません。しかし、どのような場所であろうとも、ユニセフは他の国連機関やパートナー団体と協力し、最も支援を必要としている人たちに緊急支援を届けるために力を尽くすことを約束します。