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モンゴル:明るくあたたかい移動式のトイレ

2015年7月22日バンコク(タイ)発


©UNICEF/UNI180626/Davaa
ゲルの中のようちえんに通う子どもたち

ユニセフ・グローバル・イノベーション・センターの副所長のタニア・アコーンが、アジア太平洋地域でのイノベーションの一例を報告しました。以下の文はその報告です。

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イノベーションとは日本語で、革新的技術(かくしんてきぎじゅつ)と言い、子どもたちが前に進めるようにするためのユニセフの方法の一つです。ユニセフが考えるイノベーションとは、単に目新しいだけではなく、何か良い効果(こうか)を与えるものです。

アジア太平洋地域で私が特に注目しているのが、モンゴルで行われているイノベーションです。モンゴルは11月から3月の間で冬がつづき、気温はマイナス13度〜45度まで下がります。
モンゴルには昔からある「ゲル」というテントのようちえんがあります。ゲルの中の教室はあたたかいですが、トイレに行くためには外に出てきびしい寒さの中を100メートルも歩き、暗い汲み取り式のトイレ*を使用しなければなりません。ようちえんに通う子どもの多くがトイレに行きたくないために水分をしっかりとらない、トイレに行くのをがまんするなど健康には良くない行動をとっていました。
私たちは子どもがトイレに行きたくないのは寒さのせいだと考えていました。しかし、子どもたちが外のトイレを使いたくないもう一つの理由に気が付きました。それは、子どもは暗やみをこわがるということでした。

学校で良い水とトイレなどをそなえることは、子どもたちの健康と福祉のためにはぜったいにひつようです。モンゴルでは、学校にトイレなどの設備(せつび)を新しく作ったり、直したりするのには多くのお金がかかります。しかし、「ウォッシュ・ハウス(WASH House)」の導入によって状況は大きく変わりました。
「ウォッシュ・ハウス」とは、ユニセフが何度も考え、作り直してできたイノベーションです。教室とつなぐことができるトイレと温水が出る洗面台がある「ウォッシュ・ハウス」は中も明るくあたたかいです。そしてこれは移動式なので、決まった土地を持たずに気候などの変化によってくらす場所を変えるモンゴルの遊牧民の子どもたちには大切です。
これまで、15の「ウォッシュ・ハウス」がゲルの中のようちえんなどに導入されており、およそ1,400人の子どもたちが「ウォッシュ・ハウス」を使っています。「ウォッシュ・ハウス」があるようちえんや小学校の先生たちは、げりやかぜ、インフルエンザにかかる子どもが減り、欠席する子どもも少なくなっていることに気が付きました。

アジア太平洋地域には支援(しえん)が行き届きにくく、取り残されている場所が存在しているなど、問題が多くあります。
私はイノベーションに関する取り組みをつづけ、子どもたちの生活に良い変化を与えるアイデアを見つけ出し、そのアイデアが広まるようサポートすることを楽しみにしています。

*汲み取り式のトイレ:トイレから出た汚物を水で流さずそのまま溜めるトイレ。

■このニュースの詳しい内容は
 モンゴル 明るく暖かい移動式トイレ ユニセフ・イノベーションの取り組み

公益財団法人 日本ユニセフ協会