「生きたい」

モハマドくん、10歳(バングラデシュ)

© UNICEF/UN0135716/Nybo

ミャンマーにあったぼくの村は、とつぜんおそわれました。二人のきょうだいが銃で撃たれて殺され、ぼくの家は焼かれてしまいました。ぬかるんだ道を、時にはあふれた川の水につかりながら、バングラデシュまで何日も必死に歩いてにげてきました。あのおそろしい日に見たこと、にげてきた道のことを思うと、こわくて、苦しくてたまらない。自分も死んでしまうかもしれない、そう思うとふるえてしまいます。生きていたい。ぼくの夢はそれだけです。

ロヒンギャ難民について

2017年の夏にミャンマーで激化した暴力から逃れるために、少数民族のロヒンギャの人々が隣の国バングラデシュに逃れています。バングラデシュのコックスバザールという地域には、すでに地元住民の人口を上回る68万8,000人以上の難民が押し寄せ、過密するキャンプや仮設居住区で避難生活を送っています。この難民危機により子ども72万人を含む120万人もの人々が、命と安全を守るための緊急の人道支援を必要としています。

はたらいている人に聞いてみました!

ロビンソン麻己さん
(ユニセフ・バングラデシュ事務所)

  • 現場はどのような感じですか?

    2017年8月25日にミャンマーで暴動が起き、たくさんのロヒンギャ難民がバングラデシュに流入しました。ボランティアの方たちもどっと押し寄せ、最初はとんでもなく混乱していました。難民キャンプとなった地域は、木を切るなど整備して、どうにかテントなどを張れる状態にしましたが、元々は人が住めるような場所ではありませんでした。国際社会の支援なども入り、だんだんと難民キャンプの状況は良くなっているものの、不衛生な環境のために感染症も発生していて、まだまだ危険な状況です。

  • 出会った子どもたちの中で、印象的だった子がいれば教えてください。

    今はキャンプ内にも学習センターができましたが、子どもの数が多いので一日2シフトか3シフト制で運営しています。そのため、子どもたちは一日数時間という限られた時間しか先生から学ぶことが出来ません。それでもたくさん学びたい、吸収したい子どもたち・・・あるとき、ユニセフからもらった勉強道具が入ったカバンを背負った男の子が、自分の勉強の時間が終わっても、窓の外側からずっと教室の中をのぞいている光景を見ました。彼の背中から、もっと勉強したいよーという声が聞こえてきそうでした。学ぶことに貪欲な子どもたち。一日も早く十分に学べる環境を整えるのがユニセフの役目のひとつです。実際、まだ半数以上の子どもたちが学習センターにすら通えていない状況です。

  • ロヒンギャ難民の子どもたちにとって、支えになっているのは何でしょうか?

    子どもたちは友達を作るのが大得意。これまで知らなかった友達ともすぐ仲良くなって、遊び場所を見つけては楽しそうに遊んでいます。サッカーができるような十分な場所も、ユニセフの「子どもにやさしい空間(*子どもたちが自由に遊んだりスポーツができる安心・安全なスペース)」を除けばなかなかないのが現状ですが、彼らなりの遊び方で日々を過ごしているようです。友達と遊ぶ楽しい時間が彼らの支えになっているのではと思います。

  • 世界中からの支援で子どもたちの状況はどう変わりましたか?

    基本的に支援に頼ってしか生きることのできないロヒンギャ難民。国際的な支援なしには、衣食住を少しでも満たすことすら困難な状況です。着の身着のまま、飲み食いもほどんどなしに、何日もかけて危険な道や川を渡ってきたロヒンギャの人たちにとって、バングラデシュ側にたどり着いたときにユニセフの職員から差し出された水や食べ物、薬がどれほど救いだったことか。難民キャンプで暮らせるようになってからも、世界中からの支援によって届けられる医療や栄養治療、飲み水はロヒンギャ難民にとって命綱です。こうやってたくさんの「命」が助かっているだけでなく、勉強をしたり、安心して遊べることで、将来への「希望」を見出している子どもたちもいます。
    ただ、すべての子どもたちに十分な支援を届けるためにはまだまだ国際社会からの協力が必要です。

  • 課題はありますか?

    すべての子どもたちに支援が行き届いているわけでは決してありません。広大なキャンプはサービスを受けることの出来る施設が整っている場所もあれば、まったくサービスにアクセスできない場所もまだまだたくさんあります。すべてのロヒンギャ難民の子どもたちが平等にサービスにアクセス出来るよう、ユニセフや他の支援団体はモニタリングやアセスメント調査をきちんと行い、計画をしっかり立て、今後も一丸となって活動していかなければなりません。

  • ユニセフを支援してくださっている日本の子どもたち、先生たちに一言お願いします。

    同じアジアの国なのに、日本とは180度異なるロヒンギャ難民キャンプの環境。すべては知ること、理解することから始まると思います。日本の先生方には、是非ロヒンギャ難民キャンプの実情を知っていただき、子どもたちに伝えていただきたい一心です。多くの方にこの現状を知っていただき、少しでも支援の輪が広がってほしいと思います。また、子どもたちの心の中に、この厳しく脆弱な立場に置かれた異国の子どもたちを想う、思いやりの心が培われていけば幸いです。

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