日本の4割ほどの国土に日本の1.3倍の人口がひしめくバングラデシュ。アジアで最も貧しい国のひとつですが、お祭りの際には住民がお金を出し合って貧しい人々にごちそうを配るなど、イスラムの助け合いの精神が息づいています。近年では、予防接種や衛生知識の普及などの地道な努力が報われ、5歳未満の子どもの死亡率は大きく削減されました。一方、生後まもない赤ちゃんの死亡率は依然として高く、毎年6万人を超える新生児が呼吸停止や低体温症などで命を落としています。
この国では、赤ちゃんの5人中1人が未熟児として生まれてきます。こうした赤ちゃんは、呼吸や体温調節などの機能が十分に発達していないため、保育器や24時間体制の見守りなど特別なケアを必要とします。ユニセフは数年前から保健省と協力し、各県の公立病院内にSCANUとよばれる、未熟児や病児のためのケア施設を立ち上げています。この取り組みは大きな成果をあげ、SCANUを導入した病院では、新生児の死亡が目に見えて減ってきています。
現在44県に導入され、残り20県にも拡大していく予定です。とはいえ、機材も人材もまだまだ足りず、1台の保育器に何人もの赤ちゃんが入れられていたり、部屋に入りきらない赤ちゃんが廊下に寝かされていたりするのが実情です。
実は私も、前任地のエチオピアで次男を妊娠した際、手痛い経験をしました。エコー検査で、おなかの子どもの心拍が確認できないと告げられたのです。ほどなくして、検査機の劣化による誤診だったと判明したのですが、涙だらけの私に付き添ってくれた同僚がそのとき言った「途上国ではこんなことが毎日のように起きている。ユニセフのやるべことは山積だ」という言葉は忘れられません。すべての子どもが等しく守られる世界をめざして、精一杯活動を続けていきます。