終戦から5年あまり、隣国に逃れていた避難民の帰還が進む中で、今年16年ぶりに民主的な選挙が行われました。石油産出量はサハラ砂漠以南のアフリカでは一位を誇り、現在目を見張るほどの経済ブームに沸いています。しかし富の分配は不平等で、国民の68%が1日2ドル以下で暮らしています。その影響を最も受けているのは子どもたちです。

戦争の大きな傷跡のひとつが地雷です。アンゴラには、未だに数百万の地雷が、その埋設場所も判らないまま残されていると推定されています。地雷によってアンゴラ国民220万人(うち60%が子ども)の日常生活が脅かされているのです。これまでに、約8万人が地雷によって身体的・精神的な傷を負ったと考えられています。また、子どもたちは大人以上の危険に晒されています。なぜなら、子どもはカラフルで変わった形をしている地雷に興味を持ち、いじってみようとするからです。


© UNICEF/HQ07-1799/Christine Nesbitt
首都ルアンダ近郊のコミュニティ
とても不衛生

© UNICEF/Angola
9番目の赤ちゃん

アンゴラでは貧しい家庭ほど子どもがたくさんいます。子どもが9人なんていう家庭も少なくありません。

日干しレンガの小さな家やトタンをふいたバラックが住まいです。たいていの家はひと間しかなく、大家族が身を寄せ合って暮らしています。
家の中は風通しが悪く不衛生、それに水場もトイレもありません。子どもたちは外のしげみで用を足し、手を洗う水がないから、いつも下痢になっています。

また、学校に通っている子どもは限られています。
多くの子どもは水汲みやきょうだいの子守りなどの家事で忙しく、学校に通えずにいます。水くみは子どもの仕事です。大きなたらいに水を入れてでこぼこの道を何時間も歩くため危険を伴う作業です。


© UNICEF/HQ07-1796/Christine Nesbitt

© UNICEF/HQ96-0110/Giacomo Pirozzi

実はアンゴラは、世界で2番目に乳幼児死亡率が高い国です。最大の死因はマラリア。国内のどこへ行っても一年中マラリア蚊がいるので、私たち職員もよくかかります。すぐに薬を飲めば治せますが、貧しくて薬が買えない、薬のある診療所まで遠すぎるなどの理由で、毎年多くのこどもの命が奪われています。また、熱や頭痛といったかかりはじめの症状を、親が風邪と勘違いして、手遅れになってしまうケースも後を絶ちません。

マラリアに次いで多いのは、生まれて間もない赤ちゃんの死亡と、下痢による脱水症。27年間続いた内戦からぬけ出したばかりのアンゴラでは、井戸やトイレのない村が多く、不衛生な出産や汚れた水のために大勢の子どもがなくなっています。栄養不良も深刻で村々を訪れると、子どもたちは笑顔でかけ寄ってきますが、みんなとても痩せています。話を聞くと、食事はわずかなイモか豆。しかも多くの子が1日1食。栄養不足のために身体に抵抗力がなく、あらゆる病気にかかりやすくなっています。


© UNICEF/Angola
現地の子どもと

ユニセフはマラリア予防のために各地で蚊帳を無料配布していますが、そのときは一緒に予防接種や妊娠検診も行います。またお母さんたちに、病気の見分け方、栄養や手洗いなどについても話します。
そうした活動を実施した5州では、今、着実に子どもの死亡率が下がってきています。資金不足でまだ実施できていない州は13州。1日も早く支援を届けにいきたいです。

現場に出て私たちの活動が子どもたちの役に立っていると知ったとき、喜びを感じます。コミュニティーに井戸ができて、そして学校にトイレが出来て、どれだけ生活が変わったか、現地の人々が話してくれるんです。「井戸ができたおかげで農業ができるようになった」「時間ができて子どもの面倒をみられるようになった」など口々に話してくれる人々の姿を見ると本当に嬉しい気持ちになります。
貧しくて悲惨。アフリカといえばそんなイメージがつきまとうでしょう。しかし、確かに状況は悪いもののアフリカには希望や未来があります。それを象徴するのは子どもたち、我々が現地を訪れるとあっという間に子どもたちに囲まれます。外国人が珍しいせいもあって興味津々。
その姿を見ると未来を感じます。アンゴラは国民の半数以上が15歳以下という若い国です。
そしてそんな子どもたちこそ、この国の「今」を変え、「未来」を切り開く力になると思います。