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手前が菊川さん。背景の看板はHIV/エイズ予防を呼びかける。 |
私は、今、HIV/エイズ担当官としてエリトリアのユニセフ事務所で働いています。エリトリアは、アフリカで一番若い国です。長い独立闘争や最近の国境紛争の影響で、人々の移動が制限されていることもあり、HIV感染率は他のアフリカ諸国と比べるとまだ低いのですが、HIVに感染した若者や子ども達は徐々に増えています。
エイズに関連するユニセフの活動と聞けば、若者の予防活動や、エイズ孤児への支援を思い浮かべられるかもしれません。それらと同様に、HIV/エイズと共に生きる人達(感染者や発病者)への支援も重要な活動のひとつです。治療薬の価格が下がり、いくつかの国では患者が治療を受けられるようになってきていますが、多くの感染者・発病者が、多くの国で依然として非常に強い偏見や差別にさらされて生きているからです。
私が出会ったハイレ(仮名)も軍隊へ徴兵されていた時に、HIVに感染してしまった若者のひとりです。彼は、新たな感染者を一人でも減らすために、勇気を出してカミングアウトし、多くの人々にHIV/エイズと闘う必要性を訴えてきました。昨年12月の世界エイズデーに開かれた一大イベントでも、彼は感動的なスピーチをし、他の感染者や発病者が自分が直面しているような偏見と差別に苦しまないよう治療へのアクセスを切に訴えました。
ユニセフはハイレが所属するBIDHO(現地の言葉で「希望」)という感染者・発病者のための全国協会を財政的にも技術的にも支援してきました。新しい感染を防ぎ、HIV/エイズに付随する偏見や差別を克服し、ケアや治療を必要としている人たちに届けるためにも、HIV/エイズと共に生きる人達自身が、社会から認知され、活動主体となることが大切だからです。
悲しいことにハイレはもういません。彼は、ウガンダに行きアフリカで最も充実した活動を行っている感染者・発病者の団体を見学すること、そして、自らの治療を受けることを楽しみにしていました。しかし、今年2月に力尽きてしまったのです。
ハイレの遺志をつぎ、エリトリアの感染者や発病者が適切なケアや治療を受けられるよう、私も日々エリトリア政府とともに頑張っています。
日本のみなさまには、こうした活動をご理解いただければ大変うれしく思います。そして、これまでのご支援に心より感謝申し上げますとともに、これからもユニセフの活動を支えていただければ何よりも心強く存じます。
ユニセフ・エリトリア事務所
HIV/エイズ担当官 菊川 穣 |