(財)日本ユニセフ協会  







アグネス大使 モルドバ視察

親愛なるユニセフ支援者のみなさま

 平素よりユニセフ(国際連合児童基金)の活動にご理解とあたたかいご支援を賜り、心からお礼を申し上げます。

 このたびは、親を失った悲しみのうえに、孤独、苦境、絶望、そして空腹に耐えている何千万人もの子どもたちがいる、ということをみなさまにお伝えしたく、筆をとらせていただきました。

 スザナは、アフリカ南部の国マラウィの14歳の女の子です。みなさまのまわりにも14歳の女の子がいらっしゃるかと思います。スザナもどこの国にもいるような明るい笑顔の元気な女の子でした。しかし、両親がエイズで亡くなったときから、スザナの世界は一変しました。

 スザナは、14歳で一家の長になったのです。
 両親が亡くなって一家の収入は絶たれ、スザナは2人の幼い妹の面倒をみなければならなくなりました。エイズで親を亡くした子どもを引き取ってくれる人は村にだれもいません。

 村はずれのほこりっぽい道をしばらく歩くと、まばらな草地の向こうに壊れかけた小屋が見えてきます。そこがスザナと幼い妹たちが暮らしている家です。水は片道3キロの道のりを1日3回往復して運んできます。いま、スザナのいちばんの心配ごとは妹たちに食べさせる食事のことです。

「食べ物がなくなると、村に行ってなにかさせてくださいって頼みます。どこにも仕事がなかったから、となり村にまで行ってまた聞いてまわります。村から村をまわるんです。それでも仕事がなかったら、家に帰ってきて…その日はなにも食べずに3人でじっと座っているの」

 子どもだけで生きている「エイズ孤児」のほとんどは満足に食事をとることができません。栄養不良のために病気になってしまう子どもも大勢います。しかし、病気になっても看病してくれる親もなく、お金がないために医者に診てもらうこともできません。食べ物を手に入れるために身体をお金に換えるしか方法がない子どももいるのです。

 スザナは仕事をもらえた日には夕方帰ってから、夕飯のために小麦粉をねっただけの糊のようなおかゆをつくります。

 3人は土間に座り、「どうか、毎日たべものを与えてください」とお祈りをしたあと、ひとくち、ひとくちずつ味わいながら、ゆっくりと食べるのです。食事がすぐに終わってしまわないように…

 子どもにとっては親を亡くすということだけでも大変な悲劇です。そのうえに、社会のHIV/エイズに対する偏見と冷たい言葉や態度が孤児たちに重くのしかかります。だれからの支えもなく、学校にも行けず、生きるために想像を絶する苦難を強いられているのです。

現在、アフリカ、アジア、南米など世界には1400万人の「エイズ孤児」がいます。そして、あと6年もしないうちに2倍近い2500万人が「エイズ孤児」になろうとしているのです。今、この問題を放棄すれば、確実にこの数年以内に、さらに何千万人もの子どもたちが悲しみと絶望と空腹のまま放っておかれることになります。

 ユニセフは「エイズ孤児」のために、子どもの世話をする親戚や養護施設への援助、学校に通えるようにするための支援、孤児となった乳幼児やHIVに感染した赤ちゃんのケアセンターの設立、また、若者に対するエイズ予防教育、偏見や差別をなくすための取り組みなど、広範囲な活動を行っています。
 HIV/エイズは、もう、おとなや限られた人たちだけの問題ではありません。支援を必要としている多くの孤児たちのために、どうかお力をお貸しいただけないでしょうか。エイズで親を失った子どもが笑顔を取り戻し、希望を持って生きていけるように、みなさまのご支援を心からお願い申し上げます。

ユニセフ事務局長 キャロル・ベラミー

 追伸:ボツワナの男の子セメロは9歳です。エイズで両親を亡くしました。一人で弟の面倒をみています。でも悲しいときに抱きしめてくれるおとなはまわりにだれもいません。どうか、親をエイズで失った子どもたちに、あたたかい愛の手を差し伸べていただけないでしょうか。


www.unicef.or.jp

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