(財)日本ユニセフ協会

先住民族の未来に光をもたらす

ユニセフ・エクアドル事務所   宮川 秀子

 エクアドルには20以上の独自の言語や文化を先住民族(インディヘナ)が存在すると言われています。みなさんも特徴的な帽子やマントを着たキチュア族、アマゾンに住み、昔、敵の首を切って小さく加工し首飾りにしたという「首狩り族」のシュワル族(色々な映画のモデルになったそうです)などの名前は聞いたことがあるかもしれませんね。エクアドルはガラパゴス諸島を始め、自然に恵まれた美しい国で、カラフルなインディヘナたちの文化もエクアドルの魅力に花を添えています。

 そんなエクアドルですが、残念ながら5歳未満の小さな子どもたちの人権や総合的なケアの重要性などについて、政府や国民一人一人の関心、意識はまだまだ低く、何らかの教育や総合ケアを継続的に受けられる5歳未満の子どもの割合は15%を下回っています。また、政情が不安定で、貧しい家族や、地理的、経済的、社会的にも不利な状態に置かれているインディヘナたちは、幼児ケアに関しては、国からはほとんど恩恵が受けられない状態です。

 大半の子どもたちが幼児教育やケアのサービスを受けていないという状況から、ユニセフ・エクアドルは従来の幼児ケアに関する考え方を変えてみることにしました。大きな資金を使って従来型のケアセンターを作るより、できるだけ多くの家族に直接働きかけて、各家庭内での子どものケアを改善させた方が効果があるのではないか。このような発想から“家族教育プロジェクト”が生まれました。各地域で活動する様々なグループや教会などの力を借りて、家族にできる簡単な子どものケアや教育の改善に関する知恵を1枚のビラや手紙にした教材を定期的に家族に手渡し、内容を一緒に読み、話し合い、復習します。ある村では教会の日曜の講義内容に、ある所では学校の先生が家庭訪問のネタに、保健センターの職員は家庭を訪問する際の手土産に…。

 ありとあらゆるネットワークを使って、幼児教育改善の知恵、子どもの権利に関する知識を家庭に直接届けます。教材はその地域のリーダーや教育者たちと、その地域、文化、言語を考慮して作り、できるだけ簡単でみんなに受け入れられやすい内容にしてあります。

 そして現在、この活動がおもしろい方向へと進んでいます。最近、自分たちの文化や言語を「差別されるから」と否定して、子どもに文化や言語を継承させないというインディヘナの親たちが増えています。これは子どもにとっては大変なアイデンティティーの危機で、親から文化や言語の継承を否定された子どもたちは、混乱し、自分を失っていきます。 深刻化する問題を前に、いくつかの先住民族のグループが、自分たちの言語、文化、世界観の重要性を再認識し、できるだけ小さな子どものうちから先住民族のアイデンティティーと誇りをもって育ってほしいと、0歳からの“地域密着型インディヘナ家族教育”という活動を始めました。ユニセフの“家族教育プロジェクト”を柔軟に応用し、インディヘナのリーダーたち、教育者たち、若者たちが、自民族の世界観、文化、言葉の大切さを家族たちに伝え、親たちはもう一度自分たちの文化や言語を誇りを持って小さなわが子に伝えていく。まだまだ始まったばかりですが、強い信念を持って自分たちの民族のために努力するインディヘナの仲間たちを見ていると、トンネルの先には確実に光が見えているなと感じます。

 現在ユニセフ・エクアドルは、“家族教育プロジェクト”を推進するほかに、この“地域密着型インディヘナ家族教育”を進めるために、先住民族のグループと一緒に教材開発を行っています。このプロジェクトは、既存のネットワークやマンパワーを利用するため、運営費はほとんど発生しませんが、それぞれの文化や状況に即した良い教材を開発、製作するには資金が必要です。

約3ドルの資金で、1つの家族に幼児教育やケアをテーマにした教材を10枚(10テーマ)届けることができます。

みなさまの募金がこうした私たちの活動を可能にしてくださっています。どうぞユニセフへのご協力よろしくお願いします。

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