(財)日本ユニセフ協会

フモン族の「愛情あふれる育児」

ユニセフ・ベトナム事務所   飯田 友紀

 ベトナムには53もの少数民族がおり、それぞれが各々固有の歴史や文化、言語をもって暮らしています。その一つに、ベトナム北部の山奥に住むフモン族という少数民族がいます。フモン族は彼らが暮らす土地があまりにも交通の便の悪い辺地の山奥であるため、私たちが毎日当然のように受けている保健や教育のサービスを満足に受けることができません。毎日、男の人も女の人も子どもも、山を登ったり下りたりしながら、畑を耕し、何とか生計をたてています。フモン族は、ベトナムでも最も難しい状況におかれた少数民族の一つといえるでしょう。

 フモン族の家族の結びつきは強く、通常3家族ほどが一緒に住んでいます。フモン族のお父さんは、出産後の最初の1ヶ月間は、積極的に妻の手伝いをするという特徴があります。その最初の1ヶ月間だけは、お父さんは、お母さんや生まれたばかりの赤ちゃんのために、食事をつくったり、服を洗ったりします。しかし、子どもに対して愛情を示すことはほとんどありません。フモン族のお父さんは、自分の赤ちゃんや幼い子どもを抱っこしたり、一緒に話したり遊んだりすることはありません。そうしたことは、お母さんの役割とみなされているからです。しかし、お母さんもお父さんと同じように、畑仕事や食事の用意などでとても忙しく、みな、大抵子どもをおんぶしながら働いています。

 ユニセフ・ベトナム事務所では、ベトナム政府の支援のもと、フモン族のお母さん・お父さんたちに「愛情あふれる育児」を紹介しています。この育児方法はフモン族の生活スタイルを考慮に入れながら開発されたもので、フモン族のお母さん・お父さんから大きな反響がありました。この育児方法では、お母さんもお父さんも毎日の仕事をしながら子どもを抱っこしたり、一緒に話したり遊んだりすることを奨励しています。畑仕事をしながら、側にいる子どもに歌を歌ったり話しかけたりして、子どもがうれしそうに笑うのを見るお母さんもお父さんもうれしそうです。

 お父さんは、育児に自信を持ってくれるようになりました。自分の子どもに愛情を示したり、一緒に遊んだりすることは、もともと楽しくて満足を味わえるものなのです!そして、それは子どもたちが持って生まれた可能性を伸ばしていくためにも必要なことです。現在、この育児プロジェクトには、1,000世帯以上のフモン族が参加しています。

 ベトナムには、愛情あふれる育児に関する情報やスキルを必要とするお母さん・お父さんや、その他子どもに関わる人々が、まだまだたくさんいます。ユニセフ・ベトナム事務所は、24,000人の困難な状況にあるお母さん・お父さんたちに、その子どもたちが最善の人生のスタートを切ることができるよう「愛情あふれる育児」について伝える機会を提供しています。何と2米ドル以下のお金で、一人のお母さんあるいはお父さんが、その子どもが大きな可能性を伸ばして成長するために必要な、愛情あふれた育児を実践するための情報を得たり、スキルを身に付けたりするチャンスを手にすることができるのです。

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