パートナー(協力企業)

LIXIL
気候変動の影響を受ける子どもたちのためにユニセフを支援
住まいから未来へつなぐプロジェクト

2023年12月をもちまして終了いたしました。
ご協力ありがとうございました。

台風、洪水、干ばつ、熱波― いま、世界中でさまざまな災害や環境の変化が起こっています。ユニセフのグローバルパートナー(2018年~)である株式会社LIXILは、2023年10月から3カ月間、気候変動の影響を受ける子どもたちを支援するため、「住まいから未来へつなぐプロジェクト」を実施します。高断熱の窓、ドアなど対象製品の国内販売台数1台につき50円がユニセフに寄付され、災害に見舞われた地域の子どもたちへの緊急支援と気候変動に備えるための適応対策の両方の活動に役立てられます。

地球温暖化の対策には、その原因である温室効果ガス排出量を削減する「緩和」だけでなく、すでに起こっていたり、将来予測される影響に対して備え、被害を最小限に抑える「適応」があり、この2つを両輪で進めることが重要との思いからプロジェクトが発足しました。

止まらない温暖化

先住民族イヌピアットの少女が暮らす北極海沿岸では氷が急速に溶け、生活や地域の生態系に大きな影響がでている。

近年、地球の温暖化が進んでいます。世界の年平均気温は、100年あたり0.73℃の割合で上昇しました。2011年から10年の平均気温に限れば、産業革命前(1850〜1900年)の平均気温と比べて1.09℃上昇しており、〝観測史上最も暑い10年間〞でした(※1)。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による最も厳しいシュミレーションでは(※2)、21世紀末の世界平均気温が21世紀初頭に比べて5.7℃上昇するとされています。

地球の温暖化は、二酸化炭素などの温室効果ガスとして挙げられる気体が大気中で増えすぎたことが原因です。わずかにみえる1~2℃という気温上昇が、さまざまな問題を引き起こします。産業革命前に50年にいち度しか起きなかったレベルの極端な高温は、世界の平均気温が1℃温暖化した現代では4.8倍、温暖化が1.5℃まで進めば8.6倍、2℃まで進めば13.9倍の頻度で生じる可能性が高いとされています(※1)。気温上昇によって海面からの水蒸気量が増加し降雨量が増える一方で、内陸部に多い乾燥地では、ただでさえ少ない土壌の水分が蒸発し、干ばつや砂漠化が進みます。極端な気象が頻発するおそれがあるほか、海水の膨張や氷河などの融解で海面水位が上昇。自然生態系や農業、人々の生活環境への直接的な影響が懸念されます。

※1 …国際的な専門家でつくる地球温暖化についての科学的な研究の収集、整理のための政府間機構IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次報告書(2021年)
※2 …IPCC第5次報告書(2014年)

学校までボートに乗って通学するパキスタン・シンバ村の生徒たち。 2022年同国を襲った豪雨は8月末までに過去30年間の全国平均の降水量の約2.9倍に達した。大洪水と地滑りに見舞われ、保健施設のインフラが甚大な被害を受け,2万5,000以上の学校が損傷、破壊した。翌年3月になってもこの村では水が引かない。災害はバングラデシュ、インド北部、アフガニスタンにも及んだ。

2023年5月時点でパキスタンの一部の地域では気温が摂氏50度に達している。多くの人々は春を飛び越してそのまま夏の灼熱に突入したように感じている。壊滅的な洪水から9カ月が経っても、パキスタンでは多くの地域が水没したままの一方で、新しい雨季が近づき、さらなる熱波が予想されている。写真:バンジャーブ州の仮設学習センターに通う生徒。

気候変動による危機は「子どもの権利」の危機

気候変動に国境はなく、あらゆる国の課題です。しかし、その影響をもっとも受けているのは、災害に備えたり、被害から回復したりする力の弱い国や地域で暮らす子どもたちです。

ユニセフは2021年、子どもの視点から気候危機を分析した報告(※3)をはじめてまとめました。世界では、気候変動の影響を受ける「極めて高いリスク」を抱える33の国々に、世界の子どもの約半数にあたる約10億人の子どもたちが暮らしています。

※3 …報告書『気候危機は子どもの権利の危機』( 2021年)。サイクロンや熱波などの気候・環境ショックに子どもがさらされているかどうか、また必要不可欠なサービスを利用できるかどうかに基づき、それらのショックに対する子どもの脆弱性を評価している。

気候変動の影響をもっとも強く受けているのはサハラ以南のアフリカに位置する中央アフリカ共和国、チャド、ナイジェリア、ギニア、ギニアビサウに住む子どもたちです。これらの国々はそもそも水や衛生設備、保健・医療、教育、保護といった社会サービスや環境が十分に整っていない地域のため、健康、教育、命に関わる病気の危機にさらされています。

さらに報告書は世界のほぼすべての子どもが、複数の気候・環境危機に同時に直面しており、少なくとも下図のひとつ以上のリスクに直面していることを明らかにしています。8億5,000万人の子どもたち(世界の子どもの3人に1人)が、これらの気候変動によるリスクのうちの少なくとも4つが重なる地域に住んでいます。

図1 子どもたちの気候危機

2億4,000万人の子どもたちが、
沿岸洪水リスクにさらされている

3億3,000万人の子どもたちが、
河川の洪水リスクにさらされている

4億人の子どもたちが、
サイクロンのリスクにさらされている

6億人の子どもたちが、
ベクター媒介性疾患のリスクにさらされている※1

8億1,500万人の子どもたちが、
鉛汚染のリスクにさらされている※2

8億2,000万人の子どもたちが、
熱波のリスクにさらされている

9億2,000万人の子どもたちが、
水不足のリスクにさらされている

10億人の子どもたちが、
非常に高いレベルの大気汚染のリスクにさらされている※3

※1 …ベクター媒介性疾患は、蚊やダニなどの生物を媒介に人に広まる感染症による疾患で、マラリア、デング熱などがあり、その蔓延には地球温暖化の影響があるとされています

※2 …鉛は子どもの脳に回復不可能な害を引き起こす強力な神経毒。鉛蓄電池の非公式で基準を満たさない再利用が、2000年以降、自動車の保有台数が3倍に増加した低・中所得国に暮らす子どもたちの鉛中毒の主な原因になっています

※3 …大気汚染は、主に化石燃料の燃焼の結果として生じており、世界中で毎分13人の死亡を引き起こしています

病院の栄養治療センターで、重度の栄養不良に加え、マラリア感染と肺炎の診断を受けた子ども。エチオピア、オロミア州では、干ばつの影響で飢餓や栄養不良になる子どもが増加している。(2023年2月)

ベトナムクアンナム省の町。台風の影響により浸水した道を通る子どもたち。 (2022年9月)

子どもたちに しわ寄せが

気候変動の影響をきわめて深刻に受けているとされる33カ国の二酸化炭素排出量をすべて足しても、世界の排出量のわずか9%にすぎません。逆に、温室効果ガスの排出量が最も多い10カ国を足すと、世界の排出量の70%を占めます。これら10カ国のうち、きわめて深刻に気候変動の影響を受けているとされる国は、わずか1カ国のみです。気候変動による影響を強く受けているのは、温室効果ガスを大量に排出していない国々の子どもたちなのです。

気候変動の最も深刻な影響を受けるのは、脆弱な立場や環境にある子どもたちです。そして、温暖化に対する責任もきわめて少ない国々の子どもたちが、最も苦しむことになるのです。

子どもの気候危機指数を地図でみる

ユニセフの対策と活動

気候変動と環境の悪化で、多くの子どもたちの権利が損なわれているなか、ユニセフは子どもが直面する最大のリスクを軽減し、脆弱な地域の被害を最小限に抑えるための活動を展開しています。緊急人道支援と開発支援の双方で気候変動による危機に対応しています。

自然災害 緊急支援

災害に対する緊急人道支援として、給水や衛生環境の整備、急性栄養不良の子どもの治療、学習機会を継続するための支援の提供などをいち早く実施。また子どもに焦点を当てた早期復興を優先し、最も疎外された人々のために、「ビルド・バック・ベター(Build Back Better)」――被災前より良く再建することに重点を置いた活動。

台風から回復したコミュニティ。栄養治療食、微量栄養素パウダー、葉酸鉄を提供(フィリピン、2022)

コミュニティが将来のショックに備え、回復力を高めるために国のシステムを強化する

すでに起こっている気候変動の影響から子どもや地域社会、最も弱い立場にある人々を守るために、水、衛生設備、保健、教育、保護などの重要なサービスを適応させる。防災計画のための災害脆弱地域の分析と可視化など、コミュニティの災害リスク及び気候変動に対する強靭性を強化する。

©UNICEF Pacific 太平洋島嶼国地域の子どもを取り巻くリスクの調査書

自分の身を守るための知識やスキルを備える

教育、啓発活動を通じて、子どもや学校、保護者、コミュニティーの人々が気候変動に適応し、その影響に備えるために不可欠な気候に関する知識と環境スキル(グリーンスキル)を提供する。

グリーンテクノロジーについて学校で学ぶ生徒たち(メキシコ)

気候変動に取り組む子どもと若者をサポートし、国や地域の意思決定への参加を促す

気候変動と環境問題を伝え行動を促す提唱者として子どもや若者が同世代と連帯し、持続可能な世界の形成に、有意義に参加することを促す。
気候変動に関する政策議論で、未来を左右する重要な決定に若い世代の意見が十分に反映されていない現状を変え、国際社会に子どもや若者たちの声を届ける。

COP27は、子どもを変革の担い手として初めて公式に認めるという重要な進展を示した(エジプト 2022年)

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