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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたちは今 報告会レポート

アグネス・チャン日本ユニセフ協会大使
ソマリア視察 帰国報告会

【2010年2月25日 東京発】

© 日本ユニセフ協会

■日時 2010年2月25日(木)  13:30〜15:00
■場所 ユニセフハウス1Fホール

2010年2月15日〜23日の日程で、13回目となるユニセフ支援現場の視察を終えたアグネス・チャン日本ユニセフ協会大使が、今回の視察地であるソマリア第2の都市ハルゲイサで見た紛争の傷跡や“無政府” の現実、そこでたくましく活動する女性や子どもたちの姿を報告しました。

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今回訪れたのは、ソマリアの北西部にあるこの国第2の都市ハルゲイサです。 過去に国連を狙ったテロ事件などもあったため、警備がとても厳しく、防弾車に乗って移動し、常に武装した警護の人が同行する中での視察でした。

避難民キャンプで出会った人々

© KANEKO

まず「ステート避難民キャンプ」という、ハルゲイサでいちばん大きなキャンプを訪ねました。南部の戦闘を逃れてきた人々や、一旦エチオピアに逃げて戻ってきた人々など、およそ3万人〜4万人が暮らすキャンプです。
このキャンプに身を寄せる女性のひとり、37歳のサコアさんは、隣家に砲弾が打ち込まれ一家6名が亡くなったことをきっかけに、9人の子どもを連れ、モガディシュでの生活を捨てて逃げてきたとうことでした。一般の住民には、もう誰と誰が戦っているのかわからないほどの状況だったと言います。幸いこのキャンプに身を寄せることができましたが、何も持っていない。サコアさんだけでなくキャンプに暮らす人たちは皆何も持っていないわけで、まるで何も持っていない人たちの上に何も持っていない自分たちが乗っかっているような、本当に惨めで、申し訳ない気持ちだと話してくれました。
内戦中にエチオピアに逃げた一家に生まれた16歳のホーダンは、7人兄弟です。6歳のときに家族でソマリアに戻ってきました。両親を亡くし、12歳から家事育児はホーダンが担っています。お兄さんたちが日雇いの仕事で稼いでくる1日150円程度のお金で生活しなければなりませんが、これはとても厳しい生活です。しかしそんな中でも、ホーダンは週に3日、夜学校に通っていました。

女性たちの活動

ホーダンが通っているのは、キャンプの中にある小さな学校です。避難民キャンプの中で支援を必要とする人々を助けようと立ち上がった女性たちが作った学校で、ユニセフもこの学校を支援しています。それ以外にも、女の子のリーダーを育てていこうと女の子にリーダーシップを教える活動や、新しく避難民キャンプにやってきた人が暮らせるように世話をしたり、仕事を探したり、子どもが学校に行けるように支援する活動などをしています。

“無政府状態”の現実・・・

© 日本ユニセフ協会
避難民キャンプ内に密集する手作りの小屋

しかし、キャンプでの活動は簡単ではありません。
北西部を実行支配する“政府”を名乗る人々はいますが、彼等も予算の多くを軍事費に割いているため、一般の人々に社会サービスを提供する余裕はありません。国際的に認められた政府でないため、国際社会の支援も届きにくい。これまでに訪問してきた他の国の避難民キャンプでは、例えば入るときには登録され、最低限の配給や水場や意見を申し入れられる場所がありました。でもソマリアには、キャンプに責任を持つべき政府がない。どこからも支援を受けられず、キャンプに暮らす人々はみなとても苛立っていました。無政府状態のつらさや緊張感を目の当たりにしました。

ソマリアの子どもたち

© 日本ユニセフ協会
栄養不良で入院している子ども

ソマリアの子どもたちの状況は深刻です。
栄養が十分に摂れないためもあるのでしょう、子どもの5人に一人は5歳まで生きることができません。衛生状態も悪く、栄養不良の上に下痢を繰り返してしまう子どももいました。ハルゲイサは人口が増えているのに病院は増えていません。施設もぼろぼろです。お金がないために少し症状が良くなったら病院を出されてしまうような状況です。また訪ねた孤児院は少年院も兼ねていて、孤児と問題のある子どもたちが一緒に暮らしていました。施設が足りず、そうせざるを得ないのです。お金がないので十分な食べ物を子どもたちに与えることができず、食事は薄いパンケーキを小さい子は2枚、大きい子は4枚だけだと聞きました。ユニセフは毎週その施設を訪ね、重度の栄養不良の子どもを病院に入れたりしています。

FGM(女性性器切除)

ソマリアの大きな問題のひとつで、女性のほとんどが受けているFGM(女性性器切除)に反対する活動をしている女性にも会いました。ユニセフもFGMに反対し、イスラムの宗教指導者たちに研究をしてもらい、FGMはイスラムの教えに基づくものではないということを確認してもらうなどの活動をしています。切除を受けた女性たち、切除師にも会って、その過程を詳しく聞きました。とてもつらい話でした。

今回の視察では、これまでの海外視察にはなかったつらさがありました。
国際社会は、「落ち着いたら支援しよう」「今は危ないから入れない」というのが現状です。でも、安定するのを待っていることはできないのです。ソマリアの紛争はまだまだ終わらないでしょう。南の戦闘でどちらが勝っても、勝ったほうが北にやってくればまた新しい戦争が始まります。ユニセフは、紛争中も、そうでないときも、ソマリアをあきらめずに村やキャンプに入って支援をしてきました。昨年には、激戦地も含めソマリア全土で予防接種を実施しました。私は、命がけでソマリアの人々を支えようとしている人々を、紛争に屈したくないと頑張っている人々を応援しなければならないと感じました。
安定しない状況の中でも子どもたちは生まれ育っています。
1日でも長く、一人でも多くの子どもたちが生きていくために、私たちに何ができるのか、みなさんと考えていきたいと思います。

まとめ:日本ユニセフ協会

■NHKラジオ第一「私も一言!夕方ニュース」
放送日:2010年3月3日(水)
放送時間:17:00〜18:50

放送日時・内容は事前の予告無く変更される場合がございます。予めご了承ください。

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