メニューをスキップ
財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー 報告会レポート

ジャコモ・ピロッツィ氏特別講演会
東日本大震災緊急・復興支援活動報告会

≪第一部≫ 特別講演会
【講演】 写真家 ジャコモ・ピロッツィ氏

この仕事をはじめて20年以上が経ちました。120カ国以上をまわって、ユニセフの現場で写真を撮っております。私のユニセフ仕事というのは、いくつかありまして、ひとつは与えられたテーマに沿って写真を撮るというものがあります。

例えば、ストリートチルドレンや孤児などの状況を皆さまにお伝えするために写真を撮りました。フィリピンのセブという島で撮りました、ストリートチルドレンの写真です。

この子どもたちは、アフガニスタンからパキスタンへ難民として逃れた子どもたちです。手が小さく、器用ですので、皆さまもご存じのようなカーペットやじゅうたんの織り手として、非常に安い労働力として使われています。

この写真もパキスタンで撮りました、麻薬を使用している子どもの写真です。このようにストリートチルドレンも、麻薬を使い始めると、物乞いをしながら麻薬を入手するという生活を送る子どもたちもいます。ユニセフは、そういった子どもたちのためのリハビリテーションセンターを支援してます。

緊急支援の場に撮影に行くこともあります。今、ご覧頂いている写真は、コートジボワールの難民が集まっているリベリアの難民キャンプでの写真です。リベリアでも長い内戦があり、リベリアの国民がコートジボワールなどに逃れるということがあったのですが、今は逆にコートジボワールの難民が、リベリアに避難する状態が起こっています。このような場所では、UNHCRも活動をしておりますが、ユニセフの存在感も非常に大きなものです。例えば、コレラを予防したり、子どもにやさしい空間の整備、教育の場の提供、予防接種の実施など、非常に大きな支援を行っております。

南スーダンで会ったダベという男の子です。彼は道でおもちゃを拾って、学校へ持ち込みます。それは、実は手榴弾で、教室で爆発してしまいました。18人が犠牲になり、彼もこうして病室で寝ています。

もちろん、保健の分野でも活動しています。妊産婦の死亡率が高い国が多いなかで、どうやって死亡率をさげていくかということも活動のひとつです。

子どもたちには、予防接種が大きなプログラムとして行われています。アフリカからポリオを撲滅させようという活動も行われています。

そしてこの写真はタンザニアのものですが、マラリアの予防のために、蚊帳を配るというような活動も行っています。

そして栄養のプログラムは、栄養不良の子どもたちだけのものではありません。成長不良の子どもたちをモニタリングすることもユニセフの仕事です。

水と衛生のプログラムでは、水へのアクセスが悪いところへ水を運んだり、水の供給が断たれたコミュニティへの支援も行っています。水と衛生のプログラムのなかで、重要なことが二つあります。ひとつは、感染症予防のための手洗いの推奨です。もうひとつは、学校にトイレを作るという活動です。

そしてユニセフが支援に力を入れているのがHIV/エイズのプロジェクトです。特に南部アフリカのプロジェクトについてお話します。最近非常に力を入れているのは、母子感染の防止です。妊婦への血液検査を受けてもらい、もし感染が発覚した場合は、必要な予防策をとることで、子どもへの感染を防ぐことができます。子どもたちがHIVに感染した後、発症を遅らせるための薬の支援もしています。

子どもの保護の分野のなかには、児童労働という問題がありますが、特に家事労働、女の子が学校へ行けずに家の中で過剰に働かせるということもユニセフは防ぐ活動をしています。

そして、子どもたちの写真ワークショップについてお話させてください。私が2004年から始めたミッションです。今25カ国で行ったことになります。子どもたちには自分の意見を表明する権利があります。この写真を撮って伝えることを通じて、困難な子どもたちにとってアートセラピーのような役割を果たします。ワークショップでは、4つの内容を、通常5日間をかけて行います。まず、どうすれば良い写真が撮れるのか、撮影法を伝授します。次にコミュニティなどでの撮影ツアーに出かけます。そして写真を見ながら話し合いをし、最終的にはキャプションを書くという活動をします。次にご覧いただく写真が、私が行ったワークショップのなかで一番印象的だったものです。

ロシアのべスランというところで、2006年にテロリストが立てこもるという事件がありました。その事件後初めて子どもたちは現場に入り、写真を撮影し、伝えるということをしました。そこで私が感じたことは、写真をとることが子どもたちにとって大きな意味があることがわかりました。写真を撮ることで、自分たちの学校に起こったことと向き合うことができ、心理士さんに相談するということができるようになった子もいます。

グルジアのミュシャが撮影している姿です。ミュシャは、おばあさんを殺されてしまいました。そのおばあさんの遺影に向かっている様子です。

© UNICEF/Japan 2011/Rolly Luchavez

ユニセフの写真プロジェクトに、EYE SEE(アイ・シー)プロジェクトがあります。これはソニー株式会社から資金や機材のご支援をいただき実施しているプロジェクトで、これまで、マダガスカル、リベリア、ルワンダ、南アフリカ、マリ、そして今回、日本の東北で写真ワークショップを行いました。

では、これから私たちが11月のはじめから、東北で行ったワークショップでの子どもたちの写真の一部をご覧いただきたいと思います。

子どもたちは写真を撮影するにあたって、どんなシーンを撮るのか、何を伝えるのかという話し合いが行われました。そこで3つ挙げられました。まず、何が起こったのか、その破壊の惨状を伝えたいということ、今どうなっているのか、そしてこれからどうなっていくのかを伝えたいという話がありました。それに基づいて子どもたちが撮影に行きました。

子どもたちが伝えたかったことは、「人々の力強さ」だと思いました。大変困難な状況にあっても、人々が前を進んで歩む、人々の力強さを子どもたちが伝えたかったのだと思います。

© UNICEF/Japan 2011/Saaya Minatogawa

この写真の端に、小さな花が映っています。この写真についての話し合いが私はとても印象的でした。この花は「たくましさの象徴」だというのです。子どもたちは色々なことを考えて写真を撮るものだと思いました。

子どもたちはお年寄りを訪ねて「このような大きな津波は、以前もあったのですか」と聞いたり、お店を再開された方に話を聞きに行く子もいました。人々が復興に向けてどんな風に日々を過ごしていらっしゃるのか、切り取った写真を撮影しました。

災害が起こった時、報道陣の方々が、たくさんの質問を抱えて被災者にマイクを向けます。そのなかでも子どもたちは非常に弱い立場で、言いたいことも伝えられないという状況があります。このプロジェクトは全く逆のことをしてしまおうという考えです。

子どもたちがカメラを持って自分の声を伝えるために、撮影に出ます。子どもたちの気持ちにはもちろん悲しみもあるでしょう。しかし、どうやってこれから進んでいこうという強い意志も、私たちに伝えてくれるのです。

左© UNICEF/Japan 2011/ Atsuya Ueyama、中央上© UNICEF/Japan 2011/ Kaoru Sano、中央下© UNICEF/Japan 2011/Taichi Sotodate、右上© UNICEF/Japan 2011/Toshinori Sano、右下© UNICEF/Japan 2011/Misuzu Kamaishi

このワークショップは、11月に岩手と宮城、12月に福島で開催されました。残念ながら、ここですべてをご紹介できませんが、子どもたちが撮った写真は、近いうちに、皆さまに発表させていただく機会があると思います。それまで少々お時間いただければと思います。皆さま、本日はありがとうございました。

本文中クレジットのない写真は全て:© UNICEF/Giacomo Pirozzi

プログラム »
大槌保育園 園長 八木澤 弓美子氏の講演レポート »
日本ユニセフ協会 緊急支援本部 プログラムコーディネーター 菊川 穣の報告レポート »

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る