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公益財団法人日本ユニセフ協会

マリ 水の問題

「アクセスのむずかしさ」
水を運ぶ人

© 日本ユニセフ協会

 水へのアクセスもそうですが、農村部へアクセスするのも容易ではありません。今回訪問した村々は、マリで3番目に大きい都市、モプティから4WDで片道2時間以上。町を離れて1時間もたたないうちに、舗装路は終わり、車はガタガタとゆれ続けました。地元の人たちは、この道を徒歩やロバ、自転車などで移動します。一言で「アクセスする」といっても、その大変さは、移動する距離と道の状態、移動手段によって、大きく異なります。  雨季になると、舗装されていない地面や道はぬかるみ、村の人が他の地域と行き来することはさらに大変に。外部と行き来ができないことは、社会サービスの普及にも利用にも大きな影響を及ぼします。

人手で掘った浅い井戸から水をくむ様子
@日本ユニセフ協会/2007/Hisashi

命をおびやかす水
 地面を10メートルほど掘った浅い井戸や池、沼の水は、外気にさらされ、土や砂、時には家畜の糞尿が入ってしまいます。このような水には、細菌やミジンコが発生し、下痢やメジナ虫病、トラコマ(慢性結膜炎)を引き起こします。雨季には井戸や池からあふれた水が地面を覆い、コレラが蔓延します。このような水を飲む子どもたちは、日常的に下痢をわずらい、命を落としかねません。マリでは5歳の誕生日を迎える前に、4.6人に1人の子どもが亡くなり、下痢は死亡原因の約15%にものぼります。

メジナ虫病の経緯

激痛をもたらす「メジナ虫病」

下痢とともに大きな問題であるメジナ虫病。 メジナ虫病は、肉体的にも経済的にも、大きな痛みを伴います。

 感染のもとになるのはよどんだ水。メジナ虫の幼虫や卵を持ったケンミジンコが含まれる水を飲むとかかる病気です。幼虫は人の体の中で大きくなり、その長さは約1メートルにもなります。人の体の中で大きくなるメジナ虫は体中を動きまわり、筋肉や内臓を傷つけ…、約1年後には、肌を食い破って外に出てきます。その痛さは想像もつかないもの。治療法はなく、鎮痛剤を飲んで痛みに耐え、薬を飲んで感染の拡大を予防することはできますが、薬を手に入れられない人は、ただ痛みに耐えるほかありません。最終的には皮膚を破って出てきたメジナ虫を、慎重に棒に巻きつけ、取り除いていきます。多くの場合は、足から虫が飛び出してきますが、中には鼻からでてくるケースも・・・呼吸ができず、亡くなることもあるそうです。人によっては、何匹もの虫が体内にいることもあります。

皮膚を破って出てきたメジナ虫

© UNICEF Mali

 「言葉にはできない痛み」といわれるメジナ虫病、痛みのあまり、働くことはおろか、歩くこともできません。メジナ虫病は、不衛生な水を飲むことで起きる病気。つまり、1人が発生すれば、家族や同じ村の人も同時にかかることが多いのです。家族のうちの何人かがメジナ虫病にかかり、農作業ができず、家族全体が食べることがままならない−経済的な痛みも引き起こすのです。

 
マリは、アフリカ各国とともにメジナ虫病根絶に取り組んでいます。
マリでのメジナ虫病の発生件数
マリでのメジナ虫病の発生件数

「壊れたままのポンプ付の井戸」
 もうひとつの大きな問題が、壊れて使えなくなってしまった手押しポンプ付の井戸。
農村部にある手押しポンプ付の井戸は、地下深くから水をくみ上げ続けます。朝から晩まで使われるため、ポンプの中のチェーンが切れたり、水をためるタンクが壊れたり。多くの村では、井戸はひとつしかなかったり、同じ村でも離れたところにあったりするため、壊れた井戸を使っていた人たちは、人手で掘った浅井戸や池、沼などの不衛生な水を使わざるを得ません。修理をするにも、修理をできる人が近くにいない、部品が手に入らないなどの理由で、農村部に設置されている14000あまりのポンプ付の井戸のうち、34%が壊れているといわれています。

ユニセフ・マリ事務所の活動
マリの抱える水の問題2へ

ユニセフ・マリ事務所の活動

 ユニセフは、下痢やメジナ虫病など水に関係する病気の削減・根絶を目指して、マリ政府とともに、清潔で安全な水の供給や衛生教育、コミュニティの人たちの井戸の管理能力育成の活動をしています。 特に、メジナ虫病が発生している、モプティ地方、ガオ地方などの農村で重点的に活動をしています。

マリ事務所 水プログラム担当 トゴタ・ソゴバ

 メジナ虫病が発生した場合、村から自治体へ、自治体から県へと報告があがり、マリ政府のメジナ虫病根絶プログラムの担当者へ情報が集まります。ユニセフ・マリ事務所の水プログラム担当トゴタ・ソゴバは、清潔で安全な水を供給するためにどの地域に手押しポンプ付の井戸を作るか、担当者と協議します。
  このときのポイントの一つが、コミュニティの人たちが手押しポンプ付の井戸がほしい、と真剣に考えているかということ。関心が高ければ、井戸ができたあとのメンテナンスや、より多くの人が井戸の水を使えるよう協力しあうことなどが期待でき、せっかくの支援が無駄になることを防ぐことができます。住民の関心が低ければ井戸はぞんざいに扱われ、壊れても修理さえされないことが多くなるのです。 手押しポンプ付の井戸は、掘削機を使って穴を掘り、深さは地下50〜100メートルにもなります※。ユニセフは、清潔で安全な水であるか水質を確認し、コミュニティの水管理委員会を中心に、住民たちに適切な使いかたや衛生習慣が伝えていくよう、サポートをします。

※掘る深さは場所によって異なります。

井戸を作ると同時に、コミュニティの人たちが自分たちの力で井戸を維持していけるよう、メンテナンスのトレーニングや予備用の部品の在庫ネットワークの立ち上げも行います。 「コミュニティの人たちが「自分たちの手」で、「自分たちの井戸」を守り、使い続け、健康な生活を送れることが一番。健康であれば、子どもは教育を受けられる機会も増える。子どもは未来のマリを担う大切な存在です。」とトゴタは言います。

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