不動産を遺贈する

はじめに

遺言書を通じ、自身の財産を法定相続人以外の個人、又は団体へ贈ることを「遺贈」といいます。日本ユニセフ協会では、現金や預貯金などの動産だけでなく、「将来、自宅の寄付を考えているけれど、最期まで住み慣れたところで暮らしたい」など、不動産の遺贈についてのお問い合わせも日々いただいています。

1.不動産遺贈の手順

不動産をどのように活かすか決める

大切にしてきた不動産をどのように活かすか。お金に換えて寄付したい、住む場所がなく困っている人のために使ってもらいたい、公園など地域の憩いの場所として遺したいなど不動産の活かし方はさまざまです。この活かし方が決まれば、それに合わせて遺贈先を探し検討します。

不動産登記簿を確認する

遺贈先に問い合わせるまえに、登記簿で不動産に関する情報を確認しておきます。

不動産登記簿とは、不動産(土地や建物)の所在、面積、所有者の住所や氏名、物件の権利関係を記録した台帳のことを指します。この登記簿上で、不動産が単独所有であること、担保権の設定がないことを確認します。

登記簿に記録された情報を確認するには、登記簿謄本、又は登記事項証明書を取り寄せます。申請する方法は、その不動産を管轄する登記所(法務局、及びその支局や出張所)の窓口に出向くか、あるいはウェブサイトから申込をして郵送してもらうことができます。

遺贈先を決めて相談、遺言書に書く

登記簿を確認したら、具体的に遺贈先として検討している団体に問い合わせることをおすすめします。団体によって、不動産の遺贈を受けていないところ、あるいは不動産を受け取った後に売却し、その換価代金を支援事業に活かすところがあるためです。日本ユニセフ協会では、ご自宅含む不動産の遺贈をお受けしていますが、世界の子どもたちへの支援に役立てさせていただくため、不動産の売却に同意いただくことが前提となります。このため、売却が難しい場合はお受けできないことがあります。予めご了承ください。

また、不動産の売却手続きも行っているのかについても、遺贈先(受遺者)に確認します。執行者が不動産を売却し換価したうえで受遺者へ渡す(清算型遺贈)のか、不動産をそのまま遺贈し受遺者の側で売却するのか、この点は遺言書にも明記する必要があるためです。

遺贈先と不動産売却等の手順が決まれば、不動産の遺贈について遺言書をつくります。(遺言書の書き方については「自筆証書遺言と公正証書遺言の書き方」で説明しています)

遺言書に書くにあたっては、2種類ある遺贈の方法についても知っておく必要があります。「特定遺贈」では渡す財産を特定するのに対し、「包括遺贈」では全財産に対する割合で指定するというのが、それぞれの大きな特徴です。また「包括遺贈」では、財産を譲り受ける受遺者は相続人と同等の権利、及び義務を負うため、債務を含めた財産を引き継がせることになります(詳しくは「2.2種類の寄付方法~特定遺贈と包括遺贈」をご覧ください)。なお、不動産を遺贈した際には売却にかかる手続費用や税金が発生することがあります。その支払いを誰がするのか、遺言書に明記することをおすすめします。

不動産の遺贈では、以上のような点をふまえて遺言書を書く必要があるため、自筆証書遺言の場合でも弁護士などの専門家に相談しながら遺言をつくる方が多いようです。

以下に、自筆証書遺言での不動産遺贈(特定遺贈)の記載例を紹介します。

遺言書記載例

2.不動産遺贈と税金~みなし譲渡所得税

法人への不動産の遺贈では、譲渡益が発生する場合は譲渡所得税が課せられるため、準確定申告(相続開始を知った日から4カ月以内)で申告しなければなりません。これは、法人への不動産の遺贈は「無償の譲渡」ですが、税法上は「時価で売却したものとみなされる」ためです。

「譲渡益」とは、相続発生時の時価が、不動産取得費(遺言者が不動産を購入した額)を上回ったときの差益をさします。なお、取得費は、確認できる資料が残っていないなどでわからなければ、相続発生時の時価の5%として計算されます。相続発生時の時価が不動産取得費を上回らなければ、課税対象となる「譲渡益」が発生しなかったとみなされ、課税はありません。税率は、長期保有(5年超)と短期保有で異なり、長期保有で15%、短期保有で30%となっています。具体的な税額については、税理士や税務署にご確認ください。

譲渡所得税は不動産の所有者(被相続人=遺言者)に課税されますが、遺言者に代わって相続人、又は相続人と同じ地位の包括受遺者(=包括遺贈において財産を譲り受ける者)が納税義務者となります。つまり、不動産の特定遺贈では、法定相続人が不動産は譲り受けないにも関わらず、税金は負担しなければならないといった状況が起こりえます。このため、不動産の特定遺贈をお考えの方は、みなし譲渡所得税は誰が負担するのか、あるいはどこから差し引くのかを明確に、遺言書に書きます。

<課税の仕組み>

図:課税の仕組み

税金について詳しくは、税務署や専門家に問い合わせください。

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