遺言書を書くまえに…

はじめに

満15歳以上であれば、遺言書によって、自身の意思を法的に有効なものとして遺すことができます。

人が亡くなると、法律(民法)にしたがい相続が行われます。誰がどういった割合で故人の財産を引き継ぐのかは、民法に定められています。一方で、財産の遺し方は遺言書で指定することができるのです。法定相続人以外の個人、又は団体へ財産を贈る遺贈なども、遺言によって行うことができます。

遺言書を書くまえに...

1.財産をすべて書き出す

自身の財産を書き出し、一覧にすると全体を把握しやすくなります。

相続財産には現金や預貯金、株式などの有価証券、不動産のほか、動産類(車、貴金属、骨とう品など)があげられます。場合によっては、預金口座の通帳コピーや不動産の登記簿謄本、株式や投資信託であれば証書を準備し、詳細情報を確認します。

また、記載漏れや、亡くなったときに所有している財産が、遺言書を書いた時点とは変わった場合などに備え、遺言書に「その他の財産は、Aに~」といったかたちで書いておくのもひとつです。

2.財産を誰に遺すのか決める

次に、具体的になった財産を誰にどのような割合で遺したいのか、決めます。たとえば、法定相続人となるご家族を確認し、そのうえで誰に相続させるのかを考えます。また、遺言書で指定することで、法定相続人以外の個人、又は団体に財産を贈ること(遺贈)もできます。

遺贈(いぞう)とは

遺贈では、財産を遺す相手は法定相続人(*)以外の個人、又は団体で、遺言書で指定します。また、遺贈先が公益法人や認定NPO法人であれば相続税は課税されません(日本ユニセフ協会への遺贈は相続税の課税はありません)。手続きなど詳細については、遺贈先の団体に直接ご確認ください。

*法定相続人の範囲は、被相続人の配偶者、子ども(または孫、ひ孫)、親(または祖父母)、兄弟姉妹(またはその子)まで。

2種類の寄付方法~特定遺贈と包括遺贈

遺贈には、2種類の寄付方法があります。特定遺贈では渡す財産を特定するのに対し、包括遺贈では全財産に対する割合で指定するのが、それぞれの大きな特徴です。また、包括遺贈では、財産を受け取る受遺者は相続人と同等の権利、及び義務を負うため、債務を含めた財産の相続になります。

特定遺贈と包括遺贈の比較表

3.遺言執行者と通知人を決める

遺言執行者

遺言執行者は、遺言書の内容にしたがい故人の意思を実現する役目を担います。そして、遺言書で指定します。

遺言者が亡くなった時に未成年者(満20歳以下)や破産者でなければ、遺言執行者になることができ、また個人に限らず法人も指定することができます。法定相続人や受遺者といった利害関係者も含まれます。しかし、遺言執行の手続きには、相応の時間と手間、専門的な知識を要する場合もあるため、多くの方が弁護士や司法書士、行政書士などの専門家や信託銀行を指定されています。相応の報酬が発生しますが、複雑な遺言であっても円滑に進めることができます。専門家に依頼される場合は、その報酬についても遺言書にご記載ください。

なお、遺言執行者となる方が見つからず遺言書に指定がない場合、利害関係者が家庭裁判所に申し立てをすることで、遺言執行者を選任できます。

通知人

また、遺言執行者を指定する際、あわせて遺言者のご逝去の報を遺言執行者に伝える通知人を決めておくことをおすすめします。遺言執行者はすみやかに遺言執行を開始するため、相続開始後すぐに遺言者のご逝去の報を知る必要があるからです。通知人は遺言執行者、それから遺言書の保管場所を知っている方と連絡をとります。また、通知人として、多くの方は身近な方、たとえばご家族やご近所の方、施設や病院のスタッフなどに頼まれているようです。

コラム:法定相続人の範囲と遺留分

法定相続人の範囲

民法では、相続財産が法定相続人にその法定相続の割合で相続されることを定めています。法定相続人の範囲は、被相続人の配偶者、子ども、父母、兄弟姉妹までとなり、それぞれに分割の割合が決まっています。

配偶者は常に法定相続人となり、それ以外の方の相続順位は次のとおりです。

  1. 子や孫、ひ孫
  2. 父母、祖父母
  3. 兄弟姉妹

配偶者以外の被相続人と血族関係にある相続人については、たとえば子が第一位となりますが、子がいなければ代襲相続人として孫が、その次はひ孫へと権限が移ります。そして、直系卑属の次が父母になります。両親がいなければ、その次に祖父母がきます。さいごに兄弟姉妹ですが、兄弟姉妹がいなければ、姪甥が代襲相続人となります(ただし、兄弟姉妹の代襲相続人は一代に限る)。

遺留分

民法では遺言書の内容に関わらず、配偶者、子ども、父母には「遺留分」として一定の割合を取得する権利が保障されています。

遺留分グラフ

図のように「相続人が配偶者と子のみ」の場合は、遺留分は1/2、法定相続分が配偶者、子どもに1/2ずつなので、各自の遺留分は1/2×1/2=1/4となります。「相続人が父母のみ」の場合は、遺留分が1/3、「相続人が配偶者と父母のみ」の場合では遺留分1/2のなかで、配偶者2/3、親1/3と分けられることになります。

遺言書の内容が遺留分を侵害していた場合には、兄弟姉妹を除く法定相続人は、侵害額に相当する分の金銭を請求する「遺留分侵害額請求権」を行使することができます。なお、この遺留分を受ける権利は、遺贈があったことを知ってから1年以内に、請求する相手に書面等で意思表示をする必要があります。また、請求を行わなければ時効消滅となります。

遺産寄付ナビTOP

写真クレジット: © UNICEF/UN0340398// Frank Dejo