
テレビで流れる世界の紛争のニュース。難民キャンプで脅えた表情を見せる子どもたちの姿。子どもたちには、何の罪もないのに。
私は、「NHK週刊こどもニュース」を11年間担当し、番組で世界の紛争をたびたび取り上げました。紛争の一番の被害者は子どもたちです。 その姿を紹介する都度、日本の子どもたちからは、「私たちに何ができるの?」と尋ねられました。これが、とてもむずかしい質問なのですね。
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| ©UNICEF/Timor-Leste |
日本で暮らす私たちにとって、紛争や貧困に苦しむ人たち、とりわけ子どもたちに対して何ができるのか。いつも自問自答してしまいます。 そんなとき私は、とりあえず日本の子どもたちには、「世界には、こういう子どもたちがいることを知ってほしい。まずは知ること。そこから始めて、何ができるか、自分で考えてほしい」というメッセージを送るしかありませんでした。
日本の子どもたちには、まず現実を知ってほしい。それが私の思いでした。
では、現実を知ったら、次に何ができるのか。今度は、視聴者の子どもたちにメッセージを送った自分自身が問われてしまうのです。
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| ©UNICEF/Timor-Leste |

番組では、ユニセフの活動も取り上げました。紛争や貧困に苦しむ子どもたちが、満足な教育を受けられないまま大人になると、紛争の当事者になったり、貧困を再生産するだけになったりしてしまいます。子どもたちが教育を受けることで、自分たちが置かれている立場を自覚するようになり、何が問題なのかを知ることができます。それが、紛争や貧困解決の第一歩になりうるのです。
教育を受けるためには、学校が必要です。学校は、何も立派な校舎が必要だというわけではありません。雨風をしのげる程度のもので十分。それに、筆記用具など最小限の文房具。これを支援しているのが、ユニセフなのです。
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| ©UNICEF/Timor-Leste/2006/Francis |
インドネシアからの独立を果たした東ティモール。独立直前の2001年、私は東ティモールの子どもたちの様子を取材に行きました。
独立をめぐる紛争で放火された学校の校舎は、改装されていました。そこに、「ユニセフの援助で完成した」というプレートを見つけたとき、私は、「自分に何ができるのか」という問いに対する一つの答えを見つけたような気がしました。

日本に帰国後、私はユニセフのマンスリーサポーターになったのです。 貧困と紛争の悪循環を断ち切ること。それには、教育が大切なのです。せめてユニセフに協力することで、その一助になれば。これが私の願いです。
2007年9月、ユニセフは、世界の5歳未満の子どもの死亡数が、1000万人の大台を割り込んだと発表しました。まだ、そんなにも多くの死亡者がいるのかという驚きはありますが、みんなが協力すれば、死亡者を減らすことができるのだ、という証明の数字でもあります。
池上 彰 1950年 生まれ。
フリージャーナリスト
NHK記者として、警視庁、文部省(現・文部科学省)などを担当し、1994年から「週刊こどもニュース」に「お父さん」役で出演。著書には『そうだったのか! 現代史』(ホーム社)、『相手に「伝わる」話し方』(講談社)など多数ある。監修書には、『家族ってなんだろう』(ほるぷ出版)など。