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日本ユニセフ協会
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開催報告 オンライン緊急報告会
レバノン ― 大規模爆発から2週間
杢尾雪絵 ユニセフ現地事務所代表が報告

【2020年8月18日  ベイルート(レバノン)発】

2020年8月18日13時~、ユニセフ・レバノン事務所代表の杢尾雪絵氏によるオンライン緊急報告会を開催。レバノンの首都ベイルートで大規模爆発が発生した今月4日から2週間が経過する中、杢尾代表は、現地の様子とユニセフの取り組みを報告しました。杢尾代表は報告を始める前に、今回の爆発によって最愛の人を亡くされた方々への哀悼の意を表し、ご視聴のみなさまとともに、1分間の黙祷で祈りを捧げました。

ベイルート大規模爆発から2週間
ユニセフレバノン事務所代表 杢尾雪絵

ベイルート中の子どもたちが恐怖に震えた大爆発の日、多くの家族が今まで生活を築いてきた家と日々の生活を一瞬で失いました。

そして多くの家族が愛する人を失いました。負傷し、悲しみに暮れ、もしかしたら絶望している人もいるかもしれません。

しかし、レバノンの人々は、家を再建し、子どもたちが健やかに育つ環境を取り戻そうと前向きに奮闘しています。

2週間前にベイルート港で起きた恐ろしい爆発以降、そしてそれ以前から、ユニセフはレバノンの人々に寄り添い続けてきました。私たちは、このような深い悲しみと苦しみの中にある子どもたちと共に立ち、国、子どもたち、青少年、若者、そして家族が生活と未来を再建できるよう支援しています。

一日も早い再建を目指してパートナーと24時間体制で活動しているユニセフの緊急支援対応について、お伝えします。

甚大な被害、トラウマを抱える子どもたち

© UNICEF/UNI357479/OCHA

最新の統計によると、少なくとも3人の子どもを含む170人以上が残念ながら命を落としました。負傷者は6,000人を超え、その中には入院を必要とした31人を含む推定1,000人の子どもたちが含まれています。未だに数十人が行方不明になっていると言われています。この爆発で愛する人を亡くされた方々に悲しみと哀悼の意を表し、怪我をされた方々の一日も早い回復をお祈りします。

30万人以上の方々が自宅の被害を受け、そのうち約10万人が子どもたちであると推定しています。子どもたちの心身の健康を守ることが、ユニセフの最優先事項です。

ベイルートにいる子どもたちはショックを受け、トラウマを抱えています。60万人近くの子どもたちが恐怖の中で生活し、フラッシュバックなどの影響を受けていると推定しています。

8月4日に起きた爆発は、子どもはおろか、誰一人体験すべきものではない耐え難いものです。爆発から20km圏内にいたすべての子どもたちが、ショックやトラウマに苦しんでいると言ってもいいでしょう。

中には両親や家族を失った子どももいます。また、爆発後の混乱の中で、家族と離れ離れになってしまった子どももいます。肉体的、心理的な傷は計り知れなく、癒すのは時間がかかるでしょう。

今回の爆発は、昨年からさらに悪化していた政治・経済・財政危機、抗議活動、治安の悪化、そして新型コロナウィルスに関連したロックダウンなど、山積みになっていた既存の課題や不安に拍車をかけました。

ユニセフスタッフも例外ではありません。私たちの同僚の一人が配偶者を失い、7人のスタッフが軽傷を負い、何十人もの同僚の家が被害を受けました。

医療現場の側面から申し上げると、少なくとも3つの病院が全壊、または深刻な被害を受け、55の医療施設のうち、完全に稼働しているのは半数にすぎず、約40%が中程度から重度の被害を受けています。また、爆発によって壊滅状態になったベイルートの港は、医療品を含む救命用品の主要な生命線であり、特に新型コロナウィルス感染者が増加傾向にあったこともあり、極めて重要な役割を担っていました。

今回の爆発は、レバノンの人々がすでに直面している経済、財政危機をさらに悪化させただけでなく、日々感染者数が過去最高を記録している新型コロナウィルスのさらなる増加が予想される結果になりました。

家族や子どもたちに緊急支援を届ける

被害を受けたベイルートの町から避難する人たち。(2020年8月5日撮影)

© UNICEF/UNI356240/Baz/AFP

このような状況の中で、何万人もの人々が緊急の支援物資を必要としています。ユニセフは、爆発でさらに影響を受けた子どもたちとその家族を支援するために、多くのパートナーとともにできる限りのことを行っています。

主な緊急支援活動の内容としては、被害を受けた子どもたちとその家族を対象に、安全な水やマスクなどの衛生用品、医療用品の提供、子どもへの心理的サポートを行っています。

また、ユニセフが提供したワクチンを含む物資を、港の破壊された倉庫から安全な場所に移動させるために、保健当局を支援してきました。

そして、何百人もの若者が被災地でボランティア活動をしており、ユニセフは彼らのサポートもしています。若者たちはこれまでに、11の被災現場、650軒の家、10本の道路の清掃に携わりました。また、被災した家族や消防士のために炊き出しをして食料配給をしたり、水を配ったりしています。ユニセフの支援を受けて、若者たちは3500人もの人々に援助の手を差し伸べています。

レバノンがこれほどまでに深刻な危機に陥ったことはなく、現場での支援のニーズの緊急度は極めて高い状態です。ユニセフは、子どもたちとその家族の緊急なニーズに対応するために4,670万ドルを必要としています。

主な活動としては、直接被害を受けた子どもたちや家族、保健所やその他の最前線で働く人々への支援、保健所や学校、水道の即時復旧、爆発事故への緊急対応期間中のコロナウィルスの拡散を最小限に抑えることなどが含まれます。

ユニセフは、爆発以前から既にNGO、民間セクター、地方自治体、国連機関などのパートナーとともに、コロナウィルスのパンデミックによってさらに悪化しているこの歴史的な危機状況に対応するために、24時間体制で取り組んでいる状態でした。

しかしながら、今回の被災が既に人道危機にあったレバノンに与える影響は図り知れず、命と未来が危険にさらされている最も脆弱な子どもたちを緊急に支援するためには、より多くの支援が必要です。子どもたちや家族がこの前例のない状況を短期間で乗り切るためには、国際的な支援が不可欠なのです。

緊急対応、3つの軸

ユニセフは3つの軸で緊急対応に取り組んでいます。

 1.子どもたちの安全を守る

子どもたちとその家族がトラウマから回復するためのメンタルヘルスと心理社会的支援を行っています。

具体的には、子どもと親のためのメンタルヘルスキットの提供、被災地での子どもに優しい空間の設置、ホットラインや紹介テントの提供など、より専門的で集中的な支援の提供を行っています。ジェンダーに基づく暴力から子どもたちを守るための支援と、生理用ナプキンなどの衛生用品の提供も行ってきました。また、最も経済的に困難な状況にある家庭の、子どもたちの基本的なニーズに応えるため、単発での緊急の現金給付も実施しています。さらに、感染症予防措置として負傷者に投与された破傷風ワクチン1万本(民間ドナーから寄贈)の配布と物流の円滑化も支援しました。

ユニセフは、1カ月後の学校再開時にあわせて、67万人の子どもたちを対象に大規模な全国ワクチンキャンペーンを予定していたため、はしかやポリオのワクチンを含む、今後6カ月間に必要な量のワクチンを搬入したばかりでした。破損した倉庫から救出された170万個のワクチンは、コールドルーム(冷蔵室)に保管されています。

 

2.基本的なサービスの復旧

© UNICEF/UNI357472/Gorriz/UN

ユニセフとパートナー団体が地元住民と協力し、最も被害が大きかった地域の路上を片付ける様子。(2020年8月8日撮影)

多くの家庭では、飲用、調理、衛生のために利用できる安全な水が十分にない状況が続いています。最新の調査によると、被害を受けた地域では25%、つまり4世帯に1世帯が飲料水を利用できていないことが分りました。

ユニセフは、破損などの被害を受けた水と衛生設備の修復も実施しています。

爆発による爆風により、いくつかの病院を含む保健施設が破壊されたり、損傷したりしたため、すでにひっ迫した状況にある基本的なサービスはさらに困難な状況に陥っています。これらの施設がなくなったことで、何万人もの子どもたちとその家族が、基本的なサービスを受けることができなくなりました。

また、多くの医療従事者が爆発で死亡し、全壊という深刻な被害を受けた病院もあります。ベイルートにある少なくとも16の一次医療センター、妊産婦センター、予防接種センター、新生児センターが影響を受けたことが、現時点でわかっています。これらのセンターでは、16万人以上の人々に保健医療サービスを提供していたと推定されています。

カランティーナの小児病院は、重症の新生児を治療するための18床の専門ユニットを備えておりましたが、ここも深刻な被害を受けました。この小児専門病院では、年間900人以上の新生児の受け入れをしていました。

診療を続けられている病院も、新型コロナウィルス、そしてそれ以外の症例のある患者の対応に追われ、重要な医療物資が枯渇しています。

個人用保護具(PPE)を保管していたコンテナ10個も、爆発によって破壊されました。これらのコンテナは、世界銀行からの融資を受けて新型コロナウィルスの対応のためにレバノン保健省が調達したばかりでした。また、ユニセフが支援しているワクチンの「コールドルーム」7つのうち、5つが全壊しました。このコールドルームは保健省に提供しているワクチンを保存するために重要な役割を果たしています。

医療現場もひっ迫した状態の中、医療ニーズは現時点でも非常に大きく、今後数カ月の間にさらにニーズが増大する可能性が極めて高いです。ユニセフは、最も脆弱な子どもたちに保健ケアのアクセスを提供するための支援を必要としています。

病院やプライマリ・ヘルス・ケア・センターは一刻も早く再建される必要があり、新型コロナウィルス感染症に対応するための物資や、その他の重要な保健用品も補充される必要があります。

また、教育分野では、レバノン教育・高等教育省による初期調査によると、120の公立・私立学校が、建物に被害を受けていることが分かっています。これらの学校には約5万5,000人の子どもたちが通っており、新学期の開始前に学校を修復することが極めて重要となります。

これに加えて、約8,000人の青少年や若者を対象とした公立の技術・職業教育や訓練学校20校も被害を受けています。

 

3.被災した家族を助ける若者を支援

© UNICEF/UNI357100/

ユニセフはパートナーを通じて、レバノンがベイルートの爆発に対応できるよう、職業訓練に焦点を当てた統合的なプログラムを通じた支援を行っています。具体的にはcash for work(復旧・復興事業大規模災害の被災地において、復旧・復興事業に被災者を一時的に雇用し、賃金を支払うことによって、地域経済の復興や被災者の自立を支援する手法)やライフスキルを通して働ける若者の雇用サービスを紹介し、水と衛生設備や建設関連の雇用機会を増やすことを支援しています。

若者1,100人が、がれきの清掃、調理、食料や水の配給などで被災した家族を支援し、これまでに3,500人に手を差し伸べています。これらの若者は、収入を得るためのスキルを強化するためにユニセフが支援しているプログラムに参加している若者たちです。ユニセフはさらに、何千人もの若者に、大工仕事、配管工、建設など彼らが必要とするスキルを身につけて国の再建に向けた努力の一端を担うことができるよう、訓練や資源を強化していく予定です。

ユニセフが8月14日に発表した緊急アピールでは、青少年プログラムにおいて、以下の支援内容を実施すると述べています。

  1. 復旧活動を支援するために、1,300 人以上の青少年に建設、大工、配管、金属加工などの必要な職業訓練を提供する。
  2. 4,000 人の若者が、復旧や建設現場などを通して雇用や所得創出の機会を 得ることができるよう支援する。
  3. 若者が収入創出の機会を得るために、復旧・復興に携わる民間セクターに1,000人の若者を紹介する。

私自身も実際に若者何人かと直接話しましたが、彼らが自分たちの役割や国の再建に向けて積極的に活動しようとしている熱い思いを聞いて、非常に励まされ、感銘を受けました。ユニセフは彼らに寄り添い、レバノンの若者、子どもたち、そして家族を支援していきます。

レバノンの子どもたちのためにご支援を

ユニセフは1948年にレバノンで活動を開始して以来、72年にわたり、何百万人もの乳幼児から若者、そしてその家族を支援し、目に見える成果をもたらしてきました。そして彼らが自分の権利を守り、心身ともに健康で安全な生活が送れるように共に歩んできました。

私たちはこの前例のないほど厳しい状況下にあるレバノンに住む若者、子どもたち、そして家族をこれからも支援し続けます。

一人でも多くの人や開発パートナーを支援し、一日でも早い国の再建を目指すためにみなさまからお力添えをよろしくお願いいたします。

ありがとうございました。

 

報告者プロフィール:
ユニセフ・レバノン事務所代表 杢尾雪絵(もくお ゆきえ)氏

ユニセフ・レバノン事務所の杢尾雪絵(もくお・ゆきえ)代表

©UNICEF

ユニセフ・レバノン事務所の杢尾雪絵(もくお・ゆきえ)代表

大学卒業後、都市計画建築コンサルタントとして就職後、青年海外協力隊員(JOCV)や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の国連ボランティア(UNV)を経て、1991年から1994年末まで米コーネル大学地域計画学科に留学。国連食糧農業機関(FAO)ローマ本部インターンを経て、1995年にジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)としてユニセフ・モンゴル事務所に勤務。ユニセフ・コソボ事務所長(1997年〜)、モンテネグロ事務所長(1999年〜)、タジキスタン事務所代表(2001〜2008年)、ウクライナ事務所代表(2009年〜2014年)、キルギス共和国事務所代表(2014年~2019年)。2019年7月より現職。

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