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日本ユニセフ協会
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インドネシア
新型コロナウイルス感染拡大の中で
命綱の栄養支援を継続するために

【2020年6月30日  インドネシア中部ジャワ州クラテン県発】

© UNICEF/UNI329168/Ijazah

感染予防対策をしたうえで、一定の距離を保ちながら栄養指導をする、栄養士のディシーさん。

インドネシア中部ジャワ州クラテン県にある、ここパセバン村の家々を訪問する前に、ディシー・サンドラ・デウィさんはフェイスシールドをつけて、気持ちを落ち着かせます。

栄養士として、保護者が子どもの身体測定をするのを見守り、食事について相談にのることは日常的な仕事です。

けれども、新型コロナウイルスの感染拡大によって、そうした日常的な仕事ができなくなっています。

ディシーさんは、他の保健員と同じく、ウイルスに感染するのではないかという不安があります。「私たちにとって最大の挑戦は、仕事をやり続けると自分自身に言い聞かせることです。感染するのではないかという恐怖を頭から取り除くことは、容易ではありません。」

子どもの3人にひとりが発育阻害

インドネシアが国一丸となって感染拡大防止に注力している一方で、栄養支援を継続して提供する必要性は、今までかつてないほどに緊急性を増しています。

2019年の調査では、子どもの3人にひとりにあたる約700万人が、発育阻害(日常的に栄養を十分に取れずに慢性栄養不良に陥り、年齢相応の身長まで成長しない状態)であることが示されました。

また100万人以上の子どもが重度の消耗症(急性あるいは重度の栄養不足から生じ、十分なカロリーを摂取できておらず、差し迫った死のリスクに直面している状態)で、これは世界で4番目に高い状況です。急激に身体や脳が発達する生後6カ月から2歳の子どもたちが、必要な栄養を摂取できていないのです。

ユニセフ・インドネシア事務所の栄養部門チーフであるラ・ジヒョンは、「家族が収入源を失い、経済の混乱によって、栄養価の高い健康的な食物を手に入れることが難しいため、すでにインドネシアに多くいる栄養不良の子どもの数が、さらに増加することが懸念されています。これは非常に憂慮すべきことです。新型コロナウイルスの感染を予防し免疫力を高めるためには、栄養価の高い食物を摂取することが不可欠です」と話します。

新型コロナウイルスの危機に直面して

新型コロナウイルス危機が発生した当初、中部ジャワ州の地域保健センターに従事するスタッフは、明確な安全ガイドラインがない状態で業務を継続することに苦労しました。また移動制限によって、ディシーさんの仕事も以前より複雑になりました。

見守っている子どもたちとの直接の接触を減らす一方で、より重度の栄養不良の子どもに治療ケアを提供するため、家庭訪問をする必要が生じることもしばしばあります。

「私たち自身の身体の調子と体力を管理することも必要なので、1日に10世帯以上は訪問できません」とディシーさんは話します。

村の家庭訪問をするディシーさんと同僚たち。

© UNICEF/UNI329165/Ijazah

村の家庭訪問をするディシーさんと同僚たち。

 

オンラインを工夫して活用、支援を継続

新型コロナウイルスの感染を予防し、こうした状況に対応する緊急性を感じた彼女は、同僚とともに、仕事の多くをオンラインに積極的に切り替えました。

これまで保健センターで行われていた妊産婦や授乳中の母親教室やカウンセリングは、メッセージ交換アプリ「WhatsApp」のグループ機能を活用して行われています。

「誰が最も緊急性が高いかを把握することができます。母親教室やカウンセリングの代用として非常に効果的、ということが確認されています」(ディシーさん)

地域の保健センターの室内待合室で待つ患者たち。新型コロナウイルス感染拡大予防のため、座席は身体的距離を測って設置されています。

© UNICEF/UNI329146/Ijazah

地域の保健センターの室内待合室で待つ患者たち。新型コロナウイルス感染拡大予防のため、座席はソーシャルディスタンスが保たれるように設置されています。

アプリで状況を把握、深刻な時には訪問

アプリを通して母親たちとつながることによって、実際に会わなくてもアドバイスをすることができます。もし緊急を要すると判断した場合は、詳しい状況をさらに把握して、家庭訪問を予定します。ユニセフの支援を受けて、ディシーさんは同僚とともに保健・栄養サービスを人々に提供するための基礎となる、作業手順リストを作成しました。

「まず最初にオンラインで訪問予約を行います。その際に、訪問の際には家の外のテラス、もしくは家の中でドアを開けた状態で会うことに、予め同意をしてもらいます。保健員らはマスクを着用し、もし患者の子どもに触れる必要があれば、フェイスシールドと手袋を着用します」(ディシーさん)

さらに感染リスクを避けるために、1回の訪問は15~20分以内とし、カウンセリングは少なくとも1メートル離れて行います。保健員も家族もみんな、手洗いを徹底しなければなりません。

パンデミックの最中に対面で会うことは制限されているため、スタッフはWhatsAppを使って妊産婦や授乳中のお母さんのカウンセリングを実施します。

© UNICEF/UNI329139/Ijazah

新型コロナウイルスの感染拡大の最中、対面で会うことが制限されるため、スタッフはメッセージ交換アプリ「WhatsApp」を使って、妊産婦や授乳中のお母さんのカウンセリングを実施します。

栄養士のアドバイスをもとに、食事を改善

若い母親のひとり、ウィンダさんは、このWhatsAppグループを通して、生後16カ月の娘について心配に思っていることを相談してみました。ディシーさんは、ウィンダさんの娘が2カ月間ずっと体重が増えないことを知り、家庭訪問することに決めました。かばんには、個人用防護具(PPE)、計測器具、栄養補助食を詰め込みました。

家の外でお互いに1メートル離れて会った時、ディシーさんはウィンダさんの娘の肌が青白く、母親にしがみつくも無気力な様子に気が付きました。ウィンダさんの夫は以前、観光地で働いていましたが、新型コロナウイルスの影響でその観光地も閉鎖され、家族は経済的に不安定な状況になりました。家族の食生活にも影響が出てしまったのです。

ディシーさんは、ウィンダさん家族の状況を頭に入れつつ娘の体重を測定し、たんぱく質をもっと含んだ食事を与えるように助言しました。1週間後、ウィンダさんは娘の食欲が増し、元気を取り戻し、不安や心配が減ったと報告してくれています。

生後16カ月の娘を抱っこするWindaさん。

© UNICEF/UNI329145/Ijazah

生後16カ月の娘を抱っこするウィンダさん。

「ディシーさんが我が家を訪問してくれて、本当によかったです。気にかけてくれていることを感じました。あれから、私は心配せずにいられるようになりました」(ウィンダさん)

他の母親たちからも同じような良い知らせを耳にするうちに、ディシーさんは、新型コロナウイルス危機の発生以来、ずっと悩んできた「不安」や「心配」といった気持ちが、この仕事を続けていく「希望」へと変化していくのを感じました。

「もし私たちが怖がっていたなら、いったい誰がお母さんたちを支えるのでしょうか?

このような危機下でも、サポートを提供したお母さんたちは幸せそうな表情をみせてくれます。それは、私たち保健員の心を癒してくれる、治療薬のようなものです」とディシーさんは嬉しそうに語ります。

 

新型コロナ危機下での、ユニセフの栄養支援

妊婦の女性に配布された栄養セット。マスクや卵、浄水剤などが入っている。

© UNICEF/UNI329142/Ijazah

妊婦の女性に配布された栄養セット。マスクや卵、浄水剤などが入っている。

ユニセフはインドネシアにおいて、74万人の子どもたちや女性が、新型コロナウイルス危機の最中でも必要不可欠な栄養支援・育児ケア支援を受けられるよう、インドネシア保健省や他の国連機関と協働し、ガイドラインの開発と普及をすすめています。

2020年6月初旬までに、それらの支援が届いた地域はインドネシア全34州517県に及んでいます。農村部の保健員は、初めて母親になる妊婦を対象に、授乳に関するサポートや新生児ケアのアドバイスを行うとともに、ガイドラインの内容を州・県レベルで実施していくための研修を受けています。

また、授乳、補完食、鉄分や葉酸補給といった栄養に関する主要なテーマについて、ユニセフと保健省が共催するオンライン・セミナーが開かれ、国や地方レベルの関係者など、計1万人以上が参加しました。

インドネシアを含め、ユニセフは、新型コロナウイルスの対応の一環として栄養分野の支援にも力を入れています。新型コロナウイルス危機がはじまってから6月初旬までに取り組んだ成果の一例は下記のとおりです。

低・中所得国や開発途上国を中心に、
・610万人以上の子どもが栄養不良と診断され、命と発育を守るための緊急治療ケアを受けた。
・3,160万人の母親が、新型コロナウイルス危機下での適切な授乳の方法について、特別なアドバイスを受けた。


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