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日本ユニセフ協会
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ユニセフ研修会
~校長先生たちと考える「持続可能な開発目標(SDGs)」~
開催報告

【2019年2月14日  東京発】

2019年1月31日と2月1日の2日間にわたり、全国の校長会や教育委員会を対象とした「ユニセフ研修会」を開催しました。この研修会は、文部科学省のご後援をいただき、毎年さまざまな講師の方をお招きして、実施しています。

ユニセフ研修会~校長先生たちと考える「持続可能な開発目標(SDGs)」~の様子

©日本ユニセフ協会/2019

ユニセフ研修会~校長先生たちと考える「持続可能な開発目標(SDGs)」~の様子

今年のプログラムは、以下のとおりです。

1月31日

2月1日

「我が国の国際協力」
文部科学省大臣官房国際課 海外協力官 荒井忠行 氏

文部科学省大臣官房国際課 海外協力官 荒井 忠行 氏

©日本ユニセフ協会/2019

文部科学省大臣官房国際課 海外協力官 荒井 忠行 氏

荒井氏からは、日本政府が取り組む幅広い教育施策について、お話がありました。なかでも、日本式教育の海外輸出について、またグローバル人材の育成について、深く伺うことができました。

政府が以前より取り組んでおり、ユネスコスクールを拠点に広がっているESD(Education for Sustainable Development/持続可能な開発のための教育)。荒井氏によると、「持続可能な社会の創り手となる人材の育成」という視点が改訂された指導要領にも盛り込まれ、学校現場からは、「ESDのあとは、SDGsなのか?」という戸惑いの声も多く聞かれるそうです。

荒井氏は、「持続可能な開発目標のターゲット4は教育について述べており、さらに細かくみていくと、4.7の項目にはESDも明記されている。『持続可能な開発目標(SDGs)』の達成にはESDが必要であり、ESDの推進こそ、SDGsの4だけでなくすべてのターゲットの達成につながっていくのではないか」と強調されました。

また、日本式の教育システムの海外輸出に関して、荒井氏は日本初の仕組みで現在開発途上国などで広がりを見せる「母子健康手帳」の輸出を例に、日本式のシステムには海外に貢献できるものがあると話し、「運動会、給食、道徳、掃除などの日本独自の教育は、すでに様々な国から関心を寄せられている日本のインフラシステム輸出戦略のひとつ。道路のようなハードインフラだけでなく、教育や防災などのソフトインフラの強みも日本は持っている」と述べました。

「持続可能な世界の実現とUNICEFの役割」
関西学院大学SGU 招聘客員教授/元ユニセフ東ティモール事務所・カザフスタン事務所代表 久木田純 氏

元ユニセフ東ティモール事務所・カザフスタン事務所代表 久木田 純 氏

©日本ユニセフ協会/2019

元ユニセフ東ティモール事務所・カザフスタン事務所代表 久木田 純 氏

久木田氏の講演は、18歳の時に考えはじめたという『人生100年計画』のお話から始まりました。高校卒業後、大学にすぐには進学せずに人生経験を積もうと「ギャップイヤー」を選択した久木田氏は、自分は何のために生きているのか、どうしたいのか、と自問自答した結果、『人生100年計画』を立て、現在まで、幾度となく改訂を重ねながら、計画を実現してきたそうです。そして、18歳当時からの想いである、「自分の能力を最大限に高めて世界を変える力をつけ、子どもの教育と発育のために働く」「世界が力を合わせて問題解決をできるようにする」という2つのことを叶えるため、国際公務員の道へと進みます。以降30年間にわたり、様々な国のユニセフの現場で活躍されました。

そんな久木田氏が今感じること、それは、「今の子どもたちは、自分たちの運命と地球の運命が切り離せない世代である」ということ。20世紀は、発展のために走り続けてきた世紀であり、日本を含め、たくさんの国が「資本主義」の概念のもと、エネルギーや物の大量採掘、大量生産、大量消費、大量廃棄をし、成長してきました。そのため今、私たちの多くの意識の中に「お金が増えれば幸福が増える」という感覚が刷り込まれている、と久木田氏は分析します。そして、強欲な資本主義の結果として、環境破壊がおこり、貧富の差の拡大が拡大し、気候変動による自然災害の増加や、紛争やテロの広がりが起こっているという事実があります。

平均寿命が100歳を超える、と言われている現代の先進国の子どもたちは、21世紀が「持続可能な社会」にならないかぎり、彼らよりも先に地球の運命が終わり、同時に自分の運命も終わってしまいかねない世代です。これから社会はあらゆる面でSDGs等が示す「持続可能」な方向へとシフトしていかないといけない、という久木田氏の言葉に、会場の先生方は大きく頷いていました。

「子どもの権利条約採択30周年 -課題と展望―」
公益財団法人人権教育啓発推進センター理事長 横田洋三 氏

公益財団法人 人権教育啓発推進センター理事長 横田 洋三 氏

©日本ユニセフ協会/2019

公益財団法人 人権教育啓発推進センター理事長 横田 洋三 氏

世界で最も多くの国や地域が締約する国際条約「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」が国連で採択されてから今年で30周年を迎えます。横田氏によると、人権条約は様々な条約の中でも批准率が高い傾向にあるそうですが、中でも「子どもの権利条約」の締約国数は群を抜いているそうです。これは、当初から、紛争などの被害を受けているのは圧倒的に子どもたちであることを世界中が危惧し、子どもの権利を早く守らなければいけないという機運が高まっていたことにある、と横田氏は述べます。

講演を通して横田氏が繰り返し強調されていた「子どもの権利条約」のキーワードは、「子どもにとって最善の利益なのかどうか」です。例えば「しつけ」なのか「体罰」なのか、という境界線の議論においても、子どもの権利条約に沿って考えるとき、注目すべき点は、「それがその子どもにとって一番良いことなのかどうか」を考えなければならない、と話しました。

世界に目を向けてみると、子どもの権利条約で補償されている子どもの権利でありながら、紛争に巻き込まれたり、望まない児童労働に従事させられたり、奴隷市場で売られるなど、その権利を侵害されている子どもたちが多くいます。また、先進国でも、性的搾取、虐待・放置、子どもの貧困および栄養不良なども起きています。例えば虐待の問題などは、これが仮に大人同士のあいだに起きた出来事であればすぐに警察が介入するような立派な傷害事件であるのに子どもだとそうはならないことに対し、疑問を投げかけました。

研修会の2日目は、外務省のSDGsアワードで特別賞を受賞した江東区立八名川小学校の前校長、手島利夫先生と、ユニセフ・アジア親善大使のアグネス・チャン氏が登壇されました。

「持続可能な社会の担い手をどのように育てるのか ~各都道府県の教育施策をESD・SDGsの視点から見直す~」
日本ESD学校副会長/江東区立八名川小学校前校長 手島利夫 氏

江東区立八名川小学校前校長 手島 利夫 氏

©日本ユニセフ協会/2019

江東区立八名川小学校前校長 手島 利夫 氏

ワークショップの冒頭、6~7名のグループごとに、「30年前と変わったこと」を話し合いました。各グループからは、「外国人が増えた」「家庭間の格差が広がった」「子どもたちのコミュニケーション能力が下がった」「交通手段が変わった」「テクノロジー」「学校が荒れていたのが変わった」などの声が上がりました。講演は1時間の短い時間ながら、ワークショップも交えて進行していただきました。

手島氏はそれを踏まえ、今の時代を「変化が激しく、グローバル化の時代」と表現。地球の未来を考えたときに、21世紀までは大して上がっていなかった気温が、このまま対策をしないと急上昇するという予測が立てられていることなどの例を挙げ、「世界が変われば、正解は変わる。昨日まで正しいとされていることが正しくない時代がやってくる。求められる人間像も変わるのに、日本の教育はこのまま世界の変化に対応できない若者を大量生産しつづけていいのだろうか?」と厳しい質問を投げかけました。

そのうえで、新たに改訂された指導要領の内容に触れ、「10年前の教育現場は、子ども個人を成長させることが重要視されていた。新指導要領では、自分の良さや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重できるようにすることが謳われ、また持続可能な社会の創り手となる人材の育成と明記されている」と話しました。各グループの先生たちは、改訂された新指導要領の全文を読んだのち、「どうやったら日本の教育は変わるのか」のイメージを班で出し合い、発表。短い時間の中で、各グループ活発な議論が展開され、それぞれ結論を導き出していました。

手島氏は前任校で取り組んだカリキュラム・マネジメント手法として、すべての教科・単元にSDGsの視点を入れていくことを提案。最後に、持続可能な世界のための視点として、「一つの学校で環境問題に取り組んだって意味がない、日本だけでやっても意味がない、だから国際的な協力が必要だし、多文化理解、人権、環境理解が必要」と述べ、すべての人たちが関わることの重要性を説きました。

ウクライナ視察報告
アグネス・チャン ユニセフ・アジア親善大使

アグネス・チャン ユニセフ・アジア親善大使

©日本ユニセフ協会/2019

アグネス・チャン ユニセフ・アジア親善大使

「先生たちも日々どうやったら子どもたちの状況がよくなるか考えているので、私と同じ想いでいると思う、なので今日はとても楽しみにしてきました。」と切り出したアグネス・チャン大使からは、昨年6月に訪問したウクライナ現地視察の報告がありました。

アグネス大使がウクライナを訪問したのは、ロシアがウクライナ南部のクリミア半島を併合して4年が経ち、ウクライナでの紛争解決を目指し、停戦が合意されてから3年が経過した頃でした。ウクライナの紛争状態は、他の紛争と比べて国際社会からの注目度が低く、“忘れられた危機”となっています。停戦中にもかかわらず、東部での政府と親ロシア派の衝突は散発的に続き、子どもたちは砲撃や地雷の被害、教育の中断、避難生活など様々な影響を受けているのです。

ユニセフはウクライナにおいて、政府管理下にある地域と親ロシア派が支配する地域両方に活動の拠点を置き、紛争と隣り合わせで暮らす子どもたちやその家族への支援を続けています。

アグネス大使は、ロシアとの国境沿いを訪問。ここは、表面上は争いは起きていないことになっているものの、実質は多くの民兵が戦っており、「気が向いたときにミサイルが飛んでくる」無法地帯のような状態になってしまっていると言います。ここに残る20万人の子どもたちは、家族が土地などを手放せずに逃げられなかったり、ロシア側に逃げても学校でいじめにあったりして戻ってきた子どもたちだそうです。

アグネス大使が出会ったアンドレ君は、家族4人で暮らしていた家にミサイルが着弾し、お父さんと弟は即死、お母さんは助かったものの入院中でした。アンドレ君は「お母さんが退院したら、ぼくが働いて都市部で暮らす」と話してくれたそうです。

また、前線から3キロのところに学校があるマリンカという地域を訪問した際には、学校の窓のところに土嚢が積んでありました。これは、着弾した際に、衝撃を和らげるために置かれているそうです。この学校は何度もミサイルが着弾し、ユニセフが直した窓ガラスは、飛散しないようプラスチック製になっています。アグネス大使が子どもたちに夢を聞いてみても、「いつ死ぬか分からないから今日ちゃんと生きないとね」「未来のことは考えられない。生きていられるか分からないから」といった答えが返ってきたそうです。「ウクライナは日本と同じくらい発展した先進国であり、ウクライナの子どもたちの感覚は、日本の子どもたちとあまり変わらない。そういった意味でも、今回の訪問はとても考えさせられた」とアグネス大使は話しました。

最後に、アグネス大使は、「今、移民や難民の問題が世界中で起きていて、たくさんの国が内向きになっています。ユニセフは、子どもは子ども、という考え方をしています。私はいつも悩んだら、ここに戻ります。子どもは子ども。人間は人間、以上!みんな同じ“地球人”という気持ちでやっていかないといけないです」と述べ、「私は先生ほど尊い仕事は世の中にないと思っています。先生の仕事は大変です、早く起きなきゃいけないし、悪いこともできない。でもこれは本当に人生を捧げる、聖職だと思います。私も良い先生に巡り会わなければ、今この活動をしていないと思う。だから心からお礼を申し上げたい。ぜひ体に気をつけて、適当に息抜きをして、日本の子どもたち、世界の子どもたちを育ててください。」と全国から集まった先生方を労いました。

おわりに

2日間に渡って行われた研修会を終えて、参加者アンケートからは、次のような感想をいただきました。

      • 熊本県ではSDGsの取り組みは、企業が中心となり始まったばかりという感じです。今後、学校現場においても積極的に推進していかなければという感想を持った。ユニセフについての理解についても推進していく必要性を感じた。
      • この研修会でなければ分からないことが多く、学ぶことができました。今後の教育活動に役立てたいと思います。
      • すべての講演が充実していました。今回参加している方々が現場に戻って研修成果を生かしてほしいし、自分自身も発信していきたい。
      • SDGsの考え方と、その考え方を教育課程に生かしていく必要性をより多くの教職員に啓発していく必要性を痛感した。
      • 「持続可能な社会の創り手を育てる」という課題について、様々な方面の専門家の方からお話を伺うことができ、大変有意義な研修となりました。学んだことを今後どう地域の教育に生かしていくか、具体的に考えると共に、実際に形にしていいかなければならないと決意を新たにしました。

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