メニューをスキップ
日本ユニセフ協会
HOME > ニュースバックナンバー2016年 >

親子支援の取り組み
岩手県陸前高田市からの報告

【2015年11月12日  陸前高田発】

2015年11月10日(火)、岩手県ユニセフ協会は、今年も、陸前高田市の子育て支援団体“おやこのひろば きらりんきっず”(以下「きらりんきっず」)のイベント、『寄せ植え会』の開催をサポートしました。

お子さんと一緒に参加してくださったお母さん。“おやこひろば”玄関前の鉢に、毎年、カラフルな花が植えられます。

© 日本ユニセフ協会

お子さんと一緒に参加してくださったお母さん。“おやこひろば”玄関前の鉢に、毎年、カラフルな花が植えられます。

陸前高田市で子育てをしていく者同士が励まし合い、寄り添い、繋がりを持てる機会づくりとそのサポートを目的に、2010年7月、「きらりんきっず」は、未就学年齢の子とその親が自由に過ごせる場所や子育てに関する情報を提供してきました。しかし、空き店舗を改装して使っていた活動拠点は、2011年3月の大津波で全壊。スタッフの方々の多くも被災されましたが、それでもひと月後には地元中学校の図書室を借りて、“おやこのひろば”を再開。学校の再開によって図書館が使えなくなった後も、飲食店の一室を間借りするなどしながら、活動を続けています(現在は仮設商店街「高田大隅つどいの丘商店街」の一角で活動中)。

陸前高田内外の多くの組織や人々とのご縁や協力、そして絆が支えてきた「きらりんきっず」の活動ですが、『寄せ植え会』も、例外ではありません。まちや周辺の田畑や山々から花が少なくなり、冷たい風が吹き荒れる冬だからこそ、仮設の建物で開いている“ひろば”を、少しでも温かく憩える場できれば・・・。そんな思いを抱いていた「きらりんきっず」の方々が、たまたま手に取った岩手県ユニセフ協会のチラシには、同協会が、震災の年から幼稚園・保育園での花壇づくり支援活動続けていることが紹介されていました。こうして、岩手県ユニセフ協会の支援のもと、2013年12月、“おやこのひろば”に集う親子自身が参加する『寄せ植え体験』の取り組みが始まりました。

おとなと子どもの不安

ハート形のミニハンギングバスケットの季節の花は、参加者の自宅持ち帰り用の寄せ植え。「自宅の玄関が明るくなる」と、毎年喜ばれています。

© 日本ユニセフ協会

ハート形のミニハンギングバスケットの季節の花は、参加者の自宅持ち帰り用の寄せ植え。「自宅の玄関が明るくなる」と、毎年喜ばれています。

今年の『寄せ植え体験』には、親子14組を含む総勢34名が参加しました。

「子どもと一緒に楽しく素敵な寄せ植えができました。ありがとうございます」
「家では子どもが気になってゆっくりできないけど、今日は集中して楽しくできました」
「毎日見て、いやされたいと思います。ありがとうございました」

など、参加された方々から、たくさんの感謝の言葉が届きました。

間もなく震災から5年が経とうとしています。かつて陸前高田市の中心部だった場所では、総延長3キロにも及ぶベルトコンベアが縦横無尽に張り巡らされ、高台造成工事に必要な土砂が周辺の山々から直接送りこまれましたが、造成地は完成に向けて現在も作業が続いています。市内では災害公営住宅がたくさん建設されていますが、ようやく造成地が完成し、これから着工しようとしている災害公営住宅もあるところです。

なかなか見えてこない将来のまちの姿に、市の内外で“仮住まい”を続けていらっしゃる方々の間では、復興への期待より、将来への不安の声も出始めています。おとなの不安は、子どもたちにも影響します。こうした環境の中だからこそ、『寄せ植え会』のような“気分転換”や“親子の絆づくり”の機会を創ることがとても大切なのだと、「きらりんきっず」の方々は考え、今年は、『寄せ植え会』の開催に合わせ、日本ユニセフ協会などの協力を得て、専門家を招いた学習会も開催しました。

お茶っこしながら

「お茶っこしながら(お茶を飲みながら)、おしゃべりしながら、楽しく学ぼう!」 お茶とお菓子も用意された学習会は、終始和やかな雰囲気のまま進められました。

© 日本ユニセフ協会

「お茶っこしながら(お茶を飲みながら)、おしゃべりしながら、楽しく学ぼう!」 お茶とお菓子も用意された学習会は、終始和やかな雰囲気のまま進められました。

『寄せ植え会』の翌々日に開催された『親と子の安心♡を育む学習会』には、「CAP」と呼ばれる子どもがいじめ・虐待・体罰・誘拐・痴漢・性暴力など様々な暴力から自分の心とからだを守る暴力防止のための予防教育プログラムの普及を進める一般社団法人J-CAPTAの木村里美トレーニングディレクターが講師として登壇。陸前高田市のお隣の大船渡市など、周辺自治体からの参加者も含め、13名のお母さんや子育て支援に携わる方々が、和やかな雰囲気の中、親と子の絆をつなぐ「安心」を育むために必要な考え方と具体的な方法を学びました。

虐待やいじめのニュースが毎日のように伝えられる中、全国の小中学校で、子どもたち自身に暴力から逃れる力を付けるCAPプログラムが実施されています。日本ユニセフ協会も、被災地支援の一環として、今年3月まで、岩手・宮城・福島の各県でのCAPプログラムの普及を支援しました。また、震災後、地元にCAP運営団体=CAPリアスが発足した陸前高田市を含む岩手県沿岸部では、現在も、同運営団体の活動をサポートしています。

『親と子の安心♡を育む学習会』の講師、J-CAPTAの木村里美トレーニングディレクター(左から2番目)と「きらりんきっず」代表(右から2番目)とCAPリアスのメンバー

© 日本ユニセフ協会

『親と子の安心♡を育む学習会』の講師、J-CAPTAの木村里美トレーニングディレクター(左から2番目)と「きらりんきっず」代表(右から2番目)とCAPリアスのメンバー

木村ディレクターは、「子どもへの暴力やいじめをなくすには、子どもの気持ちをしっかりうけとめてくれる大人が、子どものまわりにたくさん増えることが、もっとも効果的な方法です」と語ります。木村ディレクターは、学習会で、子どもはみな素晴らしい力を持っていることや、 子ども自身が“安心・自信・自由”を感じられること、そういった状態に置かれることが、子どもの生きる力を育むことを解説。“しつけ”と“体罰”の境目や、“体罰”に代わる具体的な方法に悩む参加者に、子どもの話を「聴くこと」は子どもへの最大の贈り物=“体罰”を回避する方法を見つける糸口の一つであることなどが伝えられました。

会場の陸前高田まちづくり協働センターのむかいにあるきらりんきっずのひろばには、託児所も用意されました。学習会は、参加された方々が、普段あまり口にできない日常の子育てに関する悩みなどを気兼ねすることなくお互いに語り合える機会にもなったようです。

参加者された方々の声

  • 高校生、中学生、2歳の子を持つ母親です。本日は子どもの目線で見る“安心できる親とは?”どんな親なのか、ということを、改めて考える時間をいただきました。現在中学生の子は、反抗期ということもあり、とても気を使っていました。小さい時に手がかからなかった子で、先生のおっしゃられた母と子の信頼関係がまだ浅いかも…と考えさせられました。先生がおっしゃった“一生かけて子どもの愛情をそそぐ”という言葉がとても心に響きました。そうか、まだ間に合うのか…と安心に満ちあふれました。私にできる事、それは子どもたちに安心をあたえること!!一番大切なことを学びました。またお話を聞ける機会があればと思います。
  • 子の為に自分ができること、接し方。どうすれば子の意見などをうまくくみとれるか。考えさせられることがたくさんでした。安心・自信・自由を与えてあげられるように、子どもたちと接していきたいと思います。
  • とてもあたたかい雰囲気の中で、楽しく受講することができました。今日のお話をきいて、今日からまた頑張ろうと気持ちのリセットになりました。

シェアする


トップページへ先頭に戻る