メニューをスキップ
日本ユニセフ協会
HOME > ニュースバックナンバー2017年 >

家族のために農場で働く13歳の女の子
レバノンで暮らすシリア難民が直面する苦難
紛争が奪う、子どもたちの教育と夢

【2017年1月30日  ベイルート発】

中東の国シリアでは、2011年に始まった紛争が、今なお続いています。その影響で、800万人以上のシリアの子どもたちが人道支援を必要としています。長引く紛争は子どもたちから多くのことを奪っています。教育もその一つ。現在、シリア国内や周辺国で暮らしている240万人以上のシリアの子どもたちが、学校に通えていません。

「学校はきっとすてきな場所」

シリア難民のダイアナさん(13歳)は、レバノンのベッカー高原で暮らしています。家計を支えるために働いていて、学校に通えていないので、教室がどんな場所かも知りません。

© UNICEF/UN043231/Romenzi

シリア難民のダイアナさん(13歳)は、レバノンのベッカー高原で暮らしています。家計を支えるために働いていて、学校に通えていないので、教室がどんな場所かも知りません。

多くの人々にとって、教育を受けることのない人生なんて、想像もできないでしょう。しかし、ダイアナさんにとっては、教育を受ける人生こそが、想像さえできません。教室を見たこともないダイアナさんにとって、そこは夢の場所なのです。

「学校はきっと、とてもすてきな場所だと想像しています。壁には、男の子と女の子の絵が描かれているだろうって」と、ダイアナさんは言います。

ここは、レバノンのベッカー高原。正午が過ぎ、ダイアナさんは、小屋の日陰に座っています。ここは彼女の家です。レバノンには、このような何千もの小屋が、非公式な居住地域に建てられています。

13歳のダイアナさんは、本来であれば、数年前から学校に通っているはずです。けれどもダイアナさんは、教育を受ける代わりに、ほんのわずかなお金を得るために、一日中、田畑で働きます。暗くなる直前に帰宅すると、今度は母親を手伝い、家事をしたり妹たちの面倒を見たりしています。

妹たちは、戦争以外の記憶はありません。でもダイアナさんは、もっと平凡だった生活のことを覚えています。

「レバノンに来てから、5年が経ちました。シリアでの状況がとても悪化していたので、私の家族はレバノンに働きにやって来ました。私はシリアでは学校に通ったことがないので、文字の読み方を学んだこともありません。レバノンに来ても、学校にいけません。だって、母の手伝いする必要がありますから」

 4人に1人が難民、蔓延する児童労働

ダイアナさん(13歳)がレバノンのベッカー高原の農場で作物を収穫しています。シリア難民のおとなはレバノンで自由に働くことができません。検問所で身分証を提示する必要もなく、賃金も安く、権利に関する認識が乏しい子どもたちが、家族を支えるために働いているのが現状です。

© UNICEF/UN043230/Romenzi

ダイアナさん(13歳)がレバノンのベッカー高原の農場で作物を収穫しています。シリア難民のおとなはレバノンで自由に働くことができません。検問所で身分証を提示する必要もなく、賃金も安く、権利に関する認識が乏しい子どもたちが、家族を支えるために働いているのが現状です。

ベッカー高原は、レバノンで最もシリア難民が多く暮らしている場所です。この高原の村々の中には、シリア人の人数が、レバノン人の人数を超えている村もあります。レバノンは人口に対する難民の割合が世界で最も高く、4人に1人が難民です。

ベッカー高原は肥沃な農耕地帯であることから、低賃金労働者の高い需要があります。そして、児童労働が蔓延しています。おとなのシリア難民は、レバノン国内で自由に働くことができないことから、多くの場合、一家の生活を支えるために子どもが働くことを強いられています。子どもはおとなよりも賃金が安く、検問所で身分証を提示する必要もなく、そして自分が持つ権利を認識している可能性が低いからです。

「太陽の強い日差しを受けながら、農場でジャガイモを収穫しています。お金は切実に必要だからです」と、ダイアナさんは言います。

ベッカー高原の農場での仕事は季節労働であることから、子どもたちの学校への出席に、非常に大きな影響を与えています。たとえ子どもたちが公立学校に入学しても、時期によっては欠席したり、もし家庭の経済状況が悪化すれば退学する可能性もあります。

レバノンでは、労働に従事するシリア難民の子どもたちの人数だけでなく、最悪の形態で労働に従事しているレバノン人の子どもたちの割合も増えています。レバノン人の貧困家庭は、多くの場合、シリア難民の家族とまさに同じ困難に直面しており、その大半はレバノンで最も貧しい地域で暮らしています。それでもなお、シリア難民の子どもの4人に3人は、未だに路上で暮らしながら、働いています。

「このような状況の中、児童労働は対策に乗り出すことが極めて難しい課題です。国連機関やNGOからの支援を除けば、シリア難民の家族にとって、子どもが稼いでくる賃金が収入のすべてであることから、家族が生き延びるためには、子どもの賃金はなくてはならないものになってしまうのです」ユニセフ・レバノン事務所代表のタニヤ・シャプイサは言います。「私たちができることは、過酷な児童労働のケースに介入すること、労働時間を減らすための啓発をすること、そして大事なこととして、シリア難民の家族が、子どもたちを農場や建設現場に働きに行かせる代わりに、学校へ送り出すことを可能にすることなのです」

閉ざされる可能性

シリアやその周辺国で続いている危機は、一時的に子どもたちの教育や生活を妨げるだけでなく、教育を受けるチャンスを生涯にわたって閉ざす可能性もあります。

ダイアナさんが直面している状況は、同じようにシリア難民として暮らす200万人以上の子どもたちが経験していることです。希望や教育を受ける権利を奪われた、シリアの子どもたちの物語なのです。

その一人、モハナド(15歳)は6年間学校に通えていません。彼は、再び学校に戻るには遅すぎるかもしれない、と恐れています。「一年一年が過ぎていくにつれ、学校に戻ることがさらに難しくなっていきます」と彼は言います。

* * *

「シリアにある私の学校は爆撃されました」と語る、アビールさん(13歳)。シリア難民として、レバノンで暮らしている。

©UNICEF Video

「シリアにある私の学校は爆撃されました」と語る、アビールさん(13歳)。シリア難民として、レバノンで暮らしている。

2011年3月にシリア危機が勃発してから、6年が経過します。下記の特設ページでは、紛争に巻き込まれながらも「学校に通いたい」と強く願う子どもたちの声を、動画で紹介しています。ぜひ、子どもたちの声に耳を傾けてください。

「学校に通いたい」-紛争から6年、シリアの子どもたちの願い

シェアする


トップページへ先頭に戻る